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コロナ禍を踏ん張った「ミニシアター」が直面している問題について

下北沢に映画館『K2』を開館してから、早いもので1年半も経ちました。
下北沢の駅前といえば東口のイメージが強いからか、駅から徒歩0分なのに、いやだからこそ「場所が分からない」という声もちらほら頂いていましたが、お陰様でなんとか定着して来たのを感じる今日このごろです。

*ちなみに「K2」は南西改札口から徒歩0分です!ぜひお越しください!

さて、そんな最近は、MOTION GALLERYもK2もあり日々バタバタしている結果、日経COMEMOに全然書けてなかったのを反省しつつ(笑)、コロナ禍で行った「ミニシアター・エイド基金」の発起人でもありつつも、ミニシアターのいち運営者でもあるという、複数の視点でミニシアターに関わっている人間として、今あらためて訪れている全国のミニシアターに訪れている困難についてお話したいと思います。

ミニシアター新世代台頭

ちょど先日、日経新聞で最近ミニシアターに関する記事が出ました!
コロナ禍を経たミニシアターで今、新世代となる新しいミニシアターが生まれてきていることについて、我々下北沢『K2』も取り上げて頂きました!

そんな逆風の中で、新しい発想でミニシアターを立ち上げる新世代の上映者が台頭してきた。

日経新聞

短編映画の資金調達から劇場公開までを支援する「ショート・フィルム・ビオトープ」は新たな試みの一つ。クラウドファンディングで製作費などを集め、K2で公開する。「映画ファンと一体になって若い作家に寄り添いたい」と大高代表。

日経新聞

他にも、本での劇場未公開作品や、配給権が切れた旧作を同館での上映のために自前で買い付けて、独自の特集上映を組んでいる、東京都墨田区に昨年9月開業した「ストレンジャー」や、デジタル化が立地にも変化を生んだことで生まれた、人口わずか1万6千人の鳥取県湯梨浜町「ジグシアター」も、新しい発想でミニシアターをアップデートしようとしている取組として紹介されています。どれもとても魅力的なミニシアター!

この記事でも言及されている通り、新しいパラダイムになったことで、減少傾向にあるミニシアターに新しい灯火がともりそうなのはとても嬉しいことですし、自分たちもそうなれるように頑張っていきたいと思います。
ただ、この日経の記事の前半部分が今回お話したいところでもあります。

日本の映画館のスクリーン数はシネコンの開設が本格化した1994年から2021年までほぼ一貫して増えてきたが、11年と12年だけは減少した(日本映画製作者連盟の統計)。上映素材がフィルムからデジタルに変わった時期だ。コミュニティシネマセンターの調査によると、デジタル映写機導入の設備投資に耐えられない既存興行館が年15〜20館も閉まった。
この危機を乗り越えた館が、10年使った映写機の更新期を迎え、再び苦境に立っている。ミニシアターの数は新規開業や既存興行館からの転換で増勢にあるが、台所の苦しさは10年前と同じだ。

日経新聞

迫りくる、デジタル映写システム(DCP)更新問題

2020年春、新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が発令され、政府からの外出自粛要請が続く中、閉館の危機にさらされた全国のミニシアター。その支援のため、映画監督の濱口竜介監督、深田晃司監督、そして私大高らが発起人を務めたクラウドファンディング「ミニシアター·エイド基金」を立ち上げ、多くの映画ファンや映画関係者が映画館への思いを胸に集い、結果的に3万人以上の支援者から3億3千万円を越える支援金が集められました。このプロジェクトはミニシアターがコロナ禍を乗り越える大きな力となりました。

しかし、悲しいかな、それを乗り越えてもなお、全国のミニシアターはさらなる困難に立ち向かっています。それは、この20年の映画上映における最大の変化とも言えるデジタル映写システムにまつわる問題です。これまで地域に根ざし映画を支えて来た各地のミニシアターが、頑張って導入したデジタル映写システムの更新期間が迫っていることで再度多額の設備投資を要する状態になっているのです。

