動機の言語化2 なぜ、今の仕事をしているのか?
先月「動機の言語化」について書きました。自分は、なぜ、今の仕事をしているのか。かつて、多くの仕事を複数同時並行で進めることを望んでいた自分が、ひとつの仕事に集中するようになったのは、どうしてか。文末に、「日常の業務に身を置きながら、深く自分に潜ってみたい。少し時間をかけてやってみようと思いました。(公開できそうな内容だったら、次回、公開したいと思います)」と書いたこともあり、今回、少し、やってみました。
劇的なコミュニケーションの変化
コミュニケーションの歴史は、人間の歴史と密接に結びついています。言葉が生まれ、文字が発明され、印刷技術が普及するにつれ、情報の伝達方法は次第に進化しました。しかし、この20年で私たちのコミュニケーション方法は、過去数千年以上の間に経験した変化よりも劇的な変貌を遂げました。
インターネットメディア黎明期
2000年頃、インターネットはまだ黎明期にありました。
当時、ネットメディアの立ち上げに関わる機会がありました。「これからは、インターネットの時代です。メーカーと顧客が直接対話できる時代、双方向に情報が流通する時代がきます。新しいメディアの形をつくりましょう」と、あちこちで話しました。が、当時は「メディアといえば、テレビか新聞か雑誌でしょ」と言われ、PCモニターはテレビに比べて綺麗に映らない、回線がわるく動画も出せない等々、使わない理由をたくさん言われました。
が、数年でひっくり返りました。
スマートフォン黎明期
2008年、日本でiPhoneが発売されました。
当時、スマートフォン普及をミッションとする会社の創設に関わる機会がありました。「これからは、モバイルインターネットデバイスの時代です。いつでもどこでもインターネットに接続する時代。位置情報の活用が始まり、常に人と繋がる時代がきます。代替競合は、雑誌や文庫本や携帯ゲーム機やテレビです。新しいモバイルコミュニケーションの形をつくりましょう」と、あちこちで話しました。が、当時は「iモードつかえないし、バッテリーももたないし、カメラの画素数も少ないし、ボタンもないし、日本じゃ流行らない」と、使えない理由をたくさん言われました。
が、数年でひっくり返りました。
空間コンピューティング黎明期
2016年、VR/MR技術を医療に活用するベンチャーに関わる機会がありました。「レントゲンの時代は、1枚の2次元の画像を2次元モニターで閲覧しています。CTによって、複数の2次元の画像を2次元モニターで見るようになりました。そして、ワークステーションによってCTデータを3次元化したものを2次元モニターで見ることができるようになりました。その流れをさらに一歩進め、3次元データを、3次元空間で、体感的に閲覧できる世界が到来します」と、あちこちで話しました。大きな可能性を感じてくださる方がいる一方で、イロモノ扱いされることもありました。
そして、2024年、空間コンピューティングの時代が到来しつつあります。下記リンク先の日本内視鏡外科学会総会(2024年12月開催予定)のサイトトップの動画とポスターにて、医療の学会でVR機器がどのように受け止められ始めているのか、ご覧いただけます。
いよいよ、ひっくり返るタイミングが近づいてきているようにも感じています。
コンテナとコンテンツ
思い返してみれば、インターネットメディアもスマートフォンも、情報流通するための器(コンテナ)が変わりました。器が変われば、中身(コンテンツ)が変わります。
巻物というコンテナの時代。鳥獣戯画のように、一枚の長い紙に、複数の時間軸と空間軸が描かれ、それをスクロールさせながら一方向にリニアに閲覧する、という体験が提供されます。文字が描かれた巻物は、それを順番に読んでいく、という体験です。
本の時代。紙が裁断され、束ねることで、ページをめくる本の形のコンテナが生まれました。ページは、巻物のようにスクロールする必要がなく、1ページ目から100ページ目に飛ぶことができますし、そこから50ページ目に戻ることもできます。また、ページをめくるという行為は、見開きという左右のページを同時に見るという体験と、めくった直後にめくられた先のページを断続的に注視するという視線の動きが生まれます。この新しいコンテナに対して、たとえば文字だけの小説は、巻物で文字を読むことと同じような体験で、巻物コンテンツを本コンテナにエミュレートしているといえるかもしれません。一方で、漫画はページの見開きを活用したコマ割りがあり、雑誌等でも見開きを活用したレイアウトが生まれ、本コンテナに最適化されたコンテンツが生まれ、書籍文化が花開きました。
その意味で、電子書籍は、まだそのコンテナに最適化されたコンテンツが生まれきっていないようにも思えます。
そんな中、空間コンピューティングです。空間記録と空間再現という、文字通り次元がひとつ増えたコンテナに対して、最適なコンテンツとはどのようなものか。わくわくしかありません。
命に関わる領域
新しいコンテナが生み出す新たなコンテンツ。人の命に関わる領域で、新しい情報流通、コミュニケーションの形を用いることで、社会的価値を生み出し、時代を前へ前へと進めていく一助になれるかもしれない。
また、家族を持ったことで、子どもに胸をはって言える仕事をしよう、と考えるようになりました。人は病や怪我や老いと無関係ではいられません。命に関わる全ての仕事に敬意と感謝を持ちつつ、その仕事を支援する力になれるかもしれない。それも、自分がこれまで経験してきたものを積み上げていく中で。
動機の言語化をしてみましたが、さらに深堀していけそうに思いました。また、来月、試してみようと思います。