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2024年流行語大賞「ふてほど」にZ世代が全然納得していない3つの理由。

2024年「ユーキャン 新語・流行語大賞」には、ヒットしたTBS金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』の略称「ふてほど」が大賞に選ばれました。

しかし世間の反応は、ピンと来ない結果に。SNSを中心に「聞いたことがない」「しっくり来ない」と声が集まり、本当に「ふてほど」は流行語だったのかと疑問が寄せられています。

また、株式会社RECCOOが運営する『サークルアップ』の調査では、「ふてほど」が流行語となったことに対して「かなり納得できる」「まあ納得できる」と答えたZ世代が14%だったことも明らかに。

なぜ今年の流行語大賞は、Z世代・SNSを利用する層を中心に「納得がいかない」という声が集まる結果となったのか。Z世代マーケターの目線から、3つの理由を考えてみました!

▼2024ユーキャン新語・流行語大賞の候補一覧

流行語大賞の選考プロセスとは

皆さんは、新語・流行語大賞がどのように選ばれるかをご存じでしょうか。ユーキャンの発売元である自由国民社のサイトにはこのように書かれています。

『現代用語の基礎知識』収録の用語をベースに、自由国民社および大賞事務局がノミネート語を選出。選考委員会によってトップテン、年間大賞語が選ばれる。

「「現代用語の基礎知識」選 ユーキャン新語・流行語大賞とは」より

また、選考委員会の一員である辛酸なめ子さんは、文化放送のラジオで選考のプロセスについて下記のように述べています。

その年の新語・流行語大賞が世の中に発表されるのは、ノミネート30語が発表された時だと思うんですが、その前に、現代用語の基礎知識という本がありまして、そちらに掲載されている中から選ばれるというのが基準になります。なので、こちらの編集者の方が選んだ60語ぐらいがあって、そこで選考委員が“他にもこの言葉が流行ってるんじゃない?”というのをちょっと足して、その後、会議をしていく感じです

選考委員は大賞までは決めずに10語までは決めるみたいな感じです。大賞は編集部の方がバランスを考えて、決められるのかなと

新語・流行語大賞ってどう選んでる?選考委員・辛酸なめ子に聞いてみた!」より

・『現代用語の基礎知識』に収録されていることが前提条件

・選考委員会によってトップテン、年間大賞語が決まる

・選考の基準は明示されていない

このようなプロセスと現在のトレンドを踏まえて、2024年の流行語大賞に納得感がなかった理由を考えてみます。

流行語大賞に納得感がなかった、3つの理由

①選定基準が不透明だから

選考プロセスからも分かるように、ユーキャン新語・流行語大賞は国民アンケートなど定量的な調査から選定されているわけではありません。

大学教授やコラムニスト、お笑い芸人、作家などジャンルの異なるプロフェッショナルが集まり会議によって言葉を選出しています。調べた限りでは選考基準は明らかにされておらず、どんな言葉が大賞に選ばれるのか言語化するのは難しいでしょう。

また、特に今年大賞となった「ふてほど」は世間が考える流行語の定義にあまり即していなかったのも、疑問が生まれた理由なのではないかと考えています。

きっと、世間の皆さんが想像する流行語は「多くの人が発した言葉」のはず。

過去の受賞記録を見てみると2013年の「今でしょ!」2017年の「インスタ映え」2020年の「3密」など、よく耳にした言葉が多く受賞しています。

それらと比べると「ふてほど」は、耳にする機会が少ない言葉でした。授賞式に出席した、主演の阿部サダヲさんも「正直、『ふてほど』って一度も言ったことない」と述べていますが、「ふてほど」はネットミームとしてSNSで話題になったわけではありません。

僕は毎日夜は誰かとお酒を飲んでいますが「それはふてほどだよ〜(不適切にもほどがあるよ)」と言っているシーンを見たこともありませんでした。

こういった選定基準の不透明性や、それによる世間からのイメージの乖離が、今回の納得感のなさの1つの理由となっているのではないでしょうか。

②若者のトレンド、Xのトレンド…流行の範囲が狭くなったから

とはいえ、一昔前まではこの選出方法で誰もが納得できる流行語が選出されていました。

ここ数年の流行語に違和感があるのは、そもそも「流行」自体が生まれにくく、それを見つけることも難しくなっているからだと思います。

近年、メディアの幅は大きく広がりました。これまではテレビ番組や雑誌を通じて拡散されていたトレンドが、SNSやインターネットメディアなどさまざまな媒体を通じて広まるようになり、トレンドが生まれる場所も多様化しています。

