世界のファンにどう届けるか?好業績の日本のアニメ企業&ビジネスの現在
アニメ・漫画などのエンタメビジネスをアップデートするスタートアップ、株式会社MintoのCEOの水野です。
今回のコラムでは、世界に向けて日本のアニメ作品やコンテンツを提供している企業のうち、決算情報が開示されている上場企業や、プレスリリースなどで情報を発信している企業などの情報を中心にまとめていきたいと思います。ちょうど今月は、Anime Japan 2024に合わせて、Mintoの海外ビジネスパートナーや、僕の海外の友人も続々日本にやって来ていますね〜。
東映アニメ&東宝の決算から見える海外市場
まず、2024年3月1日に『ドラゴンボール』『Dr.スランプ』の作者 鳥山明先生が、お亡くなりになりました。まだまだ、やりたいことは沢山あった..と報じられていますし、本当に残念でなりません。
作品に関わっている方々は、その意思を継ぎ「ドラゴンボール」などのファン向けにコンテンツを引き続き展開していくと思いますし、その遺伝子は多くの漫画家・クリエイターが引き継ぎ、新しい作品を生み出すと思います。
3月22日には、東映アニメーションが、サウジアラビアにドラゴンボールのテーマパーク建設構想を発表しました。ドラゴンボールのテーマパークは世界初で、東京ドーム10個分にあたる広さ約50万平方メートルの施設と発表されています。神龍をモチーフにした70mのジェットコースターなど30以上の施設のイメージや動画も公開されていて、完成されれば世界中から多くのファンが集まると思います(これは、行きたい!) 。テーマパーク建設に必要なコストはサウジアラビア側が負担し、東映アニメーションはIPライセンスをするという座組みのようです。
『ドラゴンボール』シリーズを筆頭に様々な漫画作品をアニメーション化している東映アニメーションは、近年の世界的な日本アニメブームの波に乗って海外市場での業績を伸ばしています。
先期(2022年4月-2023年3月)の決算は、「ドラゴンボール」「ワンピース」「スラムダンク」などの映画作品と版権事業(IPライセンス)などが売上に貢献し、売上高874億円、純利益209億と過去最高の業績でした。その中でも海外売上高比率が既に55%とかなり高い比率になっています。今期の業績予測は、先期の大ヒットの反動もあり、純利益で35%減になると予測されていましたが、ここまでは、その予測を上回る数値で推移していて、引き続き好調を維持しています。
国内映画業界の最大手の東宝もアニメ事業に注力しています。経営戦略上もアニメーションを今後の成長ドライバー(第4の柱)と位置付けており、TOHO animationブランドで数々の漫画原作のアニメーション化を手掛けています。『呪術廻戦』『僕のヒーローアカデミア』『SPY×FAMILY』などこの数年でヒット作品を連発している印象です。今クールだと『葬送のフリーレン』『薬屋のひとりごと』なども話題になりましたね。
2024年2月期のTOHO animation関連の売上(今期第三四半期迄)は、244億円と大幅に増加しており、海外比率も39%となっています。
アニメから派生する事業の可能性
バンダイナムコHDは、2024年2月に発表した第三四半期決算説明会で、グループ会社のバンダイナムコフィルムワークスが手掛けた映画「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」(2024年1月)が、ガンダム映画の中で過去最高のスタートを切ったと発表しており、アジアを含めた海外展開に更に注目が集まっています。また4月からは人気の漫画/アニメ作品の「劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-」の劇場公開も控えています。
さらに、2026年春には、渋谷に2000人規模のコンサート施設を建設すると発表しており、機動戦士ガンダムやラブライブ!などのアニメ関連の音楽イベントなどの公演が行われることが想定されます。
バンダイナムコHDは、もともと様々なアニメIPを玩具やゲーム等でコンテンツ展開する最大手ですが、サンライズなどのブランドを統合したバンダイナムコフィルムワークスが自社アニメIP展開を活発化しており、またその先で、グッズやゲームだけでなく、コンサート施設までの投資広がりは、ダイナミックで興味深い動きです。(インバウンド視点で考えれば、コンサート施設は飲食なども含めて絡めるとさらに立体的な事業になりそうです。こちらの記事もぜひ→インバウンド予測、歌舞伎町のクールジャパン)
ソニーグループは、2021年にクランチロールを買収し、その後、クランチロールは世界中の人に日本のアニメーションを提供するプラットフォームとしてポジションを確立しました。
また、2024年2月には、クランチロール有料会員が1,300万人突破したことを発表しています。ソニーの買収後、年平均23%ペースで売上が成長しており、買収に伴うのれん代が減少する2025年3月期以降は、収益への貢献が期待されています。
クランチロールは、アニメ視聴者数が世界2位のインドの成長性に期待していることを明言していますが(僕もインド出張に行った際に現地の人からのヒアリングで実感はできました)、そのほかにもグローバルへの事業展開を推し進め、アニメと関連する事業を自ら手掛け始めています。音楽事業では、『推しの子』の主題歌であるYOASOBIの『アイドル』のライブ映像配信や、RADWIMPSの北米・欧州での音楽コンサート興行まで手掛けています。
同じくソニーグループのアニプレックスは、アニメと主題歌が共に話題になった『マッシュル』やWebtoon原作からのアニメ化で世界中から期待されていた『俺だけレベルアップな件』などの作品がヒットしています。音楽と映像を共にヒットさせたり、Webtoonなどの新しい原作を活用して海外のファン向けにヒットさせるなど、新しい可能性を広げるのがすごいですね。
上場企業だと、プロダクションIGなどのブランドを持つIGポートも、2024年1月12日に発表した第二四半期決算説明会で、通期利益の上方修正をするなど好調です。こちらの好調の要因もアニメから派生する版権事業で、『SPY×FAMILIY』『進撃の巨人』『魔法使いの嫁』『ハイキュー!!』『天国大魔境』などが寄与しているようです。
いずれにしても、2024年の通期決算発表は、東宝が4月、東映アニメーション、バンダイナムコHD5月などと続きますので、引き続き注視していきたいと思います。
今回は、「世界のファンにどう届けるか?好決算が続く日本のアニメ企業&ビジネスの現在」というテーマで書いてみました。よろしければ、過去記事もお読みください!いいね(ハート)もいただけると嬉しいです。
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