2010年初頭から訪れた映画館の心臓部である映写機のフィルムからデジタルへの移行は、地域の映画館の閉館に拍車をかけました。約10年毎に部品の製造終了があり、更新せざるを得ないこのシステムは、中古でしばらくの期間使えたとしても、修理部品がなくなれば、使用できなくなり、更新を余儀なくされます。そのため、計画的にシステム更新に向けて積立をしてきたミニシアターでも新型コロナ感染での観客激減による大幅な赤字が続き、その積立を赤字補填に充当したことで、資金の工面に難航し、存続の危機にあります。

少し前ですが、ミニシアター界でも大きな閉館のニュースがありました。

今回は、みなさまに応援頂いたミニシアター・エイド基金のときのような、わかりやすさがあるテーマではない分、もしかしたら社会的な広がりや連帯が難しいかもしれません。でも、まさに今2つの映画館がこの問題にとりくむべく、クラウドファンディングをスタートしています。

▼シアターキノ
1992年の創設以来、29席という日本一小さな映画館としてスタート。1998年4月に2スクリーン(75席と63席)のミニシアターとして移転し、昨年30周年を迎えました。今まで、多様な国や民族の、インディペンデントからエンターティメントまで、6,000本を超える作品を上映。そして多数の監督、キャスト、スタッフの皆さんをお招きしたトークとティーチインを積み重ね、映画講座やワークショップを開催、地域の皆さんと合同での映画制作等を行なってきました。また、演劇、アート、音楽、文学といった芸術関係団体との共同事業など、札幌におけるコミュニティシネマとして精力的に活動しています。

▼シネマ尾道について
昭和22年から続いていた「旧尾道松竹」が2001年に閉館となり、映画の街·尾道に映画館ゼロの時代がやってきました。7年間映画館がなくなった尾道市で、2,700万円の市民草の根募金を集めて改装し、2008年に再興したミニシアターが「シネマ尾道」です。現在は、NPO法人を母体とし、社員、アルバイトスタッフ、地元大学生や社会人などのボランティアスタッフで運営し、開館15年目を迎えています。「こども映画制作ワークショップ」などを開催し、映画を通じた地域の子どもたちへの情操教育や、映画を通じた尾道の街づくりに貢献しています。

ぜひそれぞれのページを見て、共感いただけると嬉しいです。
コロナ禍から救うクラウドファンディングよりはある種の専門的で直感的ではないテーマの危機かもしれませんが、これはコロナがなくてもいつか訪れたミニシアターの本質的な危機です。いままさに全国のミニシアターが直面している問題ですし、その解決の為のアクションとして先陣を切ってとりくんでいる2つの映画館のアクションがこのクラウドファンディングでもあります。

K2を運営していて実感していますが、設備の更新に多額な費用がかかるのがわかっていても、ミニシアターの業態でその多額の費用を備える利益を出すのは本当に難しい。。ある意味では「ミニシアター新世代」にもいつか訪れる問題でもあります。全ては温故知新。そういう意味では、このDCP更新問題をこれまで長年映画人や映画ファンに貢献してきた歴史あるミニシアターが乗り越えられるかどうかが、「ミニシアター新世代」そして映画業界全体の未来を占っているといえるでしょう。

ぜひ、この機会に、映画館の構造的課題について、多くの人に少し思いを馳せてみていただけると嬉しいです。

ちなみに、抜本的な解決策として欧州で行われているのは、恒常的な公的助成らしいです。文化の豊かさは社会の豊かさの指標である。だからこそ市場経済の原理だけではなく公共性として支えるべきものでもあります。ただ、その支える公共性の主体はどこにあるべきなのか。とても難しいし答えがない問いを、動き続けながら、考え続けたいと思います。

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大高健志@MOTION GALLERY
頂いたサポートは、積み立てた上で「これは社会をより面白い場所にしそう!」と感じたプロジェクトに理由付きでクラウドファンディングさせて頂くつもりです!