DXの目的は?ー生産性向上はDXの目的にならない
こんにちは。グローバルでDXの調査・支援をしている柿崎です。
今回は「DXの目的」について書きます。
念のためですが、全ての企業にDXが必要とは言いません。DXより既存業務のIT化のほうが適切な企業も存在します(以下の私のnoteをご確認ください)。
今回はあくまでDXが必要な企業の方々に向けて書きますので、最初にこの前提をご理解ください。
私が企業・行政組織のDXのリーダー(CDO:Chief Digital Officer/ Chief Data Officer)が集まるグローバルなコミュニティ「CDO Club」に所属し、海外と日本のイベント「CDO Summit」に参加していることは何度か書きました。
1年前のnoteで「海外の日本のDXのリーダーの違い」をテーマに書きました。
今回書く「DXの目的」は、CDO Summitに参加して気づいたもう一つの海外と日本のDXに関する違いになります。
Amazon Goに対する海外と日本の認識の違いを例に説明します。
まずAmazon Goをご存知ない方は、以下の動画をご確認ください。
この動画はAmazon Goがサンフランシスコでオープンした2018年10月、現地のメディアが取り上げたのものです。
動画内で「このお店のコンセプトは、カメラとセンサーがあなたの購買行動の全てを追跡していること」と言っています。このとき、動画内で天井にある無数のカメラを確認できます。
このAmazon Goですが、日本では「無人店」、「無人レジ」、「人手不足」、「生産性向上」というキーワードを用いて紹介される記事をよく見ます。例として2つの記事を掲載しておきますので、タイトルだけでもご確認ください。
2018年12月、私は実際にサンフランシスコのAmazon Goに行ってみました。
実際に行ってみて分かったことがありました。
※2018年当時ですので、現在は状況が異なる可能性があります。
まず、そもそも無人ではありませんでした。店員がいたのです。
店員が接客までしていました。
そして、24時間営業ではありませんでした。しかも、週末はお休みです。
実際にAmazon Goに行ってみると、確かに「レジ無し」でしたが、「無人店」ではありませんでした。3人以上の店員で平日7:00-21:00に営業していました。日本のコンビニエンスストアは1~2人の店員で365日24時間営業しています。日本のコンビニエンスストアのほうが、圧倒的に生産性が高いのではないでしょうか?
Amazon Goで注目すべき点は「このお店のコンセプトは、カメラとセンサーがあなたの購買行動の全てを追跡していること」です。
アマゾンが何を目的にカメラとセンサーで店内の行動データを取得しているのでしょうか?
この目的含めてデジタル企業の戦略については次回以降詳しく書きますが、海外のDXのリーダーはデジタル企業の戦略を正しく認識し、自社のDXの目的を設定しています。
DXとは「アナログ企業がデジタル企業に生まれ変わること」です。
DXの目的を「生産性向上」にする日本企業が散見されます。これでは既存業務のIT化と変わりませんし、アマゾンのようなデジタル企業が戦っている土俵を見誤り、知らないうちにデジタル企業に負けてしまう危険性があります。
今回は、デジタル企業が「生産性向上」という土俵で戦っていないことを認識していただき、自社の「DXの目的」を見つめ直すきっかけにしていただければと思います。