エンタープライズセールスの作り方"初回商談後の工夫"編
エンタープライズセールスの育成方法もいよいよ最終回。今回は「商談後」編をご紹介します。
前職では、COOが営業育成を最優先課題として相当な時間を投資していたこともあり、エンタープライズセールスが多く輩出されていました。
新卒が3年で売れ出し、5年で独り立ち、売れる営業の層ができていたのです。
そんな過去を思い出しながら、以下のようなツイートを投稿しました。
多くの反応をいただき、もう少し詳しく聞きたいというお声も頂戴したので、「新人をエンタープライズ営業として独り立ちさせるまでの育成メソッド」の一例を3記事に分けてご紹介してきました。
1記事目は「商談前」の準備について。
2記事目は「初回商談」の進め方。
3記事目、「商談後」案件獲得に向けた工夫を組織で取り組むことで、強いエンタープライズセールスが作られていました。その工夫を下記にご紹介します。それではどうぞ!
失注0を目指す案件相談の嵐
初回商談後、新人が失注0を目指すためには社内の詳しい人や先輩を含めた案件相談が欠かせません。なぜなら、商談を終えたあとに今後の流れをイメージできていないことが多いためです。
経験豊富な社員でも、エンタープライズセールスの全てを一人でやり切ることは難しいため、新人こそ他人の頭を使うことが必要になります。
ちなみに前職では、案件相談せずに自分ひとりで進めて失注すると「なぜみんなの頭脳を集めて、やれることをやらなかったの?」と、こっぴどく怒られていました。
反対に、やれることをやりきって失注した場合「もうやれることなかったよね」と、怒られることはありませんでした。
そのため、初回商談後に限らず、どういうフェーズでも積極的に相談するのが当たり前という風潮があったように思います。
案件ごとにマネージャーへ相談しつつ、毎日のように「ホワイトボードMTG」を開き、多角的な視点を養っていました。
①アクションプランを明確に!「ホワイトボードMTG」のすすめ
商談後の案件相談でおすすめなのが「ホワイトボードMTG」です。
ホワイトボードMTGの重要なポイントは「参加者が無責任に意見を出す」ことです。
言ったことに責任を持たせると発言しにくくなってしまい、「思考を揺さぶり、アクションプランの幅を広げる」ことができなくなってしまいます。
前職では、ホワイトボードMTG中はみんな無責任でいいという掟がありました。
「××は確認したんですか?」「なんで役員に会っていないんですか?」など、無邪気な意見を歓迎することで、誰もが意見を言いやすい場になっていたのだと思います。
自分がやれるかどうかは別の話。
「あなたはできるの?」や「この前できてなかったよね」という反論を禁止することで、社員が意見を言いやすくなり、誰も思い付かなかったような良いアクションプランが生まれることがあるんです。
②ホワイトボードMTGの参加者
ホワイトボードMTGの参加者は、案件の特徴に合わせてアサインするのが理想です。
例えば「アイデアが欲しいなら発想力が豊かな社員」「リスクを減らしたいなら細かい視点に行き届く社員」など、どのような目線で意見を言ってほしいかで参加する社員を決めるという具合です。
前職では、チーム単位で開催することが多かったため、「マネージャ+チームの営業社員+別部署の専門知識がある人」という構成が大半でした。
別部署の専門知識がある人は「XXはこういうの得意だから参加してもらおう」とマネージャーや先輩が教えてくれることが多かったです。
また、新人も意見を言う側として積極的に参加させていました。新人の参加については、主催者側のメリットは正直そこまでありません。
ただ、新人育成という面では、案件をどのように進めていくのか疑似体験できるため、新人が案件担当者になった際にアクションプランを自分なりに考えられるようになるというメリットがあります。
これからホワイトボードMTGを始める場合、社員が前向きに参加してもらえるような環境作りが欠かせません。
意見を出す側の社員は自分の業務時間を削ることになるため、必ずしも積極的に参加してくれるとは限りませんよね。
では、社員が前向きに参加してもらえるような環境作りとは何か。
例えば、普段のチームMTGの一コンテンツとして実施すると、強制感なく参加してもらえます。まずは週に一度でいいので、ホワイトボードMTGを開き、ざっくばらんに意見を出し合ってみてください。
ちなみに、前職では呼ばれたら参加するのが当たり前。多くの社員が「自分の案件のホワイトボードMTGで良いアクションプランができたから自分も手伝おう」という考え方を持っていたからでした。
ホワイトボードMTGでの成功体験が増えてくると、「参加するのが当たり前」という環境ができてくるはずです。
③ホワイトボードMTGを開く前の準備
ホワイトボードMTGを開く準備として、案件状況を1枚に要約した資料とバイヤー相関図の用意が必要でした。
今後のアクションプランを明確にするためのMTGなので、現段階での状況がわからないと話を進められません。
そのため、案件状況を1枚にまとめ、参加した社員がパッと把握できるようにしておく必要があります。
また、ステークホルダーの力関係(バイヤー相関図)を整理すれば、そもそもMTGを開催する社員がアクションプランを立てるのに大いに役立ちます。
バイヤー相関図を作るにあたっては、顧客の組織図からわかることも多いので、その読み方はこちらのnoteをご覧ください。
案件状況とバイヤー相関図を用意した上で、
次の商談でどのように話を進めるか
アクションプランはこれでいいのか
見えてないリスクがないのか
といったことをテーマに挙げ、意見を出し合っていきます。
