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男性部下から女性の昇格にもやもやする、と相談されたら、あなたならどう答える?

平素より大変お世話になっております。メタバースクリエイターズ若宮です。

今日は、企業内のキャリアにおけるジェンダーのお悩みについて書きたいと思います。


男性部下からの相談にどう答えるか?

先日Voicyで、こんな相談をいただきました。

先日若手男性部下から、実力の上回る男性候補を差し置いて女性が早期に昇格に推される状況が納得行かず、自分がその立場になったら耐えられないと言われました。私からは会社が強くなるためのダイバーシティで、社会に偏りがある中機会平等では是正が進まないので結果平等が必要、と説明したものの、本人に非がないマクロ課題の解決の為に君の機会が制限されることを理解してくれと言う話は彼に全く響きません。若宮さんなら彼にどんな言葉をかけますか?

ダイバーシティに関していつも感じるのですが、総論としては賛成(というか反対ではない)である方が多くとも、各論としていざ自分のこととなると辛い、変えられたら困る、ということが結構あります。

変化することということは一方で既得権益を失う部分もあるからです。「既得権益」とはいっても別に本人がなにかズルをして得たわけでもないのに、それを後から取り上げられるとしたら納得いかない、と思うことはあるでしょう。

こうしたコンフリクトもあり、なかなかダイバーシティのことが進んでいかない部分もあります。


ジェンダー平等の必要性については、理屈としては説明もできる。しかし、眼の前の男性の部下から「自分が後回しにされるのは納得できない」と相談を受けた時、どう答えるべきか?って結構難しいですよね。

組織の全体最適を考えると、個人の我慢が必要な場面もあるでしょう。教皇に「会社の方針だから従え、いやなら辞めろ」ということもできるかもしれませんが、そうした有無を言わさぬ押し付けは全体主義的になり、かえって多様性を殺してしまいかねません。だからといって全員の意見を取り入れていては(必ず変化への反対はあるので)いつまで経っても変わっていけません。


僕が質問から受けた印象では、この男性社員もジェンダー平等を否定しているわけではないと感じます。少なくとも頭では理解はしている、もしくは理解しようとしている。でも、自分の立場や生活を考えると納得できない。そういうジレンマに陥っているからこそ「相談」しているのではないでしょうか。


前提)彼の成長のためのアドバイスを心がける

葛藤を吐露し相談してきた彼にどのように答えたらいいでしょうか?そもそも頭ではわかってはいる感じがするので、そこにさらに正論や理論で説得しようとしても腹落ちは難しいでしょう。また、あなたの考えは間違っている、とか時代遅れだ、と彼を否定しても悩んでいる彼を追い込むことにしかなりません。


なかなか回答が難しい相談ですが、まず、アドバイスのスタンスとして、「ジェンダーバランス」についての意見を答えるのではなく、眼の前で悩んでいる彼に対し、あくまでも彼の成長を後押しする視点でアドバイスをすることが最も大切だと思います。

そう、この相談の目的は、本質的にはジェンダーの議論ではないのです。そうではなくてキャリアの相談として、部下個人の成長をやっぱり一番に考えるべきだとおもいます。

その上で僕がもし彼にアドバイスするなら、ポイントとして3つあるかなと思います。


1)「実力」の評価は時代や会社の方針で変化する

1つ目のポイントは「実力主義」についてです。

相談の中に「実力の上回る男性候補を差し置いて」という内容があります。(彼本人がこの通りに発言したかはわかりませんが)これはジェンダーギャップについて話す時に最も多い男性からの反論のうちの一つです。

「そもそも現状の偏りは実力主義の結果であり自然」だとか「女性に下駄を履かせたら不公平ではないか」というような感じですね。

「実力主義」や「公平」についていうなら、まずその基準を揃えることが必要です。なので、まずこの基準について話すかなと思います。そして、そもそも「実力」の捉え方が変わってきているので、評価基準自体をアップデートしていきましょう、というアドバイスをするかなと思います。


どういうことかというと、例えば、所属する会社がある時、海外進出やグローバルな事業展開を戦略的方針として決定したとします。

すると当然、求められる人材が変わってきます。海外進出をこれからやっていくぞ、となればグローバルな交渉スキルや事業理解が必要ですから、外国語が堪能な外国人や帰国子女の昇格が増えることが考えられます。


DX(デジタルトランスフォーメーション)においても同じようなことがあるでしょう。古参社員や職人など長くアナログな技術を磨いてきたベテランが評価されてきた企業でも、DXが戦略上重要になればデジタルスキルを持つ若手が評価され、一方でアナログの職人技術を持つベテランが評価されにくくなるかもしれません。