若者の間ではテレビ番組よりもインターネットが情報収集の中心になっていますし、その中でもコミュニティは分散しているのです。流行語大賞の候補にも挙げられた「界隈」もコミュニティの小規模化を示すワードといえるでしょう。

▼若者のテレビ離れについては下記の記事でも解説しています

このような状況では、生まれる流行の範囲が小規模になります。

人々が触れる媒体・メディアが違うため、X(旧Twitter)であればXのトレンドとなり、若者の間で流行っている言葉は若者の中での流行語に。老若男女を問わず流行り、話題となるものがほとんどなくなってきているのです。

③トレンドの寿命がとても短い時代だから

僕は今の時代、多くの人の記憶に残っている「流行語」はここ数ヶ月で話題になった言葉が多いというのも納得感がなかった理由なのではないかと考えています。

現在はZ世代を中心にトレンドの寿命が短くなっており、2024年はじめに流行ったワードや現象は「今さら?」と思われる可能性が高いからです。

ユーキャン新語・流行語大賞において、ノミネートされるワードは『現代用語の基礎知識』に収録されていることが前提条件となっています。

つまり、「年末にかけて話題となった言葉」はほとんどの場合対象外になるということ。会議の際に選考委員が付け足すことはできるものの、基本的にはこの書籍が発売される前に話題になった言葉が選ばれるといえるでしょう。

しかし現在のトレンドは、話題に上がったと思ったらすぐに消え、さまざまなメディア・媒体で同時多発的に生まれます。書籍販売以前に話題となった言葉はすでに一昔前の「流行語」となっており、しっくり来ないケースがあるのかもしれません。

ちなみに、一昔前に比べてトレンドの規模が非常に小さいうえに、日々猛スピードで入れ替わっているこの状況を、僕は「花火トレンド」という言葉で表現しています。

なぜトレンドの寿命が短くなったのかはこちらの記事で解説していますが、

・SNSは「バズ」を生み出す機能においてはとても優秀なものの、トレンドを継続させる機能は持っていない
・特にZ世代はまわりと一緒ではない「自分だけの世界観」を求めるため、常に新しいものを探している

などが理由として挙げられます。

「世の中全体で大流行」を作るのは、もう難しい!?

疑問の声を集めた2024年の流行語大賞「ふてほど」。

背景を読み解くと、今はメディア・媒体の分散や「花火トレンド」など、そもそもこれまでの「流行・トレンド」が生まれにくくなっている時代だということが分かってきます。

これからもSNSやメディアを通じて、コミュニティが小規模化していくことを考えると、世の中全体で大流行する言葉や文化を作ったり、選んだりするのはもう難しいのでしょう。

こういったトレンドの動向を見守る意味でも来年の流行語大賞に注目していますし、僕もニッチなトレンドが生まれやすい今の状況を活かしたマーケティングを行っていきたいと考えています!

このnoteでも定期的にマーケティングのトレンド解説を行っていきますので

「Z世代に向けたマーケティングの手法を学びたい」
「今後市場の中心となる、Z世代へのアプローチ方法を検討したい」

という方はぜひフォローしてもらえると嬉しいです。スキやコメントもぜひお願いします!

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。他にもこんな記事を書いているので、ご覧いただけたら嬉しいです!

※このnoteは個人の見解です。

今瀧健登について

今瀧健登 / Imataki Kent(X:@k_hanarida)
僕と私と株式会社 代表取締役 
日経COMEMO キーオピニオンリーダー

SNSネイティブ世代(Z世代)への企画・デジタルマーケティングを専門とするZ世代の企画屋。ハッピーな共感をフックに購買行動に繋げる「エモマーケティング」を提唱し、さまざまな企業・行政とタッグを組んでワンストップ・プロモーションを展開する。プロデュースしたアカウントやサービスは多くのZ世代の支持を集めている。「NewsPicks」や「日経クロストレンド」など、個人としても多数のメディアに出演。著書に『エモ消費』『Z世代マーケティング見るだけノート』など。X(旧Twitter):@k_hanarida)

日経COMEMOではZ目線でnoteを綴り、日経クロストレンドでは、「今瀧健登のZ世代マーケティング」を連載中。


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今瀧健登 / Z世代の企画屋
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