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【学び直し】社会人院生のリアルについて、質問に答えてみた

東京藝術大学で社会人院生になってみて1年が経過しました。

コロナ禍を経て自分のキャリアを見つめ直す人が多いのか、身の回りでも社会人になってからの学び直しを検討する人が増えてきたように思います。

そんな中、社会人だが異分野の大学院受験をご検討されている知人のフリーランス社長の方から、社会人院生のリアルについて色々とご質問をいただきました。境遇的に近い方もいらっしゃるかもしれないので、せっかくなのでその内容を公開してみます。ご参考まで・・・

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Q:noteを見た限り、大学院に進学することは他のビジネス関係者にあまり周知せずに受験したようにお見受けしました。割とすぐに大学院は始まることになるかと思いますが、継続的に続くお仕事の場合には、調整できるなと思った上であまりビジネス関係者にお伝えしなかったのでしょうか?

自分の業態的に単発のご依頼が多いので、特に周知する必要はないかなという判断でした(継続するお仕事についても、割とライトなものが多かったし、むしろ新しいネタや視点にもなるかなと)

↓これがガチ第一報で、それまで周囲にまったくお知らせしていなかった女


あと個人的なジンクスとして「不言実行が一番」というものがあり、言わなかったのもあります、自分は言ったら満足しちゃってやる気なくすとこあるので……。

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Q:そもそも入学前にどれくらい時間を取られるのかはイメージできていましたか?

はっきりイメージできていなかったです。独立前の会社員時代は副業作家としてどうにか二重生活でやりくりしてたし、どうにかなるだろと思ってました。「藝大先端の大学院はゆるい」と噂レベルですが聞いていたので、ほぼ放任な感じなのかなと予想していました。
そのため仕事のオファーとかで受けたいものは入学前の2〜3月の時点で結構ぶっこんでしまいました(が、蓋をあけてみると予想以上に時間を使う感じだったので愕然、なにより取手キャンパスへの通学に片道2時間、往復4時間かかるのがボディブローのようにきいた)

1年目に気さくに仕事ぶっこみすぎて大変だったので、修士2年目は案件の受託数をかなり厳選しています。

Q:入学後どれくらい学業に時間を使っていましたか?たとえば1週間のうち、半分くらいは学業(授業も含む)。半分を仕事に充てていたとか。またそれは入学前とギャップはありましたか?

時期による部分が大きいです。院のカリキュラムの中でも展示があったりして繁忙なタイミングは平日のほとんどが学業で埋まるような時期もあり、そういったみっちり大学カリキュラムに専念する期間は1年のうち累計で1ヶ月半〜2ヶ月ぐらいはあった気がします。
長期休暇期間をのぞいて、修士1年目はなんだかんだで平均して週のうち3日ぐらいのリソースは定常的に大学関連に使っていた記憶です。
仕事ができる時間が予想以上に減る&細切れになるのでそこはイメージとギャップがありました(ちなみに修士1年目の年商は、普通に仕事ができた年の2/3ぐらいになりました。

なお、土日どちらもフルで休めることは修士1年目はほとんどなかったです・・・仕事に集中できる貴重な日が土日という感じでした。

自営業は自分で自由にスケジュールを組めるのが強みですが、院に入ると強制的にある程度のスケジュールがロックされたり先々の予定が自動的に決まってしまったりするので、ダブルブッキングしないかと常にヒヤヒヤしてました。

入学予定の学校の先輩とかに、年間スケジュールをざっくり聞いておいてだいたいの学業のスケジュールを掴んでおくと、予期せぬバッティングを減らせるんじゃないかと思います。自分も修士2年目の修了制作まわりのスケジュールを血眼で先輩に聞きまくりました。

Q:仕事と学業の時間配分の調整の結果。2年で修士を卒業できない可能性は考えていたか?

藝大は特殊かもしれませんが(作家志望が多いので新卒カードとかあまり関係ないし)、休学して3年間〜で院を卒業する人が結構いました。社会人院生であればなおさら、時間かけて院を卒業するのも全然ありなんじゃないかなと思います。
自分は卒業後の進路が決まっているので、とにかく最短卒業を目指しています。あと、自営業⇄学生のモードチェンジが大変なので、学生生活に慣れてきたうちに勢いで一気にカリキュラム終わらせて学位とって次のキャリアにスカッと進みたいという思惑もあります。
そういったタイムリミットさえなければ、自分も3年でゆっくり修了したかったです。なんだかんだで大学面白いし。

Q:noteを見る限り、ゼミは入学後に選定していたようですが、事前に入るゼミを決めていましたか?また、もし希望のゼミに入れなかった場合にはどうしていたのかも気になっています。

