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大学生アスリート海外大進学は「自己肯定感」より「人的支援体制」


日本人高校生トップアスリートのアメリカ大進学が急増中

2024年2月、高校野球の佐々木麟太郎内野手(岩手・花巻東高)がスタンフォード大学への進学を決めた。学費&奨学金5000万円という金額込みで話題だ。

このような、日本人高校生トップアスリートのアメリカ大進学は、近年急増している。このグラフはNCAAディビジョン1(D1)におけるアジア出身の留学生アスリート(ISA)の推移。

「米国大学に所属する適応期における日本人留学生アスリートの成果に影響を与える先行要因への認識-NCAA D1に所属する学生を対象とした質的研究-」(スポーツ産業学研究2022年掲載)

最上位カテゴリのD1は大学間の競争が激しく、日本の箱根駅伝のようなチーム1名のような厳しい制限もないので、留学生アスリート比率は男子テニス63%、サッカー37%などかなり高い。その中で、日本人大学生の急増が目立つ。2020年で122名。佐々木麟太郎さんなどの注目で今後もっと増えるのでは?

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6/23追記;現地のD1留学生関係者の話を聞くと、「高1から英語で競技実績更新、米国D1大学に連絡」くらいでチャンスが開かれるようで、実際に中国・韓国などの家庭ではそのつもりで高1から活動しているらしい。日本人にはまず情報から足りない。そういうルートが存在すること自体を知らない。

実施の進学者の競技実績は超トップというわけでもなく、雑なイメージだが、「慶應高校のスポーツ重視での推薦」レベルの高校生で十分いけるのでは?という印象も受ける。慶應は高校大学で結構なお金が必要なわけで、D1の奨学金とれると経済的メリットも大きい。

今年の事例

スタンフォード進学の日本人高校生アスリートには、埼玉・栄東高校の長岡豪さんも進学。彼は小学校までは海外で英語慣れしている模様。なお栄東高は東大13名医学部108名(学年400名)、中学受験で志願者数1万人超の「すべり止めの星」といわれてるという進学校。

長岡さんのタイムは200m平泳ぎ2分15秒など(日本記録は2分6秒、高校記録7秒)、インターハイで予選落ちするレベルで、世界トップレベルというわけではない。たぶん学業成績や志望理由などなどの総合学力が高い。(奨学金は不明)。競泳では平泳ぎ2種目の中学記録ホルダー岡留大和さんが千葉御三家といわれる進学校、千葉・東邦高からUCバークレーへ進学。この二人は学業ポイントが高そう。

陸上では、浜松市立高の澤田結弥さんがルイジアナ州立大へ。U20世界選手権1500m6位で注目され、スカウトされての進学。州立大だが、州外生の学費は高く、1年$28,631=430万円。日本の私立文系の入学金込4年総額レベルだ。さらにNCAAはある程度、寮費ほか生活支援金の支給も認めてると思う。 仮に100%奨学金だと2000万円レベルの支援では? 佐々木麟太郎の4割だが、それでもかなりだ

男子の箱根駅伝では、トップ選手が月額30万円レベルの支援だそうで(なお青学のようなブランド大はこういう支援はしない)、学費+年360万としても、その総額よりも大きい支援が受けられることになる。参照↓↓↓

アメリカ進学のおカネ問題

アメリカの名門大学への進学は、教育費に一人1億円レベルを投資できるお金持ちが多い(欧米は名門中高では年学費700万円など普通で、入試も富裕層に有利=富裕層を入れるメリットが大学にとって大きいし)

こうした層からがっぽりと取る学費の一部が、世界の超トップ才能への手厚い奨学金に回る。スタンフォードの場合、年間1兆円を軽く超える収入があり、6割は大学病院だが、助成金+投資利益が25%=3000億円とか、授業料は4%にすぎず、資金力が大きい:

この資金で、世界トップレベルの才能を集める。2020東京五輪では出身者の金メダル10個(フランス・ドイツ・イタリア・オランダと同数)、リオ五輪では11人が16個、日本の12個より多い。国レベルだ。

日本の高校生アスリートは世界トップレベルも多い。多くの日本人家庭が気にするのはお金だ。競技成績+ある程度の学業成績、の組み合わせなどで、フル奨学金を得て、進学するケースは、これから増えるのではないだろうか。

ボトルネックになっているのは、情報、人的なネットワークor支援体制、かなと思う。奨学金など支援システムは豊富だが、

たぶんアクセスできていない状態にある。

進学先で必要なスキルとは?

以上、前提情報を整理した。本題はここからだ。

先に紹介した日経記事より引用:

筑波大の松尾博一助教は、NCAAに留学している日本人学生アスリートにインタビューして、学業や競技などに影響を与える要因を調べている。スムーズな適応ができている学生は、やはり信頼関係のあるチームメート、コーチ、教員やティーチングアシスタント、大学のアスレチックデパートメント(スポーツ局)の職員らの手助けを得られている。「学業や人間関係等にかかわらず、わからないことは自分だけで抱え込まずに、すぐに解決策を知っている周囲の人に助けを求める、また助けを求められる関係性を築いていくことが大切」と話す。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODH1996Z0Z10C24A2000000/

その論文が、「米国大学に所属する適応期における日本人留学生アスリートの成果に影響を与える先行要因への認識-NCAA D1に所属する学生を対象とした質的研究-」(スポーツ産業学研究2022年掲載)

わかりやすい論文で(※読み方には慣れは必要ですが)、全文読める。NCAAディビジョン1のエリート日本人大学生アスリート12名へのインタビューを「半構造化」の手法で整理している。

進学先でうまくやっていくために、個人的資質として重要なのは

学業成績: 英語能力、ライフスキル(ストレスやタイムマネジメント等)
競技成績: ライフスキル、栄養管理、コンディショニング

p470

無関係なのは  

自己効力感、冒険心、旅行経験

となっている。「無関係」とされるのは、海外の先行研究で理論的にあり得る要素とされているものだ。たしかに、「自分はできる!という自信にあふれ、冒険心があり、旅行経験も豊富なら、海外進学先でもうまくやっていけそうなものだ。だが、現実そこは問題ではない。

自信のようなふわふわしたものよりも、たしかなスキル、たとえば「この場面では具体的にこうする」という具体的実践的な行動のメソッドの方が、個人にとって重要ということだ。そして自分だけでがんばろうとしない、相談などできる信頼できる人のネットワークが重要。

全体の満足度に影響を与えるのが、「大学選択に関する支援」であるというのも注目。アメリカという国、NCAAの仕組み、その大学、など十分な情報を得てから進学すれば、全体の満足度が上がる

この点で、佐々木麟太郎さんも、陸上の澤田結弥さんも、現地で十分に体験こみで理解したうえで、進学先を決めているようで、よくわかっている、と思う。日本の高校スポーツ指導者が、総合的にレベルを上げているということだと思った。

このような、合格だけでなく奨学金情報まで含めての進学アドバイスは、できる人が限られている。ただ国際大会でトップレベルの成績を出す場合には、向こうのスカウトから情報提供される場合もあるだろう(澤田さんのケース)。このとき、指導者+本人が、オープンな姿勢で、ある程度の英語力で、コミュニケーションできる必要もありそうだ。

この壁を突破すれば、潤沢な資金を集めた設備、コーチ陣など、スポーツ大国アメリカの各種リソースを享受できる。トップ高校生の海外チャレンジは今後増えると思う。

なおスタンフォードの二人は、スポーツ科学の専門家、山田知生さんがサポートされるようだ。安心!

ベストセラー『スタンフォード式 疲れない体』などの著者

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