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ほんの35年前100人いた母親が40人に減った日本

何度も言ってることで恐縮ですが、「少子化は解決しない。なぜなら起きているのは少子化ではなく少母化だから」という事実を認めたがらない人が相変わらず多いので繰り返し言っています。

2015年時点の国勢調査でも一人以上出産した母親の数をだしましたが、2020年の結果がでたのであらためて記事化しました。1985年と比較した場合に、2015年時点でも母親の数は半減でしたが、2020年にはさらに進んで6割減という衝撃的な数字になっています。

こちらの記事にわかりやすい図表をのせているので、ぜひお読みください。

普通に算数ができる人ならば、そもそも出産対象年齢の女性の絶対人口がへっているのだから出生数が増えるわけないとわかりそうなものですが、何に対して意地を張っているのか、こういう記事を出すたびに噛みついてくる「見ない・聞かない・言うだけ猿」がいます(以前よりかなり減っているけど相変わらずいる)。

それどころか「子育て支援を頑張っている人に失礼だ」とかいう意味不明な非難コメントがきたりする。はあ?読解力ないの?
子育て支援をこれっぽっちも否定していないどころか、それは少子化があろうとなかろうとやるべきだといっている。子どもを支援するのは当たり前だ。私が言っているのは、子育て支援と少子化対策は別物だという話である。

そこをちゃんと区分けしないから、「少子化は解決しないから子育て支援の必要はないんじゃないか」という誤解を生む。少子化のために支援するものじゃない。少子化だろうが、いや、むしろ少なく産まれてくる子どもたちだからこそ手厚い支援は不可欠になる。

子育て支援と少子化対策をごちゃ混ぜにしてはいけない。じゃないと、記事に書いたように、計算上は今いるお母さん方に「一人5人以上産め」ということを強制するのと等しいわけである。民衆によって殺害されたルーマニアの独裁者チャウシェスク大統領もまた「5人産め」と言った人物であるが、それと同じことを政府はしようとしているの?
だとすれば、かつて「女性は生む機械」と言って炎上した政治家がいたが、それとあまり変わらない。

少子化が取りざたされるたびに「できもしないことを、さもみんなが頑張ればできるかのごとく」何かをを言う人がいますが、物理的にどうにもならないことに目を背けて、適当な事を言う方が無責任だと思います。台風が来るとわかっているならそのための備えをするのが適応力であり台風に立ち向かっていこうとするのは単なる無謀というのです。

あと、必ず「フランスを見習え」というなんとかのひとつ覚えの意見がくるが、少母化は日本だけの話ではなく、フランスのINSEEでさえ「1990年代以降生まれた20歳から40歳の女性の数が減少のため少子化は進む」と言っています。フランスの方がよっぽど現実を直視しています。

他にもわけのわからないコメントが寄せられて、不覚にも笑ってしまったのもある。

最近、少子化にまつわる話題に対していろいろ出てくる言説には首をひねるものが多い気がする。「女性の就業率をあげれば出生率はあがる」とか「夫の育休取得率をあげれば出生率はあがる」とか「子育てや家族関連の政府支出GDP比をあげれば出生率はあがる」とか、自説を主張したいがために統計の切り取りをしてドヤ顔をする大学教授とかがいて本当に閉口する。ちなみに上記は全部嘘で因果関係などない。相関すらなかったりする。

ファクトに基づかないおかしな論説がはびこるから、こんなおかしなコメントが寄せられるようになるんじゃないのか?

男が心入れ替えれば出生があがるという理屈なら、日本の人口が3倍に爆増した明治から昭和の経済成長期に戻れと言いたいのだろうか?

何をどうしても出生は増えない。議論の出発点をそこから始めないと、結局道を間違えたといって迷走するだけだ。

職場や企業でWLBを充実させることが、出生率低下の抑制に効果がありそうだ。(テレワークは)家族との会話や団らんの時間も増加させている。これが定着していけば子供をもうけても仕事と両立できると考える従業員が増え、テレワークは出生率低下の抑制に資するともいえる。

とか言ってるんですが、まったく同意できない。もちろん、テレワークしている人を否定するものではないが、テレワークを推進すれば出生率低下が防げるなんて乱暴すぎる理屈でめまいがする。

そもそもテレワーク可能な仕事というか業種は全体就業者の3割程度である。

仮にこの3割が全員結婚して子どもを産んだとて、今の有配偶率60%にも満たない。

ちなみに、就業者の3割とは大企業従業員の数でもある。大企業に勤めている恵まれた人たちだけが、テレワークして、会社の手厚い福利厚生に守られて、子どもを産み育てればいいという理屈なのだろうか。選民思想と何が違うのか?

高給取りの伊藤忠の社員の出生率が1.97というが、これこそが「結婚や出産が経済的に余裕のある者だけが可能な贅沢な消費化」したことの表れなのではないか。

当たり前だが、大企業で働いている人だけやテレワークが可能な仕事の人だけが子育てしているわけではない。理想を語るのは勝手だが、誰もがそんな恵まれた環境の中で生きているわけではない。

逆をいえば、全国民が伊藤忠並みの給料をもらう経済環境にあれば、1.97の出生率になるのだろうか?なるんならぜひそうしてもらいたいものである。


会社四季報 2022年度版

万が一、出生率が1.97になったところで絶対人口が減っている以上、出生数は増えないということはお忘れなく。


長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。