見出し画像

社内副業(兼務)運用の試行錯誤

昨今、社内で複数の仕事を同時に経験する「社内副業(兼務)制度」を導入する企業が増えている。

勤務時間の2割を他部署の業務に割り当てることが可能で、社内サイトで他部署の募集を見て応募できる。

上記記事から一部抜粋

ぼくの所属するサイボウズでも現在、全社で約3割の人が兼務している。

兼務は、うまく活用できれば、リソース確保の機会が増えたり、チーム間の知識・情報の共有がスムーズになったり、メンバーにモチベーション高く働いてもらったり、とたくさんのメリットがある。

参考記事:3年間、3部署を兼務して分かったこと

ただ、こうした兼務の活用が進んでくることによって、社内では(元々想定されていたものではあったが)幾つかの問題意識が浮上しており、まさにその解決に向けて動き始めている途中である。

というわけで、今回は、兼務(社内副業)についての、社内における試行錯誤を共有したい。

問題の所在

兼務について、改めて社内の問題を整理していこうという話になったのは、人材マネジャーから兼務者のマネジメントについて相談が寄せられたり、個別にメンバーからも兼務に関する困りごとを耳にするようになったりと、社内で兼務に関する問題意識が顕在化してきたからである。

実際、ためしに社内のグループウェア上で「兼務」と検索してみると、兼務に対するポジティブな声も沢山拾うことができるが、それと同じくらいの割合で、兼務者特有の悩みの声も出てくる。

そこで個別のヒアリングもしつつ、兼務に関する問題意識を整理してみたところ、ざっくり以下のようなものが挙げられた。

・生産性
 -スイッチングコストがかかる
 -兼務元・先のどちらも中途半端な成果になることがある
・役割分担
 -兼務者が業務過多になりやすい
 -兼務メンバーの多いチームはリソースが不足しやすい
 -兼務者に仕事をふりづらい
 -兼務先との業務の優先順位付けがむずかしい
・コミュニケーション
 -同期コミュニケーションがしづらくなる
・人材育成
 -場合によっては成長スピードが鈍化することがある
・評価
 -兼務先の評価者との連携が不十分なことがある

そして、さらに深ぼっていくと、以下のような原因が見えてきた。

①兼務の社内ルールが周知され切っていない
②兼務先での業務の状態把握がむずかしい
③兼務には人やチームによって向き不向きがある 

①については、改めて、社内への周知を進めていくとして、②と③は対策を検討していくことになった。

最適解を求めて

まず、②兼務先での業務の状態把握がむずかしい、について。

サイボウズでは(評価の都合上)本部をまたいで兼務する際には、主の所属と兼務先について、それぞれコミットする割合を事前に決めている(本部内の兼務については、絶対とはしていないが、人やチームによっては割合を数値化している)が、その後の実際の勤務実態(例:部署Aで〇時間、部署Bで〇時間)まで細かく管理しているわけではない。

もちろん、サイボウズの場合、プライバシーとインサイダーを除く、ほぼすべての業務コミュニケーションがオープンになっているため、比較的、他のチームで兼務者がどんなことをやっているかを周囲が知ることのできるチャンスは多い。分報や日報などで、高頻度で自身の状態をつぶやいている人も多いため、業務の繁閑を想像しやすいという側面もある。

また、③の話にもつながってくるが、基本的には、兼務先との業務調整も含めて、セルフマネジメントができることを前提に兼務している、という考え方もある。

とはいえ、人事から何かサポートし、デメリットを補完することで、兼務によるメリットを享受できるチーム/人を増やせるかもしれない、ということで幾つかのアイディアを検討することになった。

