2021年版『学びと仕事に役立つデジタルツール調査』 〜多種多様な新ツールの登場がもたらした「破壊の1年」
英国在住のコンサルタントのジェーン・ハート( Jane Hart)氏が2007年から毎年行っている公開アンケートにより選ばれる「Top Tools for Learning」の2021年版が今月初旬にリリースされました。個人によるプロジェクトではありますが、過去15年間、毎年定点観測的に投票・集計が行われていて、俯瞰的な人気デジタルツールの動向を伺う上で毎年注目しているランキングの一つです(回答者の4割程は教育関係者という点も特徴的です)。
今年の投票・推薦者数は33カ国、2,077人と、昨年の「45カ国、2,369人」からは減少はしているものの、ランキングのリスト掲載総数が昨年の200から300に拡大し、多様なツールが盛り込まれています。ハート氏いわく、そうしたツールの種類、数の躍進を踏まえ、2021年は「Year of Disruption(破壊の一年)」と称しています。昨年はZoom、Teams等に代表されるビデオミーティングやコラボ、エンゲージメント、ホワイトボード・ツールの躍進が特徴的でしたが、今年は更に進化しているようです(昨年のランキングについて)。
早速ですがトップ10のランキングを見てみましょう
【1】2021年度版のトップ10のツールは?
総合ランキングは以下の通り、昨年とあまり大きな変化はないですが、やはりZoomが2位、マイクロソフト Teamsが4位と、ビデオ会議サービスが既に欠かせないものになっていることが伺えます。そしてYouTubeの安定の首位も、学習系YouTuberなどの登場とともに、ビジュアルコンテンツを通じて学習することが一般的になっていることを裏付けているように思います。
ちなみにトップ300をランク付けしている「総合リスト」の他に、以下のような「個人による学習」、「職場での学習」、「教育分野」毎のサブリストも作成されていて、それぞれの分野で上位にランクされている特徴的なツールを概観するだけでも、各分野での傾向を伺い知ることができます。
Top 150 Tools for Personal Learning 2021(個人による学習)
①YouTube ②Google検索 ③LinkedIn ④Twitter ⑤Wikipedia ⑥Zoom ⑦WhatsApp ⑧Word ⑨Google Docs & Drive ⑩Facebook
Top 150 Tools for Workplace Learning 2021(職場での学習)
①Zoom ②Microsoft Teams ③Google検索 ④PowerPoint ⑤YouTube ⑥Slack ⑦Word ⑧Wikipedia ⑨LinkedIn ⑩Google Docs & Drive
Top 150 Tools for Education 2021(教育分野)
①YouTube ②Google Docs & Drive ③PowerPoint ④Zoom ⑤Google検索 ⑥Canva ⑦Google Meet ⑧Word ⑨Google Classroom ⑩Kahoot
いかがでしょうか?教育分野で6位の画像編集サービス「Canva(キャンバ)」はオーストラリア発のユニコーン企業です。同じく教育分野の10位にランクしているクイズ形式での学習を支援する「Kahoot(カフート)」は、ノルウェーのオスロ証券取引所に今年3月に上場し、日本でのサービスもこの夏スタートしたばかりの注目サービスです。
上位ランク入りしたサービス以外の注目ツールの見つけ方
私がこのランキングを毎年楽しみにしているのは、上位にランク入りしているサービスを確認するというよりはむしろ、新しく急上昇しているツール、分野はどのようなものがあるか、そうした傾向を伺い知るヒントを提供してくれている点にあります。
例えば、カテゴリごとにまとめられたページを眺めることで、既に定番のサービス以外の新しい、聞いたこともないような注目サービスと出会うことができます。
個人的おすすめデジタルツール2021年版
自分自身が気に入って利用しているサービスがどのように評価されているかを確認する、という点でも、このランキングはとても参考になります。
例えばですが今年自分自身が每日のように利用して便利と感じているツールを5つほど上げてみたいと思います。
①DeepL:オンライン自動翻訳ツール〜95位
[翻訳精度が高く、ショートカットをクリックするだけで素早く記事全文翻訳が出来る点が秀逸] *関連記事
②Feedly :RSSリーダー〜27位
[注目しているサイト、ブログのみならず、Twitterのリスト、Google検索結果、ニューズレター等を一括して閲覧出来る点、更にはAIを活用することで注目記事やコンテンツに出会うことが容易になるサービス]
③Craft:ドキュメントツール〜ランク圏外
[Notionと比較されることも多いサービスですが、ビジュアル面的に見やすく、個人的にはブックマークとキュレーションのためのツールとしてとても重宝しているサービス] *関連記事
④Roam Researh:ノート・ティキング・ツール〜ランク圏外
[『ネットワーク化された思考のためのノート・ティキング・ツール』と名乗るサービスだけに、第2の脳のように記録した過去のメモを関連付けることが出来る点が便利と感じます] *関連記事
⑤Workona:タブ管理ツール〜ランク圏外
[タブを数多く開いてしまいがちな人にとってはテーマごとに一連のタブを切り替えて整理・保存してくれるサービス]*関連記事
③④⑤のサービスがランク入りしていないのは昨今様々な分野でデジタルツールが生まれている中で、教育分野というよりは「生産性向上」という分野でカテゴリ分けされているからかもしれませんし、或いは一般的にそこまで知名度がないだけかもしれません。また、個人の好み、或いはその人がどのような作業を日々取り組んでいるかによっても人気、知名度は異なるとは思います。
こうしたデジタルツールは近年の傾向として毎年驚くペースで進化していることもあり、職場、チーム、友人同士などで共有の機会を設けながら、「デジタルお道具箱」のアップデイト作業を折に触れて行うことの重要性を感じます。
以上、いかがでしたでしょうか?ぜひリストの中身を眺めながら、便利と思えるサービスとの出会いが1つでもあれば幸いです:)