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取り繕うニッポン―だからなんなの?(上)

宇宙航空研究開発機構(JAXA)の次世代小型ロケット「イプシロンS」の燃焼試験で爆発が先月に起きた。日本の技術力の低下の象徴のひとつのような文脈で捉えられているが、本当にそうなのか?

なぜJAXAのロケット燃焼試験で、爆発が起きたのか?JAXAはなにか無理を強いられていたのではないか?日本は3月のJAXAのH3ロケット打ち上げの失敗につづき、7月に燃焼試験をおこない失敗した

なぜJAXAはそんなに急いで燃焼試験をしたのか?

おそらく、こうではないか?
H3ロケット失敗の原因・課題が詰め切れないなかで、燃焼試験を強行させられた。JAXAのロケット技術は、日本の軍事力を代表する技術のひとつ。他国に負けてはいけないという国の要求に、JAXAは応えらざるを得ないなかでの失敗ではなかったのではないか?


1 取り繕うニッポン

日本の世界でのランキングが軒並み下がっている。経済性・生産性・競争力のランキング、大学のランキング、論文、特許件数のランキングなど、日本の世界での位置が下がっているというような記事が毎日のように掲載される

それって、本当?そんなの、おかしい―日本国内にいたら、世界のなかでの日本の存在感が低下しているとは思わないという人が多い。しかし世界に出たら、それが分かる、実感する、しかし見なかったふりをする

状況は変わっているのは事実。みんなが、それに気がついたら大変なことになる。みんなの自信を回復、威信を取り戻さないといけない。だから現場・現物・現実、実情・実態・実体に対して

取り繕(つくろ)うとする

「こんなはずじゃなかった」という思いがあり、それを取り繕うために、いろんな所に無理を強いて、おかしくなる

そんな悪循環に陥っている

こんなに円安になり、日経平均株価がバブル以来の高値になって、現在、どうなっているんだろう?こんなことは現実ではないと思っているところに、企業は賃金を上げさせられている。無理やりに賃金をあげたら、ダメージがないわけがない

コロナ禍のなかで、いろいろな取り繕いが行われた。そのひとつ、コロナ禍での実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の本格的返済が7月から始まり、企業倒産が本格的に増えだしている。国が緊急支援してきたコロナ禍の副作用がいろいろなところで起こりだしている

ずっと取り繕ってきたことが
崩れだしている

国の取り繕いだけではない。企業や個人のこれまでの取り繕いの軋(きし)みも出はじめている。高層階のカッコいいキレイなオフイスに入居したり、クリエイティブオフィスにしなければ創造的な仕事はできないなどと、浮ついたりしている

コロナ禍前からやらなければならない課題の解決を先延ばし、コロナ禍を契機にテレワークとのハイブリッドワークというこれまで経験したことのないワークスタイルに変わっているのに、仕事の再定義もせずに表面的な改善に終始している。それではうまくいかないことは本当は分かっているのに、取り繕う。もういい加減そんなことをしている場合ではないだろうという企業・組織が多いのに、取り繕っている

現代社会を捉えるキーワードは
「取り繕い」

本当は機能不全を起こして、内部は崩壊しているのに、取り繕い、傷口を広げてしまっている

2 取り繕って凌げられる時代ではない

大手企業を退職したシニアたちが、東京新橋や大阪梅田あたりに出てきて、喫茶店やコワーキングスペースに集まり、新しい事業を語りあっている風景をよく見た。これも取り繕い

有名な企業を退職して、自分が社会的に不要になったことが納得いかず、かつての自分の栄光の綻びを取り繕うように、新橋や梅田に出てきて、昔の仲間と群がる。昔取った杵柄が通用するほど、甘くない。社会は変わっている。成果がでない。取り繕いは長く続かない。仲間は一人去り、二人去り、通勤定期を持たない有名大手企業OBたちは都心に出てくる余裕がなくなり、やがて消える。このような団塊の世代(1947~1949年生まれ)の取り繕いビジネスごっこが都心でよく見たが、コロナ禍に入って消えた

2011年の東日本大震災後、再生可能エネルギー、エネルギー自由化、環境、SDGs、ESGなど様々なテーマを絡めて新たなビジネスを立ち上げようとしているが、その多くはうまくいかない。そしてコロナ禍の3年で雲散霧消した

コロナになったから、やめた―コロナ禍がちょうどいい社会的言い訳になった。コロナ禍になったため、自分は消えた。ちょうどよかった

団塊世代が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」が近づいているが、団塊世代の企業OGは一線から消えたが、団塊世代の企業経営者はまだまだ頑張っている。次の世代に明け渡したらいいのに、席を譲らない。コロナ禍前の社会・技術変化、コロナ禍後の価値観・構造変化の本質も、DXや生成AIの社会変化メカニズムも理解できないのに、分かったふりをして、なんとか時代の嵐を凌ごうと、取り繕う

物事の本質をつかまずに、時代に表面的についていく取り繕いなので、その多くは失敗に終わる

3 あなたはいらないと言われないために

多くの人が取り繕うようになった。取り繕う人のいちばんの理由は

取り繕わないと、 あなたは何なの?
あなたはいらないじゃない?
と思われたくないから

そう思われたくないから、取り繕う。あんたはいらない、あんたの役割は何なの?あんたはもういらないのでは?と言われるのを怖れる

JAXAのH2ロケットの失敗が、なぜ国を焦らせたか?それは、成功できなかったら、あなたではできないのでは?あなたはいらないのでは?ほかの人の方が適任ではないか?という話になることを怖れる。だから取り繕う

霞が関の官僚を含めて企業側も、あなたたちは役不足で困難、若い人たちに交代したほうがいいのではと言われると、困る。だから取り繕う。自分で、なんとかしようとする。だから席をしがみついて、次の人に譲らない。できそうもないのにできると言い、自信がないのにやれると言い、無理をする、取り繕う。そして失敗する。このような

不利益なことが社会に続出している

取り繕うニッポン。取り繕いでは、もう限界。問題対応ではなく課題解決。対処療法ではなく根治療法が求められるが、取り繕ってばかりいる。ではどう考えたらいいのか、どうしたらいいのか、次回に考えたい


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