その中の1つとして、兼務者全員に毎月、アプリケーションで兼務工数の割合を登録してもらってはどうか、というものがあった。

定期的に自身の働き方(含む兼務割合)を振り返るよう、システムでリマインドをして、半強制的にチェックするという方法である。

しかし、(なんとなく想像がつくと思うが)幾つかのチームにヒアリングをしてみたところ、このやり方にはネガティブな反応をもらった。

特に問題なく兼務の割合を調整できている人にも一律で登録のコストがかかるうえ、ヒアリングを進めていくと、「兼務」と一口に言っても、本部をまたぐもの、部をまたぐもの、チームをまたぐもの、あるいは、組織図上に載っていない、さらに小さなプロジェクトベースの兼務など、状況を把握したい兼務先というのが、実はさまざまであることが分かってきたからである。

そこで、逆にどんなしくみがあると助かるか、ということをヒアリングしていくと、実は幾つかのチームではすでにその対策のためのアプリを自分たちでつくり、運用をしているということが分かってきた。

たとえば、システムコンサルティング本部のあるチームでは、業務の特性もあり、毎日、どんな業務に何時間使っているのか、業務マスタを作った上でアプリケーションに工数を登録してもらっていた(そして、ボタン1つで、業務負荷の状況が把握できるようになっていた)。

また、営業本部のあるチームでは、もう少し簡易的な方法ではあるが、「忙し度チェックアプリ」というアプリで、「青信号:食べれます」「黄信号:イレギュラー対応なら食べれます」「赤信号:お腹いっぱいです」など、いまの業務負荷のステータスと補足コメントを登録してもらい、毎週、チームでチェックを行っていた。

そこで一旦は、そうした各チームごとのアプリケーションのノウハウを社内の制度アプリに集約していくことで、社内で同様の困りごとが起きている場合に、援用しやすいようにしていくことになった(サイボウズの場合、kintoneというノーコード/ローコードのグループウェアを使っているため、他のチームが作ったアプリの「ガワ」だけをそのままコピーして、自分たちのチーム用にカスタマイズして作り直すことができる)。

そして最後の、③人やチームによって向き不向きがある、という部分については、実際の兼務問題に関する社内事例も見ながら、「特定の専門性が確立されていない人」「業務上のつながりが浅いチームとの兼務」など、兼務が懸念される人やチームを情報として一旦まとめ、人材マネジメントオンボーディング研修などで共有、意見を聞きながら、社内のノウハウとして溜めていくことになった。

メリットとデメリットを共有する

……と、ここまで兼務にまつわる問題意識と、それを解決するための試行錯誤のプロセスを見てきたが、一方で、兼務というしくみにはさまざまなメリットがある。

「ジョブボード」と呼ばれる社内の求人票には、「兼務OK」というチェック項目があり、「兼務でもいいから力を貸してほしい!」という募集要項がたくさん並んでいるが、たとえば直近でも、ビジネスマーケティング本部の人が人事本部の募集に応募してマッチングし、前々から関わりたいと思っていた人事の仕事に兼務で関われた、というケースもあった。

本人にとっては、一部でも自分がチャレンジしてみたいと思っていた仕事に就けることはモチベーションにつながるし、会社側からしても、組織としてのリソースを柔軟に配分できることにはメリットがある。

他にも、関連性のある職能で兼務することによって、より専門性を高めていくことを狙った育成目的のケースもあり、ぼく自身、幾つかの部署を兼務していることによって、人事として多面的な視点が身についていると実感するとともに、各チームの情報の橋渡し的な機能を果たせていることを感じる。

参考記事:テレワーク、強制転勤廃止は「知識創造」という日本企業の強みを奪うか?

制度の問題点をつぶしていくことも大事なことだが、デメリットばかりに目がいき過ぎると、ガチガチに管理・禁止する方に向かってしまうため、そもそも、その制度はどのような目的で運用されているのか、チーム/個人のどんな理想を叶えたいのか、ということは常に念頭に置いておく必要がある。

結局、どんな制度にも、メリットとデメリット(懸念)がある。

デメリットだけを見て、一律のルールを作りすぎてしまうと、さまざまな機会が失われてしまう可能性があるし、一方で、メリットだけを見て、問題から目を背けていると、思わぬところでしっぺ返しを受ける。

これからも、できる限り、どちらの情報も分かりやすく共有していくことで、チーム/個人がうまく選択していける環境をつくっていきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?