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「やりがい」×「働きやすさ」を科学する


皆さん、こんにちは。

今回は「ワークエンゲージメント」について書かせていただきます。

新型コロナウイルス禍でテレワークなどの多様で柔軟な働き方が普及した。2021年はそれを定着させる年となる。多くの企業で「ジョブ型雇用」の運用が始まり、生産性向上やイノベーションの果実を得るための挑戦が加速する。いかに個人のやる気を引き出す仕組みを作れるか。アフターコロナの「働きがい改革」が始動する。
(中略)
日本では従来、職務内容を限定せずジョブローテーションを通じて幅広い業務を経験させる「メンバーシップ型雇用」が一般的だった。定年まで雇用は保障される一方、会社から命じられる異動や転勤は拒めない。大量生産の製造業などと親和性が高く、企業が柔軟な人材戦略を組めるメリットはあったが、働き手の主体性は損なわれ熱意を失う人も少なくなかった。
(中略)
働き手の主体性や熱意を測る尺度として世界で注目を集めるのが「ワークエンゲージメント」だ。2000年代に欧州で確立した概念で「働きがい」と訳される。近年の働き方改革の主眼となってきたのは労働時間の短縮だが、今後日本に求められるのは「働きがい」の向上だ。
調査機関、米グレート・プレース・トゥー・ワークによれば、働きがいには「やりがい」と「働きやすさ」という2つの要素がある。「やりがい」を高めるのがジョブ型雇用であるとすれば、「働きやすさ」の改善のカギはテレワークだ。
労働時間管理が厳格で、デジタル化も遅れていた日本は永く「テレワーク後進国」だった。子供のいる女性や高齢者の労働参加の可能性を狭め、生産性を押し下げてきた。コロナ禍で普及したテレワークは働き手から時間と場所の制約を取り払い職場の多様性を高める。
(中略)
一方でテレワークの副作用も表面化している。米オラクルなどが20年7~8月、11カ国の約1万2千人に実施した調査では、テレワークで生産性が上昇したと答えた人の割合は世界平均では41%だったが、日本は15%にとどまり11カ国中最低だった。
職務内容に限定がない日本では個々の働き手の目標設定は不明確。上司からの指示に依存する傾向が強く、コミュニケーションが希薄な在宅勤務になると何をやっていいか分からなくなる。
リクルートキャリアの藤井薫氏は「21年はテレワークに対応した『アサインマネジメント』の元年になる」と見る。上司が的確に部下に仕事を割り振り進捗を管理し、目標達成につなげるマネジメントの質の向上が求められる。目標設定が明確にできるジョブ型雇用の導入との組み合わせも効果的な選択肢だ。
働き方改革で労働時間の短縮は進んだ日本だが、限られた時間から付加価値を生み出す労働生産性はなお先進国で最低だ。少子高齢化に伴う労働力の減少も見据え、一人一人の働き手の働きがいと生産性を高める不断の努力が求められている。


記事の中で、『働きがいには「やりがい」と「働きやすさ」という2つの要素に分けられる』という説明があります。

「やりがい」と「働きやすさ」のそれぞれについて、当社の事例も交えながら、ワークエンゲージメントを高めるためのポイントを考えてみます。

①「やりがい」を生み出すもの=挑戦環境

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1 個人と組織が変化に対応していく仕組み
→たとえば、市場の変化や会社の変化に合わせて、新規事業を生み出す必要が出てきた場合、社内で新規事業立案コンテストを開いたり、新規事業立ち上げに合わせて社員を抜擢したりしています。
当社では2006年から行っている「あした会議」という、会社の未来について真剣に議論する会議体があり、役員が自らチームを作り、経営課題を解決するための案を提案する場もあります。そこで決議された事業案については約2週間で会社設立にまで至ったケースもあります。
こういった、個人だけでなく、経営側も変化に対応していく仕組みがあると、会社としての変化対応力がどんどん上がり、変化に強い組織が作られるのです。

2 自分のキャリアを自分で開ける仕組み
→「自分で自分のキャリアを選択する」という制度や仕組みは、やりがいに直結します。
当社では、頻繁に配置転換や部署をまたいだ大きな異動、部署横断の兼務や役割追加などがありますが、基本的には本人の意志を尊重することを大事にしています。また、キャリアチャレンジ(通称キャリチャレ)という手挙げ型の社内異動制度もあります。

3 若手でも活躍できる仕組み
→若いうちから裁量権がない会社は、就職活動中の学生からも選ばれなくなってきています。20代のうちにどれだけ成長できるのか、20代でも活躍できるのかという質問に対して、苦しい答えしか出せない会社は、若手社員が仕事のやりがいを感じることは難しくなっているのではないでしょうか。

4 挑戦を後押しする仕組み
→挑戦を後押しするには、万が一失敗してもセカンドチャンスがあるよ、という事例を作り、企業文化として定着させていく仕組みが必要です。詳しくはこちらでもご紹介していますので、ご覧ください。

