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【2024年振り返り】メタバースの成長加速の5つのキーワードと「メタバースが世界を食う」未来

お疲れ様です。メタバースクリエイターズ若宮です。

2024年も終わりですね。

大みそかにしてまだ仕事は収まっていませんが汗、2024年を振り返ると改めてメタバースのフェーズが一段変わり、成長本格化のギアが入った一年だったと言えると思います。


メタバースの成長本格化

メタバースクリエイターズは先日、スタートアップの登竜門的なピッチコンテスト『IVS Launchpad Seed』にファイナリストとして登壇し、3位に入賞しました。


そのプレゼンテーションの中でもお話ししたのですが、メタバースはいよいよ成長が本格化しています。

「メタバース」については、2021年にFacebook社が「Meta」へと社名変更したのをきっかけにバズワード化し、一度バブルのような盛り上がりをしたために、「オワコン」だと思っている方もいるでしょう。

これはいわゆる「ガートナーのハイプ・サイクル」というやつで、新しい技術はまず「過度な期待」で盛り上がり、その後「幻滅期」を迎え、そこから実質的な成長フェーズに移行していくのですが、メタバースもまさにこのプロセスにあります。

メタバースクリエーターズが創業した昨年の上期はまさに「幻滅期」の底という感じでしたが、それを抜けてフェーズが一つ変わり、実質的な成長がいよいよ始まった2024年でした。今回はその変化をメタバースの成長のカギとなる5つのキーワードで解説したいと思います。


①マルチデバイス

1つ目のキーワードは「マルチデバイス」です。

メタバースの成長を正しく捉えるにはまずこの観点が必要です。というのも、多くの人がメタバースをVRとイコールで考えがちで、「VR機器はまだ普及しないのでは?」というのがメタバース懐疑論としてよく言われることだからです。

(VR機器の普及も進んでおり米国では今や10代の3割がVRヘッドセットを持っているとのデータがありますが)、「メタバース」にとってVRヘッドセットは必須ではありません

メタバースの本質は「アバターというアイデンティティ」で「3D空間」で「交流し暮らす」ということですが、メタバースの中に入るのは、PCやスマホ、タブレット、そしてVRデバイスなど、さまざまなデバイスからアクセス可能です。

一つの空間の中にVRで入っている人もいればスマホから入っている人もいて一堂に会している。クロスデバイス環境が当たり前化したことでアクセシビリティが上がり、メタバースの成長はさらに着実なものになってきました。

プラットフォームや国によってデバイスの比率は異なりますが、VRChatではVRの利用が多くなっており、たとえば弊社のコンテンツへのアクセスのデータをみると、PC単体で利用しているのがざっくり4割、Meta Quest単体が2割、そしてPCとVRヘッドセットを併用したPCVRが4割(ちなみに日本はQuest単騎がもう少し多い)という比率です。合計するとVRからのアクセスが全体の6割を占めており、スマホの利用は伸びてはいるもののまだ微々たるものです。

一方、Robloxのコンテンツのデータをみると、スマホやタブレットからのアクセスが全体の8割を占め、PC以上にモバイルからカジュアルにアクセスされています。RobloxでもVR対応は始まっていますが、VRからのアクセスは約0.1%程度とまだ非常に少ない状況です。

VRChatはVR中心からスマホなどライトデバイスへと拡大し、一方RobloxはPC・スマホ中心からVRへと、山を逆方向から登っている感じですが、いずれにせよアクセスできるデバイスが多様になることでメタバースの成長が加速しています。
ユーザー属性やエリア、タイミングに合わせてさまざまなアクセス方法で好きな時に入り共存できる居場所にメタバースはなってきているのです。


②世代

2点目のキーワードは「世代」。とくに「Z世代・α世代」です。

実はメタバースの利用には世代間で大きな格差があります。

メタバースへの懐疑論を持つのは年齢が上の世代ですが、それとは対照的に特に10代を中心とした若い世代でメタバースはすでに「当たり前」化してきています。

Robloxは最も若い層に人気のあるプラットフォームで13歳未満のユーザーが4割を占めると言われており、10代に圧倒的な人気があります。VRChatはRobloxより年齢層がやや高いですが、それでもグローバルではユーザーの平均年齢は20代前半という感じです(日本はちょっと特殊で平均が30歳前後と海外より高いですが)。

電通の調査によると、メタバース(※調査では「イマーシブメディア」と表記)の利用経験には衝撃的なほどの世代間格差があります。

10代前半では利用経験者が70%超え、16~19歳でも50%を超える一方、20代では約20%、30代以上では10%程度と急激に減少し、50代では1割を切ります。


「メタバース盛り上がってなくない?」と思っている方は、ジェネレーションギャップのために盛り上がりに気づけていないだけかもしれません。

40代・50代からはイメージしづらいもしれませんが、10代では過半数がすでに利用しており、「もう来ている」わけです。「デジタルネイティブ」ならぬ「メタバースネイティブ」な世代が育つにつれ、5~10年でメタバースは今のSNSのように一気に普及するでしょう。


