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採用成功のカギはどこに?難航するITエンジニア経験者中途採用の現実

「エンジニア採用がうまくいっている企業はないのでは?」という質問をXでいただきました。

実際、採用成功例はありますが、それらは多くの場合、採用予算や企業規模が他と大きく異なり、一般的な企業がすぐに真似できるものではありません。また、新卒採用を除けば、採用セミナーも減少しているように思われます。

本記事では、ITエンジニア中途採用が難航する理由を2024年の転職市場を振り返りながら整理します。

ITエンジニア中途採用が難航する理由

リファラル採用が活況だが、真似は難しい

2024年もリファラル採用が活発でした。中には中途入社者の7割をリファラルで決めた企業もあります。4割程度がリファラルという企業も散見される他、SESでもリファラル採用が主流となっています。

リファラル成功企業の中には「特に意識していないが結果的に多い」というところも多く、再現性のある方法として共有されていません。

リファラルは社員の協力があって初めて成り立ちますが、職場の雰囲気が悪い企業ではその活用が難しいのが実情です。一部では報奨金や評価目当てでリファラルが形骸化している例も見られます。

メガベンチャーの採用縮小

これまで積極的に採用を進めてきたメガベンチャーでは、採用よりも既存社員の生産性向上に注力する方向へシフトしています。

新規機能開発やR&D投資を控えているだけでなく、収益事業の運用・保守をSESに委託するケースが聞こえ始めてきました。このような動きは、とにかく正社員ITエンジニアを採用する動きだったエンジニアバブル期の採用方針からの変化と言えます。

希望給与と条件の不一致

スキルマッチ、カルチャーマッチ、事業への関心、コミュニケーション力、さらには利他性まで求められ、非常に狭き門となっています。

エンジニアバブル期には転職による年収アップが盛んに行われました。特に外資系IT企業やスタートアップは積極的に高給与を提示していました。その結果、現在の転職市場では求職者の希望給与と企業の提示レンジが合わないケースが増加しています。

給与水準を高めに設定する企業は一部存在しますが、採用基準が高く、依然として競争は厳しい状況です。

SES業界の変化と自社サービスへの転職減少

SESやフリーランスから高還元SESへの転職が増えています。

一方、SESから自社サービスへの転職は減少傾向です。

採用企業から見ると事業共感を重視するようになったため、クライアントワークに特化した候補者がそのことを面接で伝えられずにお見送りになりやすい傾向があります。

候補者から見ると高還元SESへの転職が確からしい存在になっているため、給与上昇を目的とした転職先としての自社サービスの魅力が相対的に低下しています。

海外籍人材採用と英語対応の課題

中途採用成功企業では、海外籍人材の受け入れが進んでいます。

しかし、日本の多くの企業では英語対応が課題となっています。英語対応に不慣れな社員や、日本語のみで構成された社内文書などが障害となり、海外人材の受け入れ・定着を難しくしています。

過去には海外人材のために複数の専任通訳を設けた企業もありましたが、現在では人件費の観点からそのような対応は減少しています。

新卒採用市場の活況と課題

中途採用が難航する中、新卒採用市場は活発です。

しかし、早期化が進む一方で、厚生労働省の発表によれば2024年11月時点で就職内定率が前年同期比で1.9ポイント低下しており、就活が長期化する可能性が考えられます。今後の着地に注意が必要でしょう。

採用企業が考えるべきポイント

現在の採用市場はエンジニアバブルの反動により、過度に絞られているように見えます。今後1~2年で未経験者や中途採用への回帰が予測されますが、それに向けて企業は採用ポジションの意義を再考する必要があります。

現在、私への相談事としても、漠然とした採用相談は減少しています。逆に現在居るITエンジニアチームに対する見直しや、再構築についての内容が増えてきました。現状の給与や評価が適切なのかどうかについてのレビュー依頼も見られるようになりました。

エンジニアバブル期は投資状況が異様だったため、数を追う採用は戻ってこないと予想しています。例えば、SESや生成AIを活用して実装要員を補完し、事業共感やドメイン知識を備えたPdM、PjM、プロダクトエンジニアを重点的に採用する戦略が注目されていくと考えています。


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久松剛/IT百物語の蒐集家
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