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デジタルニュースの現場に忍び寄る生成AIの威力/ ロイタージャーナリズム研究所『デジタルニュースリポート』2024より

ロイター・ジャーナリズム研究所が毎年発表する「デジタルニュースレポート」の2024年版が公開されました。世界6大陸47市場、9.5万人以上を対象に実施され、デジタルニュース業界の最新動向を包括的に分析するレポートとして毎年注目しているレポートの一つです。国内外のメディアトレンド、そして個人にとってのメディア消費の点からも示唆に富む内容が含まれていて、以下、気になった点を綴っておきたいと思います。

ロイター・ジャーナリズム研究所が毎年発表する「デジタルニュースレポート」の2024年版が公開されました。世界6大陸47市場、9.5万人以上を対象に実施された本レポートは、デジタルニュース業界の最新動向を包括的に分析していて、毎年注目を集めています。国内外のメディアトレンド、個人のメディア消費の観点からも示唆に富む内容が含まれており、以下に気になった点をまとめます。

*一昨年からNHK 放送文化研究所がこの調査 に協力されているとのことで、全160ページあるレポートの中の「第1章Executive Summary and Key Findings」が同研究所により日本語で36ページに渡ってまとめられていて大変ありがたいです。

気にになった5つのポイント

  1. ソーシャルメディアとニュース消費:新たなプラットフォームの台頭

  2. オンラインニュースの有料化:購読率最下位レベルの日本(9%)

  3. ニュース回避:(ただし世界的傾向と異なり日本においては限定的)

  4. ポッドキャストの動向:成長は鈍化するも定着

  5. AIの進化:生成AI検索の足音

【1】ソーシャルメディアとニュース消費:新たなプラットフォームの台頭

「プラットフォームのグレート・リセット」という表現が使われています。ニュースアクセス手段としてのFacebookの継続的な存在感の低下と、YouTube、TikTok、インスタグラムなどの動画プラットフォームの成長がデータで示されています。昨年様々なドラマがあったX(旧Twitter)の存在感が11%とほぼ変わらない点も注目に値します。

【2】オンラインニュースの有料化:購読率最下位レベルの日本(9%)

日本の有料購読率が9%と、英国の8%よりは高いものの、低水準であることが顕著です。背景には、無償の地上波テレビや、Yahoo!ニュース、LINEニュース、スマートニュースなどのプラットフォームを通じて無料コンテンツへのアクセスが安易で豊富に存在することとも関係がありそうです。

今回新しく追加された調査項目では、キャンペーン等を利用して定価より安く料金を支払っている人の比率も示されています。海外では多くの場合ディスカウント価格で購読できますが、国内の定期購読はほとんど割引がない印象です。

質の高い、重要なコンテンツがペイウォールに阻まれて読まれないことは残念です。日本でも、可能であれば欧米のような大幅ディスカウントが適用されることを願っています。

【3】ニュース回避:(ただし世界的傾向と異なり日本においては限定的)

世界の紛争や戦争のニュースが長期化することでニュースから距離を置きたいという傾向が世界的に見られますが、日本では5年前と比べてこの傾向が1%しか増えていません。が、個人的には、もっと高まっている印象を持っています。

特に気候変動報道については、絶望的と感じる報道や映像も多く、海外と比較して認知度が低くなりがちな傾向が見られます。

【4】ポッドキャストの動向:成長は鈍化するも定着

今年のレポートでは、ポッドキャストについて「成長は鈍化するも定着」という表現とともにトーンダウンしている印象です。

ニューヨーク・タイムズの「The Daily」が人気を得てから7年が経過し、The Economist、Financial Times、Bloombergなどの世界的ブランドは音声メディアに益々注力しています。これらのメディアでは、ポッドキャスト以外にもほぼすべての記事が音声で聴くことが可能になっています。

ノルウェーの若年層では、従来のメディア接触が低下する一方、オーディオが突出して成長していることが興味深い点です。

【5】AIの進化:生成AI検索の足音

今回のレポートで大きな注目を集めていたのは「AI」に関するトピックです。行き過ぎたAI利用や偽情報への警戒感はありながらも、翻訳や文章構成などの補助的な利用に関しては前向きな反応が得られています。

ただし、日本での「AIに対する認識」は他国に比べ低い傾向にあります。

The Guardianのエディトリアル・イノベーション責任者が作成した「GPTs」の非公式版は、個別のトピックや質問に対して日本語でも簡単に回答できる点で、大きな進化を感じさせます。

今後、ニュース編集の現場や読者にとっても、生成AIの存在感が高まっていくことが予想されます。

「例えば日本についての分析・洞察を日本語でまとめてください」との問いに対しては以下のような回答を瞬時に生成してくれます。質問する度に微妙に回答が異なっていたり、当然完璧ではないのですが、時間の内時に「ざっと」目を通しておきたいような時にはこうした形でレポートを読み解くことができるなど、今後あらゆる方面でニュース編集の現場、そして読者にとっても生成AIの存在感が高まっていくことと思われます。

今回はレポートの中に言及はなかったものの、今後ニュースを消費する際にも生成AIツールを利用する場面が増えるのではないかと思われます。日本でもソフトバンク社ユーザー対象で1年間のプロプランの無償提供がスタートした「Perplexity.ai PRO」などを利用することで以下のような回答が簡単に得られることになります。生成AI検索結果のそれぞれの出典はこちらのURLから簡単に確認することができます。


以上、気になるポイントを挙げてみました。様々な課題がありながらも、生成AIを補助的に活用しながら一つ一つ課題を解決し改善していくことが今後益々求められることになりそうです。一読者、一視聴者としても生成AIを活用しながらスマートなメディア接触が求められるのではないかと思われます。


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