ちなみに、新人が勉強のためにホワイトボードMTGを開く場合は、そこまで厳しく準備しなくても問題ありません。何よりも開催することが大事です。
ホワイトボードMTGを開催して、他の社員の知見を得られるだけでも大きな成果になります。だからこそ、新人が積極的に開催しやすくするためにも、一時的にあえて開催のハードルを低めにするのもひとつの手です。
ぜひ、皆さんの会社でもホワイトボードMTGが至る所で開催されている状況を目指しましょう。
営業ファネル作成と管理
エンタープライズセールスに必要なのは、長期的な目線であり、そのためには「営業ファネルの作成と管理」が必要です。
クロージングにばかり目が向いてしまうと、来年のための仕込みがおろそかになりかねません。上から水を注がないと、ファネルの上がスカスカになるため、次の年に花が咲かなくなってしまいます。
例えば、見込み顧客の獲得やその顧客への有効なフッキング作業を放置した結果、翌年にはクロージングや受注へつながる顧客がまったくいない状態になってしまうという具合です。
そうならないためにも、クロージングに向けて動きつつ、長期的な視点で1年後の仕込みも同時に進めることが重要です。
個人的には、「1年後の仕込みを同時に進められないなら、クロージングはするな」と言いたいくらいです。
分業している場合でも、長期的な目線を持つことの重要性は変わりません。
エンタープライズセールスは本来、「半年や年単位の案件になるような芽をどれだけ作れているか」を常に気にして動かなければいけないものです。
大きい商談ほど年間の予算が大きいため、随時予算のように持っている予算の中から採用してもらうことよりも、期初の予算を取りに行くのが基本ですよね。
インサイドセールスは、その月のアポ数をKPIとして設定していることが多いため、長期的な視点を持っていないケースも考えられます。
そこで、
のように、中長期の目線を持ってコミュニケーションを取り合うことが重要です。
特に、エンタープライズセールスは、受注後に「新たなサービスを使ってもらう」「別の部署にも導入してもらう」ことを目指し、長期的な目線で営業ファネルを見て動かなければいけません。
そのため、営業部門のマネージャークラスは、常に長期的かつ部門全体を横断した目線で案件を見ています。
また、経験上は、売上が高い人ほど、マネージャークラスと同じ目線で営業ファネルを見て動いています。
つまり、各現場担当の社員もマネージャークラスの目線で営業ファネルを見ながら動ければ、成果が出しやすくなりますし、評価されやすくなるはずです。
値引き稟議書作成と承認
値引き交渉を受けた場合、前職では値引きの稟議をCOOに通さなければいけませんでした。
その際、やれていないことがあれば戻され、その「やれていないこと」をアクションプランにし、次回商談に活かしていたのです。
重要なのは、値引きを要請された際に「わかりました」とすぐに承諾するのではなく、値引きが必要な理由に合わせてアクションしているかです。
値引きを要請してきたのがチャンピオン(先方のキーマン)であれば、価格の価値を理解しているはずなので、値引きが必要な理由があります。
その理由を営業がしっかりと理解できていれば、社内の値引きに対する営業責任者に対して値引きを納得してもらえるはずです。
しかし、実際のところ値引きをする理由があいまいなことが多いものではないでしょうか?特に新人だと、その傾向は顕著だと思います。
日本電産の「社員を徹底して指導する際の永守の道具になるのは、実は稟議(りんぎ)書」という記事を見てからより確信しましたが、値引きの理由や必要性を明確にするためにも、営業責任者などへの稟議が重要な役割を果たすのでオススメです。
なお、そもそも値引きを避けるための方法は「値引きを避ける10箇条の掟」としてまとめていますので、ぜひご一読を。
顧客作成稟議書の取得
顧客が作成した稟議書には、エンタープライズセールス成功のための貴重な情報が詰まっています。
「稟議書は見せてもらえるの?」という声が聞こえてきそうですが、私自身、新人時代に顧客の稟議書を教科書代わりにしていました。
では、どのように稟議書をいただくか。
まずは、お客さんに「どういう感じで上層部に説明したか、教えていただけませんか?」という「お願い」をしてみます。経験上、信頼関係を築けていれば、断られることはありません。
そして、実際に話を聞いたあと、「黒塗りでもいいので稟議書をいただけませんか?」とお願いしてみます。
このときに、私は「ユーザーが増えれば機能も増やせるので手伝ってほしくて...」「他のお客さまもどう上層部に説明するか困っているため、他のお客さまが採用いただくときの参考になるので」などと伝えています。
また、稟議書の共有を値引き条件としてこっそり約束しておくのもひとつの手段です。
失注振り返り
失注した場合、なぜ商談しても契約に至らなかったのかを分析しないと、再び同じような流れで失注しかねません。
経験上、失注分析を元に改善を繰り返すことで、初回商談で終わることは激減します。(マジで重要です!!!)
失注分析の方法は7つのステップにまとめているので、ぜひご覧ください。
終わりに
今回は、営業の育成の中でも「商談後」の部分について、ご紹介をしました。
エンタープライズセールスは、営業社員1人だけで乗り切れるほど簡単ではありません。全社員の頭脳を駆使しながら、会社全体で一人の社員を一人前にする気持ちで、育成に取り組んでいきましょう。
RightTouchではまだまだ創業メンバーを募集中で、成長できるフィールドは山のようにあります。
エンタープライズ営業も含めて、こんな環境で少しでも働いてみたいと興味を持っていただいた方は、ぜひ応募をご覧いただき、カジュアルに話しましょう。