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AI Agent Era

どうも、すべての経済活動を、デジタル化したい福島です。

年末恒例になりました未来予測+来年の意気込みシリーズ。2021年末は「SaaS+Fintech」、2022年末は「コンパウンドスタートアップ」、2023年末は「AI-UXとAX(AI Transformation)」でした。

今年は「AI Agent」というテーマで書こうと思います。2025年はまず間違いなく「AI Agent」の年になります。(AI Agentという定義はなんぞや、みたいな話はありつつ)

LayerXは2025年、この領域にフルベットし、wowな体験、新たなビジネスモデルを模索していきます。

過去記事はこちらより

AI Agentとは

2024年、主に英語圏で、「AI Agent」「Vertical AI」「Agentic Workflow」といった言葉が一気に盛り上がりました。おそらく2025年、日本のVCがこういう言葉を輸入して使い始め、2026年-2028年にこの領域で急成長している会社がでてくると予想しています。という意味で2024, 25年は「AI Agent Era」が始まった年と後に記憶されると思います。

AI Agentの定義はAnthropicの定義を借りると、以下のものになります。

Workflows are systems where LLMs and tools are orchestrated through predefined code paths.
Agents, on the other hand, are systems where LLMs dynamically direct their own processes and tool usage, maintaining control over how they accomplish tasks.

(日本語訳)
ワークフローは、LLM(大規模言語モデル)やツールが事前に定義されたコードパスを通じて調整されるシステムです。
一方、エージェントは、LLMが自らのプロセスやツールの使用を動的に指揮し、タスクをどのように達成するかを自律的に制御するシステムです。

Building effective agents より

AI Agentは、あるタスクの目的+タスク完了のための道具群を用意すると、AIが自律的にタスクを計画し、タスクを完了する(事前に定義されたコードを必要としない)といったイメージです。より柔軟なRPAみたいなイメージというとわかりやすいでしょうか。

AI Agentはまだまだ勘違いの多い言葉であり、今後多くのhypeを生むと思います。少なくとも現時点では、AI Agentは適切なガードレールを敷き、タスクの領域も狭くしないとうまく稼働しないことがわかっています。

世で言われているAI Agentは上記定義でいう、WorkflowにAgent要素が加わった「Agentic Workflow」のことを指していることが多いと思います。

この記事では、いわゆるAI AgentもWorkflowにAgent要素を組み込んだものもひっくるめて「AI Agent」と呼びたいと思います。

SaaS is Dead

2024年「SaaS is Dead」というセンセーショナルな言葉が取り沙汰されました。

実際に内容を聞いたうえでの私の考えで行くと、SaaS is Deadというよりは、SaaS is Function(SaaSがAIが動かす関数・手足のone of themになる)という話かなと思います。従来SaaSでカバーすべき考えられていた範囲を超えて、より非構造な領域も含めてアウトカムを提供しに行くようにリポジショニングしないと既存のSaaS企業は死ぬよということだと思います。

ここらへんの話は、実際にSaaS企業を経営している経営者からするとめちゃくちゃ反論可能だし、反論したくなるような話とも思います。SaaSはディストリビューションゲームであり、SaaSが死ぬは極論であるという反論です。

私の考えで行くと、SaaSは死なないが、AI Agentの波に乗れないSaaS企業は死ぬという結論です。またその範囲は、プロダクトにとどまらず、裏側にある働き方、オペレーションそのものをwith AI Agentな働き方に変革していくことも含まれます。with AI Agentな働き方に変えられた会社とそうでない会社には凄まじい生産性の差が生まれるはずです。

世界最大のSaaSの会社であるSalesforceはAgentforceというサービスを提供しています。私自身もデモを見る機会がありましたが、衝撃的でした。CEOのベニオフ自身が、強いリーダーシップで「Agent First」と社内の優先度を大きく変えて動いているという事実・意味を、よくよく考えるべきと私は思います。

AI Agentのデプロイ先としてSaaSは最適です。業務やデータの標準化が一定なされていて、AIが使う道具もそろっている環境がSaaSだからです。

今後起こる競争は、「既存のSaaS企業がより狭く定義されたAI Agentを素早くデプロイする」 VS 「新興勢力が生成AIによってカバー範囲が広がったVertical AIから中核のワークフローにのぼってくる」という競争です。

当社も例に漏れず、SaaS + AI Agentの体験を誰よりも速く作り出していきます。今まで顧客と向き合い作り込んできたバクラクのアセットを活かしつつ、AI Agent Eraに求められるような全く新しい体験をつくる。AI Agent Firstな会社に生まれ変わらせていきます。