③滞在時間

3つ目のキーワードは「滞在時間」。
メタバースは利用時間が非常に長いのです。

たとえばこちらの『ソーシャルVRライフスタイル調査2023』によると、

VRChatでは、1回あたりのプレイ時間が3時間以上という回答が半数を超えています。

Robloxでも「平均滞在時間は150分」と公式に発表されていますし、すでにTikTokやYouTubeの利用時間の数倍になっているという調査もあります。


メタバースになじみのない人は「そんなに長い時間何をやっているの?」と思われるかもしれません。

長時間利用の背景には「ソーシャル」の要素が強くあります。特にVRChatはソーシャルメインのプラットフォームとして友達とのコミュニケーションや交際が活発で、何か特定の目的というよりも「生活」があります。Robloxもゲームだけを楽しんでいるわけではなく、子供たちが友達と集まって遊ぶ「居場所」になっています。


メタバースの成長にとって「滞在時間の長さ」が重要なのは、それが「日常使い」が進んでいることの証左だからです。

イベント会場などでVRヘッドセットを体験してみたことが数回あるぐらいの人にとっては、メタバースはどうしても特別な「非日常体験」のイメージになりがちですが、僕は「メタバース=非日常」と考えるとその本質を見誤ると思っています。

むしろメタバースは、日常的に「いる」ことが当たり前になり、その中でのつながりが増えて「居場所」になる時が本領発揮です。滞在時間の長さはそうした「日常化」が進行していることを示しており、メタバースは単なる一過性の流行ではなく、生活の一部として深く浸透し始めているのです。


④動画SNSへの浸食

4つ目のキーワードは「動画SNSへの浸透」です。

2024年は動画配信者のメタバース進出が話題になった一年でした。

HIKAKINさんが9月にRobloxを始めたことが話題になったり、VRChatは人気配信者のスタンミじゃぱんさんによって一気にユーザーが増え、「スタンミショック」ともいえる特需が生まれました。ホロライブをはじめVTuberも続々とVRChatを始めています。

これまでYouTubeやTikTokで生身の体でネタを撮って配信したりLive2Dで配信していたインフルエンサーが、VRChatをはじめとしたメタバースの中で動画を撮影し、配信するという動きが増えています。

TikTokでも「Roblox」と検索すると大量に人気の動画が出てきます。しかもその多くがゲーム配信ではなく、「踊ってみた」のような「これまでリアル動画だったフォーマットをアバターで撮った」日常的な動画なのです。


いまSNSやUGCの覇権は動画プラットフォームです。その人気インフルエンサーたちが続々とメタバースを活用し始めていおり、気がつけばYouTubeやTikTokにメタバースのコンテンツが増えてきている。

そしてその影響で動画SNSの視聴者もメタバース自体に興味を持ち、メタバースを始めていく。動画SNSを起点にメタバースへのプラットフォーム大移動がますます加速していくでしょう。


⑤リアルとのクロスオーバー

最後のキーワードは「リアルとのクロスオーバー」です。

HIKKY社が開催するバーチャルマーケット(メタバース内で行われる「コミケ」のようなマーケット)ではここ数年、「Vket Real」としてリアル会場でのイベントも開催され、多くの人を集めています。さらに今年は同時期に「VRC大交流会」というイベントも開催され、4,000人を超える動員があったそうです。


「Vket Real」というのは「バーチャルマーケット」の「リアル」、バーチャルなのかリアルなのかどっちやねん、という言葉ですが、面白いのは、メタバース内で生まれたコンテンツやコミュニティが、リアルな場所に染み出してきている、「リアルへの逆流」が起こっていることです。

インターネット時代にも、ネットのつながりから「オフ会」が開催されさらにコミュニティが活性化してきた歴史があります。

20世紀には「対面の出会い」が重視されていましたが、その重心は徐々に変化しています。かつては「出会い系」と呼ばれちょっと後ろめたい感もあったネットでの出会いですが、今ではマッチングアプリ婚も当たり前になっています。ソーシャルな関係はリアルよりもむしろオンラインのつながりが主になっています。

メタバースは単なるリアルの劣化版や補助的なツールを超え、むしろメタバースの方が主となり、それが現実世界に染み出してくる逆転現象が起こってきている。こうした「リアルとのクロスオーバー」は2025年にはますます拡大するでしょう。


そして「Metaverse Is Eating The World」

以上、メタバースを理解するための5つのキーワードとして「①マルチデバイス」「②世代」「③滞在時間」「④動画SNSへの浸透」、そして「⑤リアルとのクロスオーバー」を挙げました。

この5つの傾向が進行することで2025年以降ますますメタバースは「当たり前化」「日常化」し、生活の様々な活動の重心がメタバース起点へと移るフェーズにいよいよ入ってきます。

2024年、a16zは「Anime Is Eating The World」を言いました。ここから数年で「Metaverse Is Eating The World」と言われる日がやってくるはず。そしてその時、日本がその震源地になる。来年もワクワクする一年になりそうです。


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