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新型コロナ出口戦略ーいつまでも守ってばかりいるのではなく攻めていかなければ何も見えてこない。そのためには正しい知識のアップデートと実践が望まれる

 2022年初頭から一気に拡がった新型コロナの全国的な流行は2月以降にピークアウトを迎えたような印象でしたが、最近になり政府や専門家からは「下げ止まり」「第7波の入り口」などと注意喚起がなされています。これまでは少しでもこのような兆候が見られれば真っ先にメディアが取り上げていたわけですが、3月以降はお構いなくウクライナ情勢一色であり、単に一日の感染者数が増えた減った程度で議論しているだけなので、さらに意味をなさなくなっている印象です。個人的には1週間に1回程度、その週の平均を報告していただければ十分に思います。ウクライナ侵攻により影を潜めた新型コロナ関連報道 ーそもそも連日の報道は意義あるものだったのか?|水野泰孝 Global Healthcare Clinic (nikkei.com)
 
 実際の都内の状況ですが、2月以降はピークアウトはしているものの、発生届を全く出さない日もあれば一日に複数名出す日もあり、この繰り返しは4月になってもほとんど変わっていません。すなわち増えている印象はあまり感じず、週平均でみればほぼ横ばいです。それが前週比で100%前後を行ったり来たりしている状況であると考えられます。(影を潜めても暇ではありません|水野泰孝 Global Healthcare Clinic (nikkei.com)
 
 コロナ禍となり3回目の新年度を迎えたところですが、1回目は緊急事態宣言発令での緊張感、2回目は第3波がまだ落ち着いていない状況でした。この時期は人の動きが活発になり接触機会も増えるので、当然ながらヒトーヒト感染をする感染症は増えるのは当たり前です。しかし今までと違うのはワクチン接種が進んでいることにより重症化する方の割合が明らかに減っていることだけではなく、1人ひとりの公衆衛生知識が格段に向上していることです。もはや手指衛生や外出時のマスク着用は「文化」として日本国民の間に浸透し、特に外出するときにマスクを着用していないと(他の例でいえば朝起きて歯磨きや顔を洗わないと)変な感じがするくらいまで生活環境に刷り込まれてきたのではないでしょうか。その根付いた「文化」を生かしながらこれからは「ウィズコロナ」としてコロナ前の日常生活に近づけていくべき方向性=出口戦略をより明確にしていくべきであると考えます。但し、重症化しやすいグループに対する医療提供体制の維持は外せない課題です。

 コロナ前の日常生活に近づくためのヒントとして、感染が拡がりやすい環境を3つのカテゴリー(高・中・低リスク)で分類した文献があります。緑のカテゴリーは感染する可能性が低い環境(低リスク)になりますので、該当する環境や行動に対してはある程度は許容できる(=対策を緩めても支障は少ない)ということになります。

Two metres or one: what is the evidence for physical distancing in covid-19? BMJ . 2020 Aug 25;370:m3223. doi: 10.1136/bmj.m3223.

 例えば、人が集まらない環境(低密)で換気良好(屋外など)であればマスクなしでも時間に関係なく低リスクになります。またマスクをしていれば人込み(高密)であっても換気良好で黙ってさえいれば時間に関係なく低リスクになります。これは多くの方が「高リスク」であると考えている通勤電車(ほぼ全員がマスクを適切に着用し会話を控えて適切な換気がなされている場面)に類似しますが、このカテゴリーでいえば短時間であれば低リスク、長時間でも中リスクとなり、高リスクには当たりません(但し換気不良で長時間の場合は高リスクになります)。
 いずれの場面でもリスクをゼロにすることはほぼ不可能ですので「いかにリスクを軽減するか」をポイントとしてこの指針を日常生活の場面でに当てはめてみます。

①屋外で子どもたちが数名で遊ぶ

換気良好・低密が条件であれば、マスクなしで大声で叫んでも高リスクにはなりません。(叫ぶときは距離をとるとなお良いです)これまで大人以上に我慢を強いられてきた子どもたちにはもういい加減にマスクなしで外で遊んでも良いことを公言してあげたいものです。誤解しないでいただきたいのは「感染しない」ということではなく「リスクが低い」ということです。