藝大先端はゼミは入学後に決めるスタイルなのでここはそもそも前提条件が大学・学科によりそうです。自分は希望の指導教官・ゼミは入学前から決めていましたが、コロナの時期でもあったため事前面談などはしませんでした。
入学後に先生方と色々話をしていると面白い先生がたくさんいらっしゃったので、万が一希望ゼミに入れなくてもそれはそれで満喫していた気がします。実際、たまに他のゼミの行事にお邪魔することもありました。

Q:市原さんは極力他の学部卒の院生と同じように過ごそうとしていたようにお見受けしました。社会人大学院生の場合、それは難しいのかなと思っていますが、ゼミとしてはその辺の考慮はあったのか?

全体的に特に「社会人だから」という特別扱いはなかったです。藝大先端は社会人院生用のカリキュラムは特にないので、他の学生と平等で、現役学生さんと同じように課題もやるし、いろんな用事に駆り出されていました(例えば学内の展示の見張りのシフトなど)。
MBAとか社会人大学院コースとかだと業務スケジュールへの配慮もありそうなので、羨ましいなと思っていました。

とはいえ、修了のためには学内でいろいろなタスクが発生するのに、社会人なのを理由に他の若い学生さんにタスクを押し付けてたら不平等だよな(学位をもらうための手間と時間を大人が若者から搾取してるようなものなので)という考えで、なるべく平等にやってました。
(ただ、同期と飲んでる時に『市原さんぐらいのキャリアの作家が学内展の運営タスクとか真面目にやっても、たいして得るものないと思いますよ』と忠言もらったので、バカ正直にやりすぎたかもしれない)

とはいえ、本当にガチ繁忙期の時は「まじで忙しいです、死にそう、しばらく飲み会行けませんしいろいろ幽霊部員モードになります」とSNSに発信してました。
また、ゼミのカリキュラムの中でも参加任意のものについては、出張や他案件の佳境とどんかぶりした場合は業務都合で部分的な参加にできないか(しかしこの部分については責任をもってやる)と調整の交渉をすることはありました。

Q:大学院のカリキュラムが週1日に固まっていると記載があったのですが、これは自分で履修を調整したのでしょうか?

必修授業がある日と、ゼミの日が一週間の中ですでに決まっていたので、それ以外の日はなるべく仕事にあけられるように履修科目を調整しました。
たまに暇なタイミング(めったにないですが)があったら、それ以外の気になる科目はモグりにいってました。
藝大の院はあまり卒業に必要な選択科目の単位数が多くないので、1年前期に早々に単位はおさえました。あとは気になる授業を行けるタイミングで聴講しようという計画です。



Q:受験に関して、受験内容は自分の知識量でいけるものだと確信していたか。また、もし落ちていても来年挑戦したか

作家として、それなりに受賞歴や国内外の有名美術館での展示歴などあったので、よほどのことがない限りは受かるだろうとは思っていました。
自分の場合はこれまでの仕事の内容と大学のカリキュラムがそこそこ一致しており日々の仕事が受験に直結するようなものなので、直前を除いて、特別な受験対策はしていなかったです。

さらに社会人の強みとして、もし落ちたとしてもそれでキャリアがどんづまりになることはないので、(もう働いているし、キャリアに空白ができてしまうとかない)落ちても再受験トライするのは比較的しんどくないんじゃないかなと思います。

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以上、芸術大学というやや変わった環境ではありますが、フリーランス社会人院生のリアルをお答えさせていただきました。
学業と業務の繁忙もあり、基本的には個別の進路相談みたいなものは受け付けていないのですが(今回はちょうどタイミングもよかったので、先着として特別に実施)働きながらの院進学を検討されている方にとって、なにか少しでも参考になれば嬉しいです。


文:市原えつこ
アーティスト。1988年生まれ。早稲田大学文化構想学部表象メディア論系卒業。2016年にYahoo! JAPANを退社し独立、フリーランスに。
日本的な文化・習慣・信仰を独自の観点で読み解き、テクノロジーを用いて新しい切り口を示す作品で文化庁メディア芸術祭優秀賞、アルスエレクトロニカで栄誉賞を受賞。2025大阪・関西万博「日本館基本構想事業」クリエイター。近年の主な展覧会に「六本木クロッシング2022展:往来オーライ!」(森美術館)、「New Eden」(Art Science Museum、シンガポール)等。現在、東京藝術大学大学院先端芸術表現専攻に在学中。

https://etsuko-ichihara.com/


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市原えつこ(アーティスト)
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