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薄利大量生産から厚利少量へ 自分の好きが広がるこれからの消費
こんにちは、電脳コラムニストの村上です。
前回ニッチ市場について書いた以下の記事が先週のnote ビジネスカテゴリでよく読まれたようです。今回は最近目についた具体的な事例を元に深堀りしてみたいと思います。
昭和の時代が大量消費、大量生産だとすれば、令和の時代はその逆。つまり、少量消費、少量生産になるだろうと考えています。その背景には情報流通の変化があり、マスメディアにより広く広報されたイメージよりも、個人の想いがつまったSNSに流通する情報の方が力を持ちはじめたということです。
国内においては人口減少によりヒット商品の絶対的なボリューム自体が減っていきます。するとこれまでのモデルを変化させる必要があり、また世代のような大きなセグメントよりも、年代を問わない趣味嗜好に応じた細かいセグメントに対して商品を届ける必要が出てくるでしょう。
クラウドファンディング(以下、クラファン)の仕組みがそれを後押しします。日本のクラファン市場の規模は、2022年度で2000億円(矢野経済研究所)。絶対額としてはまだまだ伸びしろがありますが、無視できない大きさにまで育ってきています。以前の記事でも大手光学機器メーカーであるHOYAの事例を紹介しましたが、大手メーカーのチャレンジの場としてもクラファンは活用されています。
今回ご紹介するのは、ホースのいらない卓上カセットコンロを発明して、いまなお使われるロングセラー商品を販売している岩谷産業の事例です。
マイダンロは家庭用の電子レンジと同じくらいの大きさで、テーブルの上などに置いて利用する。製品は3万円超と、インテリアとしてはやや高めの設定だ。しかしマクアケでの公開直後から購入者が相次いだ。マーケティング部部長の本山孝祐氏は「部のメンバーみんなが僕を見ていたが、感極まって泣いてしまった」と話す。
マイダンロは本山氏が「自分が欲しいものをつくる」と、22年ごろから開発に着手した。新商品の開発をチームで話し合う際、アウトドア用のガスランタンで炎を眺めながらお酒を飲むことにした。そのときに楽しい時間を過ごせたため「炎のゆらぎを製品化できないか」と思いついた。
カセットボンベは災害時にも活躍する安全でポータブルな燃料です。ガスの電池とも称されるこれは、コンロのみならずバーナーや暖房器具、ポータブル発電機などの燃料にも使われています。
クラファンで発売した「マイダンロ」はカセットボンベの使いやすさを強みとして、どこでも使えるインテリアとしての暖炉です。
暖炉といえば薪ストーブも愛好者が多いですが、家に備えるには家を建てる段階から計画しなければならず、後付けの暖炉としてバイオエタノールを利用したものがありますが比較的高価なものです。また、燃料も専用のものを使わなければなりません。担当者の「自分が欲しいものをつくる」という想いは、実は他の人も欲しかったものだったということです。
これまでの商品企画は需要調査やサーベイなどを通じて、綿密な販売計画を経て商品化されます。これからも主要な商品はこのように開発されていくのでしょうが、テクノロジーの進化により小ロット生産にかかるコストが下がっていますのでより狭いターゲットに深く刺さる商品開発もしやすい環境が整いつつあります。
このような商品は「濃いファン」を生むという点も重要です。コモディティ商品であればあるほど、メーカーに対して特にこだわりはなく「まぁ、どれも同じでしょ」となりがちです。これまでの商品とは別の軸でファンになってくれた人は、同じようなものならあの商品をつくっているメーカーのものにしよう!という意識が働きます。ブランド戦略としても、クラファンの活用は理にかなっているのかもしれません。
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タイトル画像提供:mayucolor / PIXTA(ピクスタ)