②卒業式・入学式などの学校行事

換気を促し、全員マスク着用が条件であれば、高密で歌うことがなければ高リスクにはなりません(「高密で歌うという環境」は締め切った教室で長時間歌うということです)。但しマスクをして数分間の校歌などを歌うことはたとえマスクをしていなくても距離を取っていれば高リスクにはなりませんので、マスクをしているのに校歌を歌わないというのは過剰な対策ということになります。また式への参加を保護者1名と規制することも会話をしないことを条件にすれば高リスクには当たらず対策としては過剰であり、貴重な瞬間を共に過ごせないというデメリットが大きくなると考えます。このことは私自身が一保護者として子どもの行事がある度に疑問に思っていることであり、自治体によっても対応が異なっているようです。

③商業施設や航空機搭乗などの際に生じる待ち列

高密になることはありますが、全員マスクを着用、待っている間は黙っていることを条件とすれば長時間とならなければ高リスクにはなりません。すなわち、距離を取って並ぶことの意義は低いことになり、むしろ列が長くなることによる弊害が生じてしまいます。テーマパークなどでは長時間の待ち時間であるにもかかわらず適度な距離はとっていませんし、待つスペースは狭く人たちは密集しており、ずっと会話をしているグループも多い印象です。一方で航空機搭乗の場面ではゲートを通る前までは前後の距離を取るように注意喚起がなされていますが、機内では密閉かつ密集した環境であるにもかかわらず搭乗者の荷物の収納で流れが滞り距離は取れず、さらにグループ同士で会話をしている光景はよくみられます。それならば搭乗前のわずかな瞬間だけ過剰な距離をとることは単なる見かけの対策にすぎず、待合室での長い列を作ることになり、もういい加減にやめていただきたいと毎月の出張の際に感じています。

④隣接した席を空ける

劇場や図書館などではマスクありで会話をしなければ換気不良でない限りは高リスクにはなりません。実際に隣の席を空けずに満席にしている劇場などもあります。常識的に考えてこのような公共施設で大声で騒ぐ人はいないでしょうし、もしそうであれば単なるマナー違反でしょう。しかし飲食店では食事の時にはマスクを外しますので、特に高密の環境では低リスクである条件はありません。従って宴会をする際に「低リスク」とするためには、「少人数である程度の距離を保つことができる換気良好な場所」でということになります。これは政府の指針とほぼ一致しています。

 このように皆さん一人ひとりが日常生活で遭遇する場面をこのカテゴリーに当てはめてどの程度のリスクなのかを考えて行動すれば少なくとも「クラスター」と呼ばれる集団発生が起こることはほぼなくなると考えられます。  
 これまで2年間に次々と変異株が出現して都度「感染力が強いので感染対策を強化する」などといった曖昧な注意喚起により余計な対策・過剰な対策が次々と足されてきたように感じます。例えば「マスクをしているのにアクリル板を立てる」「アクリル板があるのにフェイスシールドをつけている」などです。過剰なくらいでちょうどよいというような方もおられるとは思いますが、適切な対策と安心できる対策は異なるものです。安心できるというのは自身の思い込みであることが多く、識者からみれば過剰なだけでなく不適切であることも少なくはありません。
 
新型コロナ発生当初は感染経路が不明確であったことから、私たちは試行錯誤しながら患者さんの対応に当たってきましたが、ベースにある感染対策、すなわち主たる感染経路である飛沫感染対策としてのサージカルマスク着用、距離を取ったうえでの会話特殊環境でのエアロゾル感染対策=空気感染対策としての診察後の換気等は当初からほぼ変わっていません。

 いつまでも「足し算の対策」を繰り返していたら制限された活動はいつまでも元には戻りません。「できることは積極的に」「抑えることは抑えて」「過剰や不要な対策は減らしていく」ような「引き算の対策」に切り替え、さらには「それはできない」「やめた方が無難」というような「守りの対策」ではなく「どうしたらできるようになるのか」というような「攻めの対策」を実践していくことがコロナ前の日常に戻る近道であり、いわゆる「感染対策の出口戦略」であると考えます。個人的には人込みのない屋外でのマスク着用は不要であると思いますが、やはりそれなりの立場の方が適切な対策としてしっかりと公言しなければいつまでもかわらないでしょうし、科学的に正しいと思い起こした行動でも周囲の同調圧力が根付いている限りは前には進まないでしょう。改めて「引き算の対策と攻めの対策」が推進されることを望みます。

#日経COMEMO #NIKKEI


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