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夫婦の家事育児時間から考える「夫婦の信頼とは?」

あいかわらず「夫の家事・育児時間が少ない」ということを言いたがる人がいるものだが、毎度言うように、世の夫婦が夫の独裁家庭で「無理やり妻に家事と育児を押し付けている」というなら問題だけど、本当にそうなの?

むしろ実態は、夫こそ働きバチで、女王バチと子どもバチが食うために外で食べ物持ってこいと仕向けられていた状態だったような気がしてるんですがねえ。

夫婦フルタイムの共稼ぎ夫婦の割合は少なくとも1985年以降40年以上30-35%で変わらない。ということは、パートも含めた拡大専業主婦世帯が65%くらいあったのだが、世の夫で小遣い制をしかれている世帯は62%といわれている。それって専業主婦世帯のほとんどの夫が小遣い制ということも言えるのではないかとも思う。

とはいえ小遣い制も否定しない。夫婦が決めたことならいいじゃないと思う。しかも、調査しているけど、月3万円程度の小遣いしかない中でやりくりしている夫は結構幸せそうなのである。

同様に、「夫は仕事、妻は家庭」という夫婦役割分担を親の仇みたいに悪扱いする識者がいるんだが、大きなお世話だと思うよ。小遣い制同様、別に夫婦が合意した決めたことなら他人がとやかく口出しするんじゃねえよ、しゃらくせえ、と思うのでございます。

せっかく総務省の社会生活基本調査が出たので最新のデータを分析した記事をヤフーに公開しました。家事・育児という部分だけに目をとらわれずに、仕事も含めた3点の夫婦分担状況を冷静にみれば、なんだかんだ夫婦としてうまくチーム運営しているんじゃないかと思う。「あなたはFWで点取って。私はGKで守るから」という夫婦役割分担は決して否定されるものではない。何度も言うが、外で働こうが働くまいがすべての夫婦は共働きなのだから。

https://news.yahoo.co.jp/byline/arakawakazuhisa/20220901-00312993


とはいえ、世の中にはいろんな人がいて、もはやこじつけと言いたくなるようなことを言う人間もいる。その最たるのが男女平等を極端に唱えるがあまり、勢いあまってそれを少子化問題の解決と結びつけようとする輩である。

「女性の就業率があがれば出生が増える」とか「政府の家族関係支出が増えれば出生が増える」とか、そもそも因果にもならないことを因果であるかのように唱える言説とか、そもそも相関ですらないことを言い出すから始末に負えない。

それらが嘘であることは既に過去記事で書いた通りだ。

勘違いしないでほしいのは、だからって「女性の就業率を下げれば出生率はあがる」とか「家族関係の政府支出を下げれば出生率があがる」とは一言も言っていない。「〇〇すれば出生率があがる」などと短絡的に因果に結び付ける言説は大抵間違いであると言っている。そんな単純なものではない。

しかし、遂に「夫の家事育児時間が増えれば出生が増える」とまで言い出すのまで出てきた。しかもそれをNHKが伝えているという…。

国際比較データによると、男性の家事・育児参加が進んでいる国ほど出生率が高い傾向があります。女性だけに子育て負担が集中してしまうと、女性が子どもを持つことに対して前向きになれず、夫婦としても子どもを持たなくなるためだと考えられています。

https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/429819.html

そうですか。そんなデータがあるのであれば、せめて出典くらい明らかにすべきじゃないの?とも思うし、NHKも記事にするんなら出典名くらい聞くべきじゃないの?と思うわけです。

ヤフーの記事では夫が有業者のデータしか書かなかったけど、夫無業も含む夫婦の就業形態別の仕事家事育児3点の夫婦差分のデータをみてほしい。「夫が外、妻が家」が悪だというんなら、「妻が外、夫が家」なら夫の家事育児時間は増えるんですかね?

ご覧の通り、夫が無業だった場合でもたいして夫の家事育児時間が妻より圧倒的に多いなんてことはなく、むしろ仕事をしていない分「仕事・家事・育児」の合計時間においては妻より夫が何もしてない状態となる。ちなみに、無業の夫が妻より多いのは「テレビ視聴時間」である。

大部分の妻なら「そんな暇こいてるんなら仕事しろよ」と言いたくなるのではないだろうか。

要するに、家事・育児部分に関してたいして夫は戦力にはならないのである。せいぜい夫の「やってる達成感」を満足させられるくらいで、そんなものに長時間割かれるくらいならその分残業や副業してくれた方がマシ。

大事なのは、3点合計で夫婦の差分が一番少ないのが「夫有業・妻無業」の専業主婦形態であるということだ。皆さん、上手にチーム運営しているわけですよ。当然細かい不平・不満はあっても。

中には、「夫婦合意とかいうけどちゃんと話し合って決められる夫婦だけじゃない」とかいう意見がくるのだが、ちゃんと話し合えない夫婦っていう方が問題なので先にそっちを解決した方がいいんじゃないですか?そもそも3組に1組が離婚するのだから、別に生涯添い遂げる必要もないでしょう。


また、個々において、バリキャリ志向だろうが、イクメン志向だろうが勝手にすればよいのでそれもどうでもいい。「自分はこうしたい」ということと「夫婦としてこうしていこう」ということとは相容れないことではないはず。

言いたいのは、夫と妻のそれぞれの家事と育児時間が同じ時間になることが重要な目的なのではなく、夫婦として両親として、二人の48時間をどう振り分けていくかを考えることの方が大切なんじゃないのかという点。その上で、お互い同じ時間がいいと合意する夫婦はやればいいけど、「こっちは私の得意だから任せて。そっちはあなたに任せる」というやり方だっていい。どういう考えであろうと構わないけど、自分の考えが正しいと他人の夫婦に押し付けないでほしいってだけです。

ちなみに、「任せる」ということは信頼がなければできないこと。任せた以上期待通りの成果にならないこともあるが、それでも信頼するということはその不確実性も含めて信じるということです。仕事も夫婦も信頼があってこそのものであり、「やらせるけど失敗なくやれよ」と圧をかけあったり、「なんで失敗するんだよ、使えねえな」と罵倒しあう関係なら、そんな関係やめた方がいい。


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