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ITエンジニア紹介会社の分岐点—中途採用市場の厳しい現実

様々なITエンジニア採用企業より採用相談をいただいていますが、リファラルできるような強力な社員やブランディングがないと厳しい状況です。技術力、ブランディング、人脈を兼ね備えたタレント社員の採用が、採用成功の王道となりつつありますが、一般企業では困難です。

次に考えられる打ち手はスカウト媒体です。しかし、スカウト媒体の集客力が鍵を握るものの、返信率が低く、2024年現在では推奨できる媒体は一つしかありません。過去に私が男女マッチングサービスに関わっていた際、男女比を意識しないとマッチング率が悪化するため、広告担当が細心の注意を払っていました。同様に、スカウト媒体でも候補者と企業数のバランスが崩れているのではないかと感じています。

その結果、一般企業が頼れる施策は人材紹介会社になります。今回は、この人材紹介会社に異変が起きているというお話です。

3極化が進む人材紹介会社

以前、以下のようなお話をしました。現在は大きく分けて3極化しているため、その現状を整理していきます。

人材事業が決定できない理由 2024夏

マス広告で母集団を形成し、体制増員をするも企業からの問い合わせが多すぎてビジー状態

大手人材紹介会社にも候補者は多少いますが、採用企業からは「なぜこんなに採用企業側満足度が低い人材紹介会社に即戦力がいるのか」と不思議に思うことがあります。転職を考える人が常に転職市場にアンテナを張っているわけではないため、どの人材紹介会社が良いかというような情報を持っておらず、テレビCMなどが依然として効果的なようです。

しかし、こうしたマス広告を売っている人材紹介会社についても、採用企業からの問い合わせが多く、対応しきれていない印象があります。ある人材紹介会社は(相当数な自動化が感じられますが)「幅広く」提案を行っているものの、マッチング精度は低く、それでも新規企業契約を断り始めていると聞きます。候補者の流入と企業契約数のバランスが崩れている状態ではないかと考えています。

また、ある人材紹介会社では企業契約数を調整するために人材紹介フィーを45%に引き上げる施策を実施しているようですが、ジュニア層〜メンバー層の紹介に留まっており、採用単価と期待されるバリューのバランスに課題が残ります。

手堅く母集団形成し候補者と信頼関係を築けられるものの、企業からの問い合わせが多くビジー状態

少人数で運営する両手型の人材紹介会社もあります。彼らは地道な活動を通じてスカウト媒体からの流入を確保していますが、紹介希望企業が殺到し、ビジー状態になっています。

採用企業としては、人事と人材紹介担当者との良好な関係を築き、候補者が来たときに担当者にスムーズに思い出してもらえるような状況が望ましいです。

未経験・微経験しか紹介できず、人員が減り始めた

エンジニアバブルに乗って起業した新興人材紹介会社や、マス広告が打てずに広く母集団を形成できない準大手〜中規模の人材紹介会社が苦戦しています。未経験や微経験の候補者しか集まらず、SESへの紹介しかできない状況です。しかも、経験が浅いため、SESであっても非ITエンジニア職(コールセンター、家電量販店店員、警備員など)へのアサインが多く、候補者満足度も低いです。

採用企業との初回打ち合わせで「いかに自分たちが未経験・微経験しか紹介できないか」というプレゼンをする人材紹介会社もあり、頭が痛いです。何を聞かされている時間なのかさっぱり理解できませんでした。

一方で、ROXXの上場などで注目を集めている「ノンデスクワーカー」という言葉が増えています。建設、介護、タクシー運転手などの需要が高まる中、一部の人材紹介会社ではITエンジニア担当者をノンデスクワーカー要員に異動させています。

「右肩上がりの成長」とITエンジニア人材紹介の相性の悪さ

エンジニアバブルが終わりを迎えた現在、「右肩上がりの成長」を求められる株式会社と、専門性が求められるITエンジニア職のそもそもの相性が悪いと感じます。

人材紹介会社が右肩上がりの成長を達成するためには、数を増やすか単価を上げるしかありませんが、単価はすでに高額で、数も限界があります。

エンジニアバブルの時代には採用ハードルが低く、量が期待できるためにITエンジニア人材紹介が事業として成立するように見えましたが、それも過去の話です。

エンジニア人材紹介会社の今後を予測する

スカウト採用もリファラル採用も厳しい今、人材紹介会社を頼る採用企業からの問い合わせは続くでしょう。今後数年間の動向を予測します。

企業側:ソーシャルゲームバブルを振り返る

採用企業から見た人材紹介会社の現状は、2010年代前半のソーシャルゲームバブルと似ていると考えます。当時、ソーシャルゲーム各社はLAMPエンジニアの採用競争を激化させ、人材紹介フィーが100%を超えることもありました。人材紹介各社はLAMPのエンジニアを率先してソーシャルゲーム各社に誘導していったため、その他のWebサービス各社に人を回していなかった時期があります。その後、ソーシャルゲームバブルが弾けた際には、人材紹介会社の幹部が謝罪に奔走する光景が見られました。

人材紹介会社自身の人材流動性が高すぎるため、この過去を知らない人材紹介会社のプレイヤーも多く、今後同様の謝罪が展開される可能性があります。

候補者側:経験者から選ばれるブランディング作りが急務

未経験・微経験転職を主軸にしている人材紹介会社にとって、2029年が転換期になると予測しています。この年には情報Iの授業が必修となり、ITエンジニアの素地が整った人たちが2030年には転職市場に登場します。

2030年頃には、現在ジュニア層採用を渋っている企業でもプログラマの世代交代が進むと考えられます。生成AIの進化でプログラマ不足が一部補えるとしても、保守運用の需要は残るでしょう。

これまでの未経験・微経験転職市場では、IT業界に憧れた未経験者が主なターゲットでしたが、2030年以降はジュニア層に対しても専門的な知識が求められるようになります。これに対応するため、人材紹介会社は社員の教育や質にこだわる必要があります。さもなくば、ITエンジニアとしての適性が疑わしい人材を支援することになり、事業の筋が通らなくなるでしょう。

将来を見据え、ITエンジニアにとって信頼できる相談相手となることが、人材紹介会社の生き残りの鍵となるでしょう。


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