みんな、同じでええんか?ーどないなってねん(中)
師走の夜は、どこにいっても、イルミネーション。街路や施設や名所旧跡や公園に、イルミネーション。30年前までは珍しかったが、現在はどこもかしこもイルミネーション。街や施設の活性化を議論したら、イルミネーションを提案する人が出てきて、そこの都市や街や施設の文脈・背景の違いなどお構いなしに、そこでうまくいっているんやったらええやん!それでいこう!となって
みんな、同じことをする。なんで?
1. 「エビデンス」症候群
どうしてみんな同じことをいうのだろう?同じことをするのだろう?だれかが、どこかが、最初にそれをしようとしたら、そんなんあかんでと反対したり、そんなん許されへんでと認めない。良いものでも、自らの経験や世界観や先入観や固定観念から、受け入れようとしない
エビデンスという言葉が流行っている。
正確に言えばエビデンス・ベースド・マネジメントだが、エビデンスという殺し文句で、やらない理由とする企業、企業経営者が増えた
だれかが、どこかがそれをしていないと、やらない。そもそも、はじめての政策や取り組みや新商品には、エビデンスなどない。そんなものないにもかかわらず
それが売れる証拠を出せ
実績、データを出せと示せ、という。それも、ちゃんとした、有名な会社や大学や研究所の実績やら数字でないと、受け入れられない。無名の「社会文化研究家」池永寛明など胡散臭いとなり、そんなやつの言葉など信用ならんとなる。なぜ、そうするかというと、自分に自信がないから有名に便乗する
2 「便乗」症候群
いくら内容が素晴らしくても良くても、無名の人や企業の提案はなかなか受け入れられない。著名な人や企業、組織でないと、上を説得できない、「ブランド」が必要である。自らの判断で決めない。
有名な企業・組織がそれをやりだしたら、みんな、それをやりだす。その変化のスピードはどの国より速い。あっという間に、みんな、一緒になる。みんなが同じであることに意味があり、そこに安住して、思考停止して、新たな、異なる情報を排除するようになる
リスクマネジメントも
オフィスを席巻して、久しい。阪神・淡路大震災がおこった30年くらい前から、なんでもかんでもリスクマネジメントとなった。これもやらない殺し文句
「エビデンス」「便乗」「リスクマネジメント」が増えて、もともとの「みんな一緒」の体質がより強固となって
みんな、同じことをする
3 風向きが変わりだした
コロナ禍を契機に、オンライン会議が普通になった。
テレワークが普通になった会社もある。正確にいえば、毎日テレワークではなく、出社とテレワークのハイブリッドであり、それが普通になったのはオンライン会議、オンライン講演・講義・ゼミが成立したからである。オンラインショッピングも、オンラインコンサートも、オンラインエンターテインメントも、普通になった。トラブルは時々おこるが、それで大きな問題はなく、普通になった
論点は、テレワークか出社ワークかではなく、テレワークと出社ワークのハイブリッドワークになろうとしていること。仕事の場所が変わろうとしているのだ。仕事の内容によって、いちばんうまくいく、成果が発揮することができる仕事をする時空間を選択したらいい。個人に選択が委ねられようとしているのが、コロナ禍を契機とした仕事法の変化の本質である
4 オンライン診療が進まない
にもかかわらず、オンライン診療・遠隔診療は進まない
精神科オンライン診療は対面診療と遜色ないという。オンライ診療の方がいいケースもあれば、対面診療がいいケースもあるだろう。場合によれば、医師は、人間先生の方が良い診察内容と、ロボット先生が良い診察内容と、場合によればアバター先生の方が良い診察内容もあるだろう。そんな実験はすでに進んでいる
しかしオンライン診療・遠隔診療はなかなか進まない
どないなってんねん?
たしかにタクシーがなかなか捕まらなくなった。人手不足でバスやタクシーのドライバーが集まらないから、バスやタクシーが少なくなった。だから世界では広く進んでいるライドシェアを導入しようというも
お客さまの立ち場からしたら、やってほしいと思う。しかし導入する側は、導入して失敗したくない。失敗したら、いろいろと言われるだろうから面倒くさい。場合によれば頭をさげないといけない。だからしない。「拙速な導入」という霞が関言葉で、決断を先延ばす。それは自分のためにやらない
もうひとつやらない理由がある。既存の事業者を守らないといけない。新しいことに変更したら、既存の事業者の仕事が減る。既存の事業者みんながダメだと反対しているのに、変えたらいろいろと鬱陶しいし、霞が関や永田町や周辺の人に怒られるかもしれないから、面倒くさい。だからしない、新たなことに変えない
5.見ている人が違う
見ている先が違う。見ている先が、事業者であり供給者である。本来見るべき国民や需要家を見ていない
事業者・供給者視点 > 国民・需要家視点
見ている先が違って、新たなこと、変わることに躊躇する
だから、みんな、同じであろうとする。変えたい、変えなければいけないと考えて動く人や企業の邪魔をする。そうした邪魔の積み重ねが、様々な指標の世界ランキングの日本低下につながっている。このままならば、国にとって重要なGDPのランキングがこれから大きく下がってしまう
みんな一緒、みんな同じことをする。企業も、自治体も、同じことをする。創意工夫して、差別化しているというが、そんなの大同小異
同じ器のなかで
ぐるぐる回っているようなもの
6 お客さま視点で、再定義する
みんな同じことをする。
たとえば、飲食ビジネス。ラーメン屋がブームだといえば、同じような店が増える。お寿司屋がブームとなれば、同じような店が増える。日本料理店もがブームとなれば、同じような店が増える。すこしづづ違うが、大同小異。同じ器のなかで、ぐるぐる回っているようなもの。基本はみんな一緒
そんな日本の飲食ビジネスとは違うレストランがある。
コペンハーゲン発の世界NO1と言われるNomaがとっている戦略は、日本の飲食店経営のフレームワークとは大きく違う
世界でいちばん予約の取れないと言われるレストランNomaが、コペンハーゲンの店を閉めて100名もスタッフが昨年末から日本に入り、食材や日本料理を研究して、今年の春に京都に期間限定のNoma京都を開業した
Nomaは短期間の営業だけだったNoma京都の収益ではなく、京都の店のなかでの収益を中心には置いていなかった。Nomaは、期間限定のNoma Kyotoが創り出した料理、その物語をつつみこんだ調味料、和風だしとNoma独自の調味料を組合せた「だしリダクション」をNomaプロジェクトのひとつとして世界に売ることが、Nomaの戦略だった
Nomaはレストランに来ていただく収益を狙うではなく、Nomaのシェフたちの料理とそれを創る物語をレストランの外の人に届けようとしている。お客さまの定義を変え、食ビジネスの定義を変えている
食ビジネスのカタチを変え、収益構造を変える。日本の飲食ビジネスは、みんな同じで、昔のまま。ご来店いただくその時間に、全力投球して、ご満足いただき、お代金をいただく。それは正しい。しかし人手不足で大変、働き方改革で大変、食材費・エネルギーコストが上がって大変、人件費・家賃が上がって大変、それはそう。それを解決しようとしていることは対処療法で、改善に過ぎない。みんな同じ。お客さまが第一だと考えているが、自分たちが見ているには自分たち、供給者論理かもしれない。お客さまを見ているようで、本当のお客さまの心が見えていないかもしれない
お客さま不在
世界から遅れるのは必然