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新たな学びの形を社会実装するための現場の声

医療の解放とは

ある全国規模の専門学校グループにて文科省予算での新たな学びについての取り組みに、Holoeyesとして参加する機会をいただきました。2021年から2022年にかけて、各地の学校にて、VR技術を活用した基礎解剖の授業を実施し、その学習効果についての検証を実施しました。何箇所かの学校での実施に立ち会い、学びの現場の空気感を肌で感ずる機会をいただきました。

その成果報告会にて、座談会に参加した際に、Holoeyesの理念である「医療を解放して、命の可能性を広げる」とはどういうことか、という質問を受けました。個人的な想いも交えて、次のようにお伝えしました。

「医療を解放して、命の可能性を広げる」

資本主義社会において、専門性と効率化の名の下、分業という名の分断が推奨されてきました。労働と消費という構造が隅々にまで行き渡りました。

その結果、自分そのものである自身の健康状態に関することまでもが、医療の専門家から受ける、医療サービスの消費、という構造になってしまいました。

私たちは、自分自身の体の構造すら知らず、陥った状態を理解することも難しく、迫られた決断を受け止めることができなくなっています。

私たちは、医療における暗黙知を世界に共有し、少しでも多くの人の命を救うための可能性を広げることを目指しています。

その一歩として、身体の構造を、状態を、誰もが理解しやすい形で共有化できる技術の開発と普及に努めています。

これが、医療の解放と命の可能性を広げると信じています。だからこそ、社会実装ということにこだわって、Holoeyesの事業に参加しています。

解剖の学び

自分の体について学ぶことは、これまで非常に難易度の高い、難しい分野でした。言葉として覚えること、平面の図解にて理解すること、そして頭の中で立体構造を想像すること、それを記憶すること。しかし、それを全く逆転の流れで、立体構造を空間的に認識し、体感と共に記憶できるとしたら。

そこには、新たな教授法が求められます。これまでとは異なる「知の伝達のコミュニケーション方法」が必要となります。これを考えることは、手間暇のかかるものかもしれません。「従来の教え方」とは異なる方法を考え出さなければならないからです。しかし、その教授法が生み出されれば、得られるものはとても大きなものです。

感染症対策下において、遠隔授業の必要性が高まった際にも、同じように、新たな教授法が求められました。同じ年齢の子どもたちを一箇所に集めて、対面しながら知を伝達していく形の授業とは異なるスタイル。非対面かつ、1対1が複数並列にあるかのような、遠隔での複数人への同時コミュニケーション。

新しいコミュニケーションの形の活用により、新しい知の伝達方法が生まれてくるのは当然のことかもしません。そして、そこには新たな産みの苦しみも伴うのでしょう。

コンテナとコンテンツ

以前、コンテナとコンテンツについて書いたことがあります。

新たな器が生まれたとき、その器に最適化された中身が生まれてこそ、ようやく新しい形が成立する、という考えです。

従来と異なる知の伝達方法が芽生えたとき、それが単に新しい道具として既存の学びの形に取り込まれるのではなく、新しい学びの形を模索するきっかけとなることが望まれます。そして、冒頭のプロジェクトでは、そうした受け止め方がなされ、新たな教授法を模索することが正面から議論されていました。

フューチャービルダー

委員長がおっしゃっておられた言葉が印象的でした。

「教育×先端テクノロジー」である。「足す」ではなく「かける」である。「かける」は片方がゼロだと、ゼロにしかならない。先端テクノロジーを導入しても、教育側が新しい試みに対してゼロの姿勢では、ゼロのままで、次はない。

wifiがない、新技術を学ぶ時間がないなど、試みに対して、それが困難であることの理由を探せばいくらでも見つけられる。

しかし、wifiがないのならば、そしてそれが必要ならば、それを求めていくことが必要。時間がないならば、時間を確保できるように、働き方の改善を求める声を上げていくことが必要。現場が声を上げなければ、環境は変わらない。

個人的に、この言葉にとても感動しました。未来は、ボトムアップでつくられる。与えられるものを消費するのではなく、自ら求めることで、世界を変えていくことができる。ここでもまた、フューチャービルダーとしての活動が重要なのだと思いました。


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