5 承認する仕組み
→やはり「承認」されることはやりがいを高めるために外せない要素です。頑張った人には光を当てる、しかも褒める時は盛大に褒める、というのは、個人の承認欲求を満たす上でも非常に重要です。しかも、表彰する人やその内容は、そのまま経営メッセージにもつながりますので、表彰文化を組織の中で定着させ、頑張りがいがある、頑張ったら報われるという仕組みを生み出すことは、業績向上にも直結することになります。

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②「働きやすさ」を生み出すもの=心理的安全性

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1 個人と組織が変化に対応していく仕組み
→このコロナ禍において、分かりやすい事例の一つが、柔軟な働き方ができるかどうかです。リモートワークもその一つですが、働くスタイルの多様化に向けた、企業の制度作り、環境作りが多くの従業員から求められていて、ここに遅れをとってしまうと「働きやすさ」を感じてもらうことはもはや困難な時代になっています。

2 社員へのフォローアップの仕組み
→DXの推進が叫ばれている今、どれだけデジタル化の時代になっても「アナログで個にフォーカスする」ことの重要性を感じています。当社では“GEPPO”という、社員のコンディションを把握するためのツールを導入していますが、ここで出た社員の声を、丁寧に一つ一つフォローしています。
目標が明確かどうか、リモートワークにおいて不安はないか、人間関係はどうか、組織の熱量は高いかどうかなど、社員の本音を引き出し、個別に手を打つことで、働きやすい環境作りに活かしています。

3 社員が安心して働ける仕組み
→社員が安心して働ける仕組みの一つとして、福利厚生制度が挙げられますが、私自身、採用活動に関わっていると、就職先や転職先を決める上で重要視している項目として「福利厚生の充実度」を挙げる人が予想以上にいます。福利厚生の見直しで社員満足度が大幅に向上したという事例などもありますし、社員が安心して働きやすいと感じる大きな要素の一つであると言っても良いと思います。

4 相互理解を深める仕組み
→個人の志向に合った環境や機会を提供することは、働きやすさを実感してもらう上で必要な要素ですが、そのためには社員同士の相互理解が不可欠です。ただ理解し合うだけでなく、強いチーム、強い組織を作るための相互理解の仕組みを工夫して構築すると良いと思います。当社でも「価値観9ブロック」というワークショップを開発し、お互いをよりよく知り、業務に活かすという取り組みを行っています。
相互理解が深まると、強い信頼関係が築け、組織への愛着や帰属意識を高めることにもつながります。

5 貢献意欲を高める仕組み
→ジョブ型雇用が定着してくると、個人主義、成果主義の色が濃くなることについては、過去のnoteでも何度か言及させてもらっています。そこで、成果主義になることで薄れてくる、組織貢献意欲を高めるための工夫の一つが「評価制度」だと考えています。詳しくはこちらに書いていますので、あわせてご覧ください。

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ここまで挙げてきたポイントをまとめると、ワークエンゲージメントを高める方程式は以下の通りだと考えます。

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まとめると、

1、働きがいを感じるには、「やりがい」と「働きやすさ」、どちらも必要。
2、個人と組織の自走力が高いと、ワークエンゲージメントは高まる。
3、個人と組織の変化への対応力がワークエンゲージメントを高めるためのカギ。

これらを満たしている会社が、従業員に“働きがい”を感じさせる会社の特徴なのではないのでしょうか。


一般的には、ワークエンゲージメントとは、仕事に対して「活力・熱意・没頭」の3つの要素が兼ね備えられた状態とされているようです。(※オランダ・ユトレヒト大学のシャウフェリ教授により提唱された概念)

・活力:仕事から活力を得ている状態
・熱意:自分の仕事に対して誇りや思い入れ、やりがいを感じている状態
・没頭:熱心に仕事に取り組んでいる状態

従業員一人ひとりが、これらの要素を満たしていれば、社員のモチベーションも上がり、個人の業務に対するコミットメントも増し、新しい発想やアイディアを引き出せる可能性も高まります。それに伴って、組織の生産性やパフォーマンスを上げることにもつながるでしょう。

一度社員がエンゲージされると、ポジティブな連鎖が起こり、そのエンゲージレベルはどんどん上がっていきます。

仕事から活力を得て、やりがいを感じ、熱心に取り組む」。

この状態は、個人の能力や強みを発揮し、周囲(特に上司)から期待され、評価され、承認され、適切なフィードバックを受ける機会があることで更に加速させられるはずです。


結局のところ、“成長”がない場所には働きがいは生まれません
組織や一緒に働く人との関係性がベースにあって、それぞれが信頼し合い、切磋琢磨しながら、個人も組織も常に変化に対応していく。その過程で新しいことを学び、成功と失敗を繰り返しながら成長していく。

こういった、個人の自走環境と、組織の自走環境、どちらもがセットであるような、変化への対応力を高める環境構築をすることが、ワークエンゲージメントを高めるために最も有効な手段ではないでしょうか。


#日経COMEMO #NIKKEI

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