バクラクのチャレンジ

SaaSを動かすAI

具体的に何をというのは話せないのですが、ここでは基本思想を紹介します。基本思想として「SaaSを動かすAI」をバクラクでは作っていきたいと思います。

現在の業務の構造はSaaS(ないしは何かしらのシステム)の周辺で人が非構造な業務を補完しています。SaaSが進化してもこの構造は変わりません。

AI Agenticな世界では、人ではなくAIがSaaSを動かします。

社内資料の一部抜粋

SaaSの周辺には、非構造な業務がたくさんあります。今まではそこを人が補うことで、何かしらのタスクのひとかたまりが解決されてきました。そのコストも非常に大きいものでした。

menlo venturesによると、UiPathではSaaS $1に対して、コンサル・BPO(設定代行)に $7払われているそうです。SaaSよりも人の業務に払われるSpendのほうが大きいということです。

AI Agent Eraでは、システムの周辺にある業務をAIが補います。業務のあり方は大きく変わるでしょう。これはビジネス上の変化も引き起こします。Sowtware Spendの1に対して、Labor Spendとして7-10払われていた部分が、AI Agentによってキャプチャできる価値になります。今までのSaaS企業ってなんだったの?と思うようなACV(顧客単価)の会社が生まれると思います。

俯瞰的に見ると、バクラクの誕生の歴史的意義は、SaaSに目(AI-OCR)がついたということだと思います。これによって非構造なデータであった帳票(請求書・領収書等)がSaaSにシームレスに取り込めるようになりました。

そして現在、生成AIの進化で、マルチモーダル化が進んでいます。

これからはSaaSに頭脳がつくし、writing能力がつくし、口と耳がつくし、Computer Useによって手足も生えます。(個人的には2025年非常に大きな注目テーマがComputer UseとVoice Agentです。)

今までのSaaSでカバーできなかったような非構造な領域のかなりの部分がすでにAIによって扱えると感じます。必要なのは、具体的なApplicationです、顧客と向き合い、AI Agent Firstに考え、体験を磨き込むことだと思います。

Why バクラク?

バクラクはAI Agent Eraの強みがあるのか?という点です。

現時点でAI Agentがうまく働く前提として、AIにうまくコンテキストを伝えられるか?AIがタスクを解くための便利な道具を提供できているか?の2つが重要です。

バクラクのAI Agent Eraにおける強みはコンテキストをnativeに保持している点です。バクラクはコンパウンドスタートアップとして、会社のコーポレートの業務にに深く入り込んでいます。その中で、取引先データ、従業員データ、組織データ、稟議コンテキストなどAIがある取引のコンテキストを知るための環境がすでに備わっています。

AI Agentの構成も、AI Agentは大きなAIがすべてのタスクをこなすのではなく、大きなAIがOrchestratorとして、タスクを計画し、その先の道具のmini-Agentたち(下図でいうとworkers)をcallするというようなやり方が一般的なデザインになると思います。

Workflow: Orchestrator-workers (Building effective agentsより)

この図はLLM Callにはなっていますが、workersはLLMである必要はなく実際には、今まで作った機械学習モデルや、ソフトウェアファンクションもここに含まれます。

そしてここのworkersの作り込みがAI Agentの少なくとも黎明期には非常に重要な強みになってくると思います。大きなAIが動かす小さなAIをたくさん用意するということです。

生成AIで80%くらいまでの品質のものは速く作れるようになりましたが、80%のものを90%, 95%と品質を上げるにはものすごい努力が必要なのは変わっていません。

バクラクはその努力を長年積み上げてきました。

例えばAI-OCRひとつとっても「読み込む項目のカスタマイズ、コンテキストによって同じ帳票でも正解が変わる例外処理、複数枚含まれる帳票の分割複数税率の扱い、明細項目の読み込み…etc」 様々なworkerの組み合わせで高い精度を担保しています。(AI-OCRの工夫の数々は下記の松村の記事によくまとまっています)

こういったAIがうまく働けるように、人のレビューのしやすさと業務フィットした自動化を追求できるような体験を当社ではAI-UXとよんでいます。

このAI-UXを積み上げてきたというのがバクラク最大の資産であり、AI Agent Eraにおいても、このAI-UXの磨き込みが重要な武器です。

Big Techが大きな投資をすることでOrchestratorになりうる大きなAIが今年揃ってきました。来年以降の進化はもう我々では評価できないレベルの賢さになっていくと思います。

そしてバクラクは長年AI-UXを磨き込んだmini-Agentたち(workers)を作り上げてきました。この条件がいよいよ重なりAI Agentの体験が今この瞬間だからこそ作れるようになっているのです。ここに一足飛びで行くのはなかなかできません。

2025年はバクラクでのAI Agent元年。絶賛採用中

こういった世界観で、バクラクではすでに、いくつかのサービスを仕込み始めています。来年には、ああこのことをいっていたのかという第一弾のものが出てくると思います。

LayerXの取り組みについては、弊社の松本のnoteもぜひ読んでください!

こちらはLayerXのPdM陣がAIについて話しているpodcastです。

そして今、AI Agent Firstなプロダクト、オペレーションの作り込みを、私直下のチームで、スーパーエンジニアの名村(@snamura)と進めております。

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