インバウンド受入再開も大事だがアウトバウンドが推進できるような計らいと同調圧力の緩和も必要
新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
新型コロナウイルス感染症やコロナワクチンについては、必ず1次情報として厚生労働省首相官邸のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。
見出し画像

インバウンド受入再開も大事だがアウトバウンドが推進できるような計らいと同調圧力の緩和も必要

水野泰孝 Global Healthcare Clinic

 政府は6月にも入国者数の上限を引き上げると同時に外国人観光客(インバウンド)の入国を再開する調整に入りました。

 欧米諸国だけではなくアジア諸国でも外国人観光客の受け入れ再開の動きが相次いでいます。英国はワクチン未接種者でも検査は不要、シンガポールも観光客の入国規制をほぼなくしている中で、日本の検疫体制は厳しいままの状態が続いており、外国人観光客に支えられていた事業への打撃はいつまでも回復することができませんし、将来の夢や希望を断たれてしまった留学生や親日家も少なくはないでしょう。「いつになったら日本へ」 水際規制、親日家に扉閉ざす: 日本経済新聞 (nikkei.com) 
 検疫の厳しさは海外渡航を希望する日本人にとっても高いハードルであり、渡航先が緩和されていたとしても帰国する72時間前のPCR検査を日本指定のフォームに指定された検査方法で行い、さらに空港検疫で抗原定量検査を行う必要があります。Microsoft PowerPoint - 【20220317HP】検査証明書の要件 (mhlw.go.jp) 現状では検査結果が出るまでに数時間かかると言われており、それまでは検疫を通過することはできません。このような状態のままで入国者の上限を増やせば、さらに入国までの時間を要することになり、特に夏休みなどの繁忙期には(あくまで検査が陰性ということが前提ですが)、帰国した同日に帰宅できるのか?とも考えてしまいます。
 これまでの流行の波(第1, 3, 5, 6波)は海外から持ち込まれた変異株によるものであったのは事実ではありますが、一定の潜伏期がある感染症や症状が目立たない感染症を水際対策で完全に止めることはほぼ不可能であることから、持ち込まれることを前提とした検査体制や医療体制の強化が求められます。日本人の海外渡航を推進させるためにも検疫体制の緩和に乗じて入国後の医療体制の強化、これは感染症法の見直しにもつながる課題ではないでしょうか。

 訪日する外国人観光客に日本の感染対策はどのように映るのでしょうか?欧米諸国では屋外でマスクをしている人はほとんどいない状況です。当然ながら感染リスクが低いからであり、日本での滞在でもおそらく同様の行動をとるでしょう。それを意識したのか、最近のマスク議論に関する報道振りを反映してなのか、ようやく政府としての見解が出てきました。新型コロナ: 官房長官「屋外でマスク不要」 十分な距離とれる前提で: 日本経済新聞 (nikkei.com)
 また、私はコロナ禍でも月1回の北海道出張で航空機を利用していましたが、外国人が来日するために利用するであろう航空機のアナウンスについて毎度疑問に感じていることがあります。「適度な距離を保ってご搭乗ください(→マスクをして黙っている人たちが距離をとる必要あるのか?)」と言っている割には機内では密着状態→だったら最初から距離を取る必要もないのでは?)ですし、「食事の時以外はマスクをしてください」は理解できますが、「他のお客様の不安解消のためにマスクをしてください(→マスクは不安解消のためにするもの?)」や「おやすみの方でマスクをしていない場合にはお声掛けをします(→会話をしていないのにわざわざ起こしてまでさせる必要があるのか?)」というのは真の感染対策ではないと考えます。その一方で「キャビンの空気は数分ごとに入れ替わっており十分な換気ができているのでご安心下さい」ともアナウンスされています。私はどうやって外国人に説明するのか、理解していただけるのか、正直疑問です。
 
 マスクや航空機での対応だけではなく日本の感染対策は「見かけの感染対策・やっている感の対策」であることが少なくありません。私は昨年の段階からこのことを指摘してきました。「やっている感の感染対策」では「真の感染対策」にはなっていないことがあるが未だにアップデートされていない|水野泰孝 Global Healthcare Clinic (nikkei.com) しかし、コロナ禍が続くうちに「やっている感」が美徳となり、その行為が次々と足し算(例えば、マスクをしているのにフェースシールドをする、マスクをしているのに過剰な距離を取るなど)になっていったように思います。とりあえずやっておけばという「安心感」不要なことまで「感染対策」と称して日常生活に刷り込まれていったことにより日本人独特の「同調圧力」が生まれ、その圧力により不自由を感じた方、理不尽な思いをした方、あるいは健康を害した方、そして何よりも一番犠牲になったのは一生に一度しかない学校行事を奪われた子どもたちです。識者としてだけではなく一保護者としてもういい加減に学校行事の制限はやめていただきたいです。

 国際交流を再開させ、ウィズコロナ時代を過ごしていくためには、真の感染対策を効率良く行うことが重要であり、「やっている感」「安心感」だけの行為は引き算していくことを広く理解していただくことが必要だと考えます。もちろん安心したい方は自身で行えれば良いのであり、やらなくても良いことをやらなければならない雰囲気(=同調圧力)を減らしていくという意味です。

新型コロナ出口戦略ーいつまでも守ってばかりいるのではなく攻めていかなければ何も見えてこない。そのためには正しい知識のアップデートと実践が望まれる|水野泰孝 Global Healthcare Clinic (nikkei.com)
#日経COMEMO #NIKKEI

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
スキ ありがとうございます
水野泰孝 Global Healthcare Clinic
東京慈恵会医科大学大学院修了。タイ王国マヒドン大学熱帯医学部留学、在ベトナム日本大使館医務官、東京医科大学准教授、同大学病院感染制御部長・感染症科長を歴任。専門は熱帯医学、渡航医学、予防接種。日本感染症学会指導医、日本小児科学会指導医、米国熱帯医学会認定医(CTropMed®)。