2.機会を得るためにスキルを磨き直そう

DXへの方針転換があった時、もしかしたらベテラン職人は

実力の上回るベテラン職人を差し置いてちょっとITができる若造が早期に昇格に推される状況が納得行かず、自分がその立場になったら耐えられない

と、不満を言うかもしれません。

しかし、会社や社会は時代と共に変わっていくもの。

であれば、時代の変化に合わせて、自分のスキルや実力をどう棚卸しし、どう活かしつつ更新していくかが重要です。

先程の例のように、会社がグローバル展開を始めると、(それまで国内でどれだけ営業成績が良くても)英語が話せないなら評価が落ちてしまうかもしれません。しかし、評価基準の変化に不満をいってもそれを止めることはできないので、そこで足踏みをしているよりは頭を切り替え、新しい時代に合わせスキルアップしていく方が、彼のキャリアにとってプラスなはずです。

最近は「リスキリング」という言葉をよく耳にしますが、それってまさにそういうことですよね。時代の要請や会社の方針が変わる中で、常に自分のスキルを見直し、磨いていくこと。


いやいや英語やDXのスキルとはちがうやろがい。男性というだけで不利になるんやで?頑張れば身に着けられるスキルとちがって性別は変えられないんやから不公平や!差別や!

そうおっしゃる方もいるかもしれません。


しかしここにもちょっと論点のすり替えがあって、実は「男性だからダメ」ということではないと僕は思ってます。そうではなく昇格の評価における本質的な変化は、SDGsの時代においては「ダイバーシティ」の観点をもって考え、マネジメントできるスキルが重要、ということです。その観点をもてず「自分が割りを食っている」としか思えないのだとしたら、昇格できない理由はダイバーシティ視点が不足しているからではないでしょうか。

それでももし男性が一人も昇格できない、というのだとしたら不公平だ!差別だ!といってもいいかもしれません。しかし女性管理職比率30%が実現されたとて、70%も男性枠があるんですよ?ダイバーシティ観点磨いていけばきっと君なら大丈夫!がんばろ!

というかですね、なんなら「男性というだけで不利になるんやで?頑張れば身に着けられるスキルとちがって性別は変えられないんやから不公平や!差別や!」ともし彼が思ったとしたら、そうです、それが今まで女性が置かれてきた不公平な環境なのです。女性はまだ30%どころかまだ2割もないんですよ?「自分がその立場になったら耐えられない」と思いません?


3)人材のフェーズごとに視座をあげよう

そしてさらにいえば、もし彼がマネージャーへの昇格(マネージャーが「上」という価値観も変わってくるとおもっていますが)を考えるなら、時代の変化を俯瞰できることはマネジメントとして最も大事なスキルです。

僕は人材にはフェーズがあると思っていて、人材フェーズの変化を、芸事の「守破離」に例えてよく話します。


初めのフェーズは「守」のフェーズです。新入社員やまだ経験の浅いジュニアのうちは、会社のマニュアルや指示に従って業務を進めます。この段階での評価は「プロセス」の評価。プレイヤーとして課された業務をしっかりすれば評価されます。

しかし、昇進やキャリアの進行とともに、「破」のフェーズへと移行します。「破」の段階では教えられたやり方通りやる必要はありません。このフェーズの評価は「成果」です。結果を出すために、それまでのやり方に囚われず、自分なりに工夫してあたらしい方法に変える必要もあります。

そしてさらに進むと「離」のフェーズに入ります。この段階では、会社から具体的なやり方を指示されないのはもちろん、目標すら与えられるものではありません。自社の置かれた環境とこれからを考え、自ら目標指標を設定できることが求められます。

これまでのあり方や評価指標に囚われた「実力」を主張するだけではなく、時代の変化に合わせて評価基準自体を見直し設定していけるスキルこそがマネジメントとしての「実力」です。もし昇格を目指すなら、既存の評価軸での誰かからの評価だけでなく、評価指標自体を見直せるように俯瞰スキルを磨いていくとよいと思う!もし僕ならそうアドバイスする気がします。



とはいっても、男性社員にこうしたアドバイスをする時、僕が同性だからいいやすい、というところもあるかもしれません。同性同士だと感情や背景を共有しやすいですし、共感も得やすいでしょう。

これから時代は変わり、女性のマネージャーももっと増えてきます。女性マネージャーが男性の部下からこうした相談を受けるケースも増えてくるでしょうが、同じようにアドバイスしても同性である女性を優遇したり擁護したりしているように取られて、素直に受け取ってもらえないかもしれません。(そして僕も経験がありますが男性の仕事上の嫉妬はほんと厄介で…苦笑)

しかし本来的に重要なのは、性別を超えて、どのようにこれからの社会や会社のあり方を見据え、自らのスキルを時には見直しつつ必要なスキルセットを磨いて成長し、それによって会社を、社会をどう変える人材になれるか、ということなはず。そんな風にキャリアの視点を広くもっていけるとよいですよね。

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