人手不足の本当の理由ーみんな一緒からみんなバラバラ(下)
人手不足・人手不足というが、本当に人手不足だろうか?その本質は、えり好みではないか?需要と供給のアンマッチではないか?良さそうな所には行きたいが、良くなさそうな所には行きたくない。働く条件、働く環境の良さそうな会社には、高い給料の会社には人が集まる。みんな一緒から、二極化どころか、実態はバラバラに。
さらに4月から物流や建設業界での2024年問題という時間外労働の上限規制が適用される。これで人が集まらなくなり、ものが運べなくなったり、家やビルが建たなくなる恐れが出てきている。大変だ
目に見えている問題に、右往左往
問題が次から次におこる。問題を引き起こす真の原因をつかめていないから、解決策が対処療法となり、根本的に解決しない。人手不足もそう。その背景・文脈を取り違えているから、問題を複雑化させている。人手不足の本質は、選り好み。選り好みが「選択と集中」を加速させ、社会をモザイクにする。会社が生み出す仕事の品質を落とし、社会品質を落としていく。これから、どうなる?
1 人手不足の本質は、選り好み
日本社会にはファンダメンタル、基礎的な産業がある。建設業や物流業・交通業や医療や介護には、絶対的な供給量が必要である。DXやロボットを導入しても、1人ができるサービス供給力は限られている。建設業などは明らかだが、現在受注してもお客さまが望まれる納期どおりには完工できない。なぜそうなるのか?
その仕事をする人が少ないため
建設産業に従事している労働力で遂行できる仕事以上の仕事量が動いている。物流もそうタクシーもそう、介護・福祉もそう
求められる需要量に応じた労働力がない
給料をあげたら、労働力が増えるかというと、そうやすやすとは増えない。お金以前に、その仕事に対する先入観・偏見があり、選り好みをする
就業観は、昔と異なっている
人手不足に対して、外国人労働者の在留資格「特定技能」制度を拡充して、いままで認めなかった仕事に外国人に開放していこうとしている。労働市場における需給のアンバランスは、外国人が受け持つことになり
社会の風景が変わりつつある
2 3Kという言葉が、労働の偏見を拡げた
3Kという言葉で、偏見が拡がった
介護や福祉や建設や物流などの仕事は山ほどあるのに、働く人が集まらない。人気ランキング上位の会社は狭い門、競争率は高い。そんな難関の会社に入社したが、1年で辞める人も多い
仕事がしたくて仕事を探している人がいる一方、家でぶらぶらしていたり、ニートがいる。仕事はありあまっているのに、ミスマッチ。その本質は
わがままだったり
先入観だったり、偏見だったりする
この課題はあまり指摘されない。だから人手不足の真実は、選り好み
3 上下構造がつくりだす人手不足
それは大変だと、このような表層的な論調に影響を受ける。運輸業の2024年問題は、「1人の労働者に許される上限の時間を守れ」であるが、働くなということではない
ドライバーを増やさないと
その需給は対応できない
タクシー業界もそう。タクシーの運転手に成り手が少ない。なぜタクシーの運転手の成り手が少ないかというと、自分がタクシーに乗っている時に、運転者の仕事が分かる。いろいろと大変な仕事だ。だから息子がタクシーの運転手になりたいと言ったら、反対する
タクシーの運転手不足が、社会的な問題のように語られるけど、そうではない
単純に労働単価が安い
物流業界もドライバー不足。かつてトラックドライバーは長時間労働だったが、給料は良かった。だんだんと収入が仕事と見合わなくなっていった。そこに、2024年問題。どうするか?ドライバーの労働環境を見直して、労働時間と賃金のバランスを改善すれば、元に戻る
単価アップがなかなか認められないという問題の背景には、産業界の上下構造がある。大企業と中小企業の上下構造。業界や職種の上下構造がある。建設業界では土木作業を下に見るという感覚と同じく、物流を下に見るという感覚が大手企業にある
企業が企業を見下ろす。その仕事に費用がかかっているのに、正当に費用を認められない
かくのごとく中小企業は厳しい
中小物流トラック会社の倒産が増えているのは、この上下構造が背景のひとつ。もうひとつある
経営者のお金の使い方が誤っていた
会社の利益の従業員への配分が十分まわっていなかった。そのことが許されなくなった。そのなか、2024年問題に突入した。そしてこうなる
トラックドライバーは割が合わないと思うと、辞める。条件の良いところに移る。人が集まらないと、仕事ができなくなる。労務倒産となる
4 現在地は、次の枠組みにむけた調整段階
タクシーのワンメーター料金が1500円になったら、どうなるだろう?そうだったら乗らない、もしくは他の交通手段を考えるようになる。これ以上は駄目という値段になれば、値段は調整されていく。需給はバランスに向かう
現在は調整段階
モノやサービスの値段に政府の統制が入ると、政府の管理価格になる。官公庁がかかわると、価格の硬直性が高い。しかし政府の管理下でなかったら、価格は自由に変わる。需給に従って変わる
ラーメンの値段が高くなったという人がいるが、 値段が高いと思ったら食わなければいい。寿司の値段が高いと思うのならば、食べなければいい
ラーメンや寿司の値段に社会性はない。それが安いと思うのか高いと思うのは、人それぞれ。誰かが高いと思っても、高くないと思う人は食べる
現在は調整段階である。価格をあげないと生き残っていけない企業が、価格をあげられなかったら潰れる。それじゃ駄目だという政府がいるとしたら
それは過干渉となる
不動産の価格は自由価格である。憶ションが増えているが、政府は規制しない。しかし憶ションになったら、多くの人は買えない
ただ自由価格にすると、産業全体への波及が大きいとかなんとか言って、規制しようとする。業界がつくりあげてきた下請けシステムでまわってきた。なにかひとつ変えたら大きな綻びが生じるからと、その構造をずっと守ってきた
機能不全している制度やルールは変えたらいい、やめたらいい。そんなことをしたら、耐えられない、潰れてしまうと、反対する。たしかに、いきなり激変すると、影響が大きい。だったら、激変は緩和したらいい。緩和している間に、社会が、企業が、それにキャッチアップしていけばいい。大事なのは、次の姿・カタチを考え、それをみんなに見えるようにして、みんなでそこに向かうこと
現在地を一言でいえば、混沌。混沌とは、次の枠組みに向けた試行錯誤をしている状況である。次に向かった混沌期である
人手不足も、次に向けた調整段階
値上げも、次に向けた調整段階
大事なのは、次の姿・カタチに向けて、現在がどうなっているかを直視して、未来を開拓する戦略を考え、動き出すこと
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