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ジャグリングとメッセージ

神話の研究とセンサーが生み出す新世界

先日、久々に、カンブリアナイトについてお話する機会を得ました。某大手メーカーさんに呼んでいただき、会場に40〜50名、オンライン参加も含めると100名ほどの方々が聞いてくださったそうです。

久々に、じっくりと、カンブリアナイトの趣旨について熱く語る機会をいただきました。

この記事では、生活を変えるという物語を成立させるための社会実装について書きました。

介入起点の設計

生活を変えていくためには、介入がとても重要です。データのセンシングと解析だけでは、過去と現在が把握できるだけで、未来を変えていくための行動が伴っていません。この未来を変えていくための行動を促すものが、介入です。

だからこそ、サービス設計には、介入が欠かせません。そして、サービス設計は、介入を起点に考え始める必要があります。どのような課題をどのような介入で変えていくのか。そのためには、どのような状態を把握できればよいのか。それを把握するためには、どのようなデータを、どのようにして取得すればよいのか。

このように、介入→解析→取得の順に設計することが重要です。データ自体の流れ(取得→解析→介入)とは真逆で設計していきます。

介入者と取得&解析者の隔たり

そして、この介入者と取得&解析者の間には、専門領域として大きな隔たりがあります。

医師などの医療・健康関連、教師などの教育関連、料理家などの食関連、トレーナーやコーチなどのスポーツ関連など、さまざまな領域での介入の専門家がいます。

これらの専門家は、それぞれの領域において、とても深い知識と経験を持っておられます。しかし、専門領域以外の先端技術については、それほど詳しいわけではない場合があります。先進のセンサーや解析技術がどのようなものか、知らなくとも不思議ではありません。

一報、センサーや解析の技術者やメーカーは、上記のような領域での専門知識を持っておらず、介入ができない場合がほとんどです。

この両者の断絶を、どのように乗り越えて、共に未来を描いていくことができるのか。異質な領域が結びつくことで見えてくる世界。

摂合

単なるコラボレーションではなく、より深い価値基準の相互作用による、世界観のアップデートを意味する「摂合」という言葉。

これを、属する組織の大きさや、肩書きの上下などの些末なタグを忘れ、共に熱く語り合うことのできる場。

それがカンブリアナイトです。こうしたことを、先日の会では、丹念にお伝えしたつもりです。

メッセージは、発しただけでは意味がないと思います。話した相手に伝わり、相手の行動に変化が起こり、また発した自分の行動にも変化が起こることで、現実が少しずつ変わっていく。

ジャグリング

僕は、いつも同じような話を繰り返しています。手を替え品を替え、いつも同じ話をしています。

以前、手遊びとしてジャグリングを少しだけ練習したことがあります。ボールを投げて、受け止める。この練習です。

最初のうちは、投げたボールを落とさないように、受け止めることに意識が向いていました。しばらく練習すると、何度か続けることができるようになりました。しかし、10回、20回と続けるうちに、体制がくずれてしまいます。しかも、ボールの軌道が安定しないので、ボールを受け止めるのが難しく、大忙しです。これが、体勢をくずす原因でした。

そこで、ボールを受け止める練習ではなく、一定の軌道でボールを投げられるようになることを目指しました。投げる練習です。

これができるようになると、一定の放物線を描くようにボールを投げられるようになりました。高く投げ上げても、同じ場所にボールが落ちてくる。受け止める手元を見ることなく、安定した体勢でキャッチできる。また、滞空時間も長いため、落ち着いて、ゆっくり対応することができるようになりました。

メッセージの投げかけ

誰かに何かを伝えようとすることと、このジャグリングには似たところがあるような気がしています。

荒っぽく伝えると、そのフォローに手間取ります。しかし、理解してもらえるように、じっくりと伝えることで、フォローの必要性がぐっと減ります。お互いに、その後に自分なりの考えで、動くことができるため、「滞空時間」が延びます。

仕事の依頼という場面でも、同じかもしれません。荒っぽい指示の出し方よりも、理解を確認しながらの丁寧な指示の方が、結果として滞空時間を伸ばし、自分のゆとりにつながるのではないでしょうか。

カブリアナイトは、繰り返し同じメッセージを語り合うことで、それぞれが自分ごととして、自分なりのカンブリアサイクルを生み出し、世界を変えていくことを目指しています。

それぞれが自立的に自律的に活動していく。その滞空時間の長いコミュニケーションを、とても心地よく感じています。

この緩やかで自律的な空気感は、異なる領域の専門性を持った人々の出会う場にとって、とても重要なものだと思います。多様性が声高に語られますが、どのようにその場をつくることができるのか。そこには、さまざまな工夫が求められています。

そうした場をつくるための介入が模索されているということだと思います。この空気感づくりが、そのひとつのヒントになればと思います。

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