「出社」という代償を払ってまで得たいものは何か?
今回の日経COMEMOのお題はズバリ #テレワークで上げる生産性 ということで。
コロナ禍による「働く場所の大転換」が起こってからもうすぐ丸2年となるが、
①原則出社に戻す企業
②原則フルリモートを維持する企業
③ハイブリッドワーク(リモート+出社)を模索する企業
と、企業によって対応はまちまちである。
「リモート格差社会」に陥る日本
下記の記事によると、生産性が「下がった」と答える人の割合が「上がった」とする人の割合よりも多くなっている。「テレワークによって生産性が下がる割合が高いのは、先進国で日本ぐらい」だそうだ。これは、日本が働き方に対する変化適応力が相対的に低い、という証左にほかならない。なんとも切ない話である。
とあるが、こちらの仮説はその通りだと思う。
下記の図にある通り、テレワークがメイン(週3日以上)の人の40%近くが「テレワークにより生産性が上がった」と回答している反面、出社がメイン(テレワークは週3日未満)の人は「テレワークにより生産性が上がった」と回答している人は10%に満たない。
「テレワークにより生産性が下がった」と感じているから出社メインにしているのか、出社メインにしているから、「テレワークにより生産性が下がった」と感じているのか、はもはや「鶏が先か卵が先か」という鶏卵問題の様相を呈しているように思えるが、「いつまでも出社前提の働き方に拘泥しているから、一向にテレワークで生産性高く働く上で必要なITツールへの投資(あえてDXとは言わない)が進まず、結果的にテレワークによる生産性向上を享受できない」のだと筆者は考えている。
例えば、「テレワークだとどうも生産性が上がらなくて…」と話している人が勤めている会社は、たいてい未だに契約書や請求書を紙でやりとりしていたりする。そういうことだ。
もちろん、医療従事者をはじめとするエッセンシャルワーカーの方々など、物理的にテレワークが難しい職種や業界はある。
ところが、本来であればテレワークを活用する方が生産性が高まるにもかかわらず、従来の働き方を変えることそのものに忌避感を感じて「テレワークは生産性が下がる」などといって社員を縛り付けている経営者や管理職はいかがなものかと。
極端な例えだが、テレワークに本気で取り組まずオフィス出社ありきを貫くのは「(自動車の運転の仕方がよくわからないだけなのに)自動車よりも馬車の方が良い」って言ってるようなもの。
社員がテレワーク継続を望むのに「それを拒む経営陣たち」の本音とはで書かれていた
という話はさすがにフィクションだとしても、古い考え方を押し付けてしまうことでかえって社員のモチベーションを下げ、最悪の場合は優秀な社員が転職するなど、結果的に生産性を下げてしまう可能性が高い、ということを認識しておいたほうが良さそうだ。
ハイブリッドワークが最適解
ちなみに、筆者が代表を務めているMentally社は、100%テレワークのいわゆる「フルリモート」な働き方である。
では、筆者はフルリモート派なのか?というと、実はそうでもなかったりする。
1年半ほど前、COMEMOのコラムでこんなことを書いた。
「100%テレワーク」が最適解、というわけではなく「テレワークを中心にしつつ、要所要所でオフィス出社を活用する」というハイブリッドなワークスタイルが最適解なのでは、というのが筆者の持論だ。
現状、弊社にはライターさんも含めると常時20〜30名の方が勤務してくれているが、役員の筆者を除き、全員が複業またはフリーランスという形で業務委託でかかわってくれている。現在はフルリモートでも十分生産性高くプロジェクトを推進できているが、一度だけコアメンバー全員で実際に集まってオンサイトでミーティングを実施したことがある。
10月に株式会社Mentallyとして法人設立をしたタイミングで、コーポレートビジョン・ミッションをつくろう!ということで、サインコサインの加来さんのファシリテートのもと、コアメンバー全員が一堂に会して約半日をかけてディスカッションを重ねた。
これまでは筆者も含めて実際に対面で会うのは「はじめまして」というメンバーがほとんどだったが、日頃からオンライン(ZoomやSlack)ではコミュニケーションを重ねており、最低限の関係性は出来上がっていたので、相互理解は非常にスムーズに進み、心理的安全性高くディスカッションできたことは間違いない。
組織づくりを縫製に例えるならば、オンラインのコミュニケーションで関係性を「仮縫い」した上で、オフラインのコミュニケーションでスムーズに「本縫い」ができたのではないか、と思っている。
もちろん、「仮縫い「のままでもある程度の関係性は構築できるし、それでも十分業務は遂行できる。が、よりエンゲージメントや心理的安全性が高い組織づくりをしていく上では、やはり対面での「本縫い」は欠かせない、というのが現時点での筆者の考えだ。
大手上場企業の中で、真っ先に在宅勤務に切り替えて話題になったGMO熊谷社長は日経産業新聞のインタビューで以下のように語っている。
筆者も全くの同感で、「出社と在宅のハイブリッド」が現時点では最適解なのでは?と思っている。
テレワークでも十分仕事が出来てしまう、ということを多くの人が知ってしまったこの時代において、もはや「出社・通勤」は明確なコスト(代償)になっている。通勤にかかる交通費だけでなく、往復にかかる時間や、満員電車による精神的・体力的ダメージ。あれをまた週5日やれ、と言われたら筆者は絶対に願い下げである。
一方で、ビジョンミッション合宿のようなアイデア創発を目的としたワークショップだったり、同じ空間にいることで自然発生する雑談であったり、対面だからこそできること、得られるものも間違いなくある。こうしたリターンを得られるのであれば、出社という代償を払うだけの価値はある。
ゆえに、出社ありきではなく、「出社という代償に見合うリターンが得られそうであれば出社する」というマインドセットに変えていくことが、チーム全体の生産性を最大化する上で重要なのではないか。
「曜日オフィス」という新事業も登場。
2021年1月時点では、弊社は100%複業・フリーランスのメンバーで構成されているが、2〜4月の3ヶ月だけで3名の正社員が入社してくれることになっている。子育てなどご家庭の事情で完全在宅を希望している方もいるが、中には「週に1〜2回は顔を合わせて仕事がしたい」と出社を希望しているメンバーもいるため、在宅・テレワークを中心(週3〜4日)としつつも、週に1〜2日程度コワーキングに出社するハイブリッドなスタイルに切り替えていく予定だ。もちろん、オミクロン株の感染状況の様子を見つつ。
こうしたニーズを受けて、WEEKという曜日ごとに借りることのできる「曜日オフィス」も出てきている。
「ウチの会社は毎週火曜日を出社デーにしよう!」と決めれば、その曜日の分だけ賃料を払えば良いので、一般的なオフィスやシェアオフィスを借りるよりもずっと格安にオフィスを借りることができる。素晴らしいアイデアだ。
どんなワークスタイルが最適か?は職種や業界、企業規模などのみならず、個人の性格や特性にも大きく左右されるので、現時点では誰もが模索中の段階である。ただ、自社なり/自分なりの最適解を模索することを放棄して、変化を避けて現状維持を選択した結果として100%出社勤務を強制するのは怠慢でしかない。またオミクロン株が猛威をふるい始めたことを契機に、三度目の正直!とばかりに本気でテレワークに取り組んでみてはいかがだろうか。
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