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戦後最大の仕事の変化—新教養考⑤

戦後最大の仕事の変化が、現在進行している。コロナ禍に入って、テレワーク・リモートワークとなり、オンライン会議が圧倒的に増えた。コロナ禍前にと比べて、会議が増えた。私の絡む会議も、その大半がオンライン会議となった。コロナ禍で大きく減ったが、リアル会議もある。会議の中にリアル出席の人もオンライン出席がまじる「ハイブリッド会議」が増えた。これからの会議の基本は、このハイブリッド会議となるのではないか

とてつもなく大きな変化が起こっているのではないか。そんな問題意識から、私のまわりのメンバー15名で、2週間の会議を調べた。15名のメンバーが参加した300件の会議の7割が、オンライン会議だった。 コロナ禍後のあなたの会議は、どうですか

1.なんのために会議をしている?

日本の会社は、昔から会議が多かった。一日中、会議をしていた時もあった。労働時間のなかで占める会議の時間はどれくらいかと調べて、愕然としたこともあった。どうしてこんなに会議が多いのだろう?なんのために、会議をしているのだろう? ITがこれだけ進んだのに、なんのために会議をしているのだろう?むしろ、IT化の前よりも増えているのではないだろうか?

会議をする目的には、いろいろある。さすがに、かつてのような情報伝達や情報共有のためだけの会議は減っただろうと思ったが、まだまだ多いようだ。情報伝達・情報共有だけを目的とした会議を主催する管理・監督者へのメンバーの不満度は高い。昔から、こう言われてきた

会議の様子を見たら
リーダーのレベルが分かる

そんな大事な会議なので、会議のあり方を見直している企業も多いはず。IT化が進んで、組織内での情報伝達・情報共有の基盤が整備されている現在、会議の主目的は、問題解決のための議論や人間関係の醸成や着想・発想・アイデアを出すためとなり、そのためにメンバーが集められ、あるテーマを、ある一定の時間で議論するようになったはずだが、実態はどうなっているのだろう?

2.人間関係がよくなる会議

私のまわりの15名が参加した300件の会議のなかで、人間間関係の醸成につながった会議は、当たり前かもしれないが

2人・3人での対面会議で
30分ぐらいの短い会議

だった。かつてわたしはB2Bの営業をしていた。30分単位にアポをとり、朝から夕方まで、お客さまを訪問していた。売りたい商品やサービスの話を殆どしなくて、雑談が多かった

事前に提案書を準備したり訪問ストーリーを考えて訪問したのではなく、お客さまごとにいろいろな話をした。お客さまと盛り上がり、アポの30分をオーバーしたり、1時間も2時間も話しこむこともあった。毎月ごと訪問するお客さまもいたし、3ヶ月ごと半年ごとに訪問するお客さまもいた。あまり行かなかったら、「顔を出してえや」と声かけていただくお客さまもいた

この何か月