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アメリカを復活させた150のメッセージ―アメリカから日本を観る②

5年前にニューヨークのマッハッタンから人が消えた。実質ロックダウンとなり、観光客が街からいなくなった。ホテルやレストランは開店休業となった。テレワークでオフイスワーカーもオフイスからいなくなった。企業は経営が厳しくなり、レイオフをおこなった

COVID-19 パンデミックから5年経ったニューヨークに世界から観光客が戻った。ホテルもレストランもブランドショップもエンターテイメントも戻った。雇用は増えたが、人がいない。働く人も世界から集まる。ニューヨークは世界の人の都市である

ニューヨーク・マッハッタン57番街 ルイヴィトン

テレワークから出社スタイルに戻そうとするも、フリーアドレスとしたオフイススペースでは足りない。しかもオフイス賃料もマンション賃料もパンデミック以前よりも高騰して、ダウンタウンでは「普通の人」はとても住めない。しかもテレワークで十分仕事がまわる。だから郊外に住むのが必然で、元には戻らない。それで生産性はおちていない。リアルが必要ならばリアルにつながればいい。実態としてはなにも問題がないようだと、ニューヨーク在住30年の幼児教育家

マンハッタンもヒューストンもオースティンも、COVID-19の前のアメリカと何ら変わらない。いやCOVID-19のストラグルに耐え学び、第47代大統領としてドナルド・トランプ氏を選択した。そして大統領選の熱狂は持続している

ニューヨーク ウオール街

このアメリカの熱狂は、どこからきているのだろうか?


1 アメリカの心

「アメリカの心」「続アメリカの心」(学生社)

2冊の本がある
40年前の本で、何度も読んだ愛読書である。「アメリカの心」「続・アメリカの心」(学生社)と和訳された計150のメッセージ集。1979年から、ユナイテッド・テクノロジー社が、アメリカのウオール・ストリート・ジャーナルに、「グレイ・マター」と題するシリーズ企業広告を8年間展開して、アメリカン・スピリットを呼び起こした

1980年代の当時のアメリカは、「財政収支の赤字」と「経常収支の赤字」という双子の赤字でアメリカが苦しんでいた。ソニーが米国のコロンビア映画を買収、三菱地所がニューヨークの象徴とされたロックフェラーセンターを買収したのは1989年だった。翌年に松下電器産業(現パナソニック)がユニバーサルを買収した

その1980年代のアメリカ国民に、この「アメリカの心」が発信されつづけた。そのシリーズ企業広告「グレイ・マター」の一編を紹介する


「アメリカの心」(学生社)

もし君がときに[
落胆することがあったら
この男のことを考えてごらん。
小学校を
中退した。
田舎の雑貨屋を営んだ。
破産した。
借金を返すのに
15年かかった。
妻をめとった。
不幸な結婚だった。
下院に立候補。
2回落選。
上院に立候補。
2回落選。
歴史に残る
演説を
ぶった。
が聴衆は無関心。
新聞には
毎日たたかれ
国の半分からは
嫌われた。
こんな有様にもかかわらず、
想像してほしい
世界中いたるところの
どんなに多くの人々が
この不器用な、
ぶさいくな、
むっつり者に
啓発された
ことかを
その男は自分の名前を
いとも簡単にサインしていた。
リンカーン、と。
これで君の気分は
楽になるだろう

「グレイ・マター(日本語訳「アメリカの心」)」(ユナイテッド・テクノロジー社企業広告)

2 なんども失敗する人生

エイブラハム・リンカーンは
ビジネスで2度失敗した
鬱病にもなった
プロレスラーでもあった
選挙では7回も落選した
アメリカ史上最も成功した
リンカーンは、同時に
最も多くの失敗をした人

カーネル・サンダースは
フライドチキンの営業をして
1009回交渉して断られた
65歳で
ケンタッキーを創業して
画期的なFCビジネスを発展させ
全米、世界に展開した

ヘンリー・フォードは
ビジネスで2度の失敗をした
39歳でフオード自動車を設立し
誰もが買える安い車をめざして
T型フォードをつくり
自動車製造システムに
画期的なイノベーションをおこした

ウォルト・ディズニーは
「創造性に欠けている」
という理由で新聞社を解雇された
立ち上げた会社は3度倒産した
ディズニーのテーマパークを
オープンさせたのは53歳
夢と感動の体験を磨きつづけ
世界企業に育てた

ドナルド・ジョン・トランプは
6回も破産を経験して
2回も暗殺未遂されても
2度目の大統領に返り咲こうとしている

3 失敗を成功につなげる国

スペース・センター・ヒューストン

スペース・センター・ヒューストンを訪ねた。アメリカが宇宙に挑戦しつづける軌跡に圧倒された。そしてこう思った

アメリカは凄い国
たくさんの失敗を糧に
人類初の科学技術成果を
成し遂げつづけてきた

一人ひとりの
研究者、技術者は
日本人の方が
レベルが高いかもしれない

しかし
アメリカは
明確に設定した達成目標に向けた
体制や精神に
日本的「無責任村体質」がないため
実績を挙げられている
のではないか

スペース・センター・ヒューストンのアポロ計画の展示では、人類初の月面着陸の成功事例だけでなく、宇宙飛行士3名が死亡したアポロ1号の失敗事例を赤裸々に紹介している

スペース・センター・ヒューストン

なにが違うのか?

無数の敗北者を出しながら
次々と新たなリーダーが
突破口を拓く国と

体制にしがみついて
責任を取らず
次々とやりっ放しにする
国の違い

能力がなければ、構わず交代させ
実績がなければ、どんどん引退させる
新陳代謝こそ、国力と考えるアメリカ

失敗を成功に繋げるアメリカ
失敗から逃げる日本

歴然と日本の構造課題を明かす
代わりは、いくらでもいる
引責・引退が足りなすぎる日本

4 失敗を恐れない

1980年代にアメリカ人の心に火をつけたシリーズ企業広告から、もう一遍紹介したい―タイトルは「失敗を恐れるな」

君はこれまでに
何度も失敗した。
きっと覚えては
いないだろうが。
はじめて
歩こうとしたあの時
君は転んでしまった。
はじめて
泳ごうとしたあの時
君はおぼれそうになった、
そうじゃなかったかい?
はじめて
バットを振ったとき
バットはボールに当ったかい?
強打者たち、
ホームランを一番よく打っ
ヒッターは、
よく三振もするものだ。
R.H.メーシーは7回も
失敗したあとで
ようやくニューヨークの店を成功させた。
英国の小説家
ジョン・クリーゼーは
564冊の本を出版する前に
753通の断り状を受けとった。
ベーブ・ルースは
1330回三振した、
だが714本のホームランも
かっとばしている。
失敗を
恐れちゃいけない。
トライもしないで
逃す
チャンスこそ
怖れた方がいい。

「グレイ・マター(アメリカの心)」(ユナイテッド・テクノロジー社企業広告)

グレイ・マター(アメリカの心)から40年。世界最大の都市ともいわれるニューヨークと世界のエネルギー拠点のひとつであるヒューストンの熱狂の渦の真ん中にあるスピリットの所在を感じた

トランプ大統領就任前のクリスマス休暇の「アメリカから日本を観たこと」を4回シリーズの第3回は、1月15日(水)に「スーパーと日本の料理店の現場」から日本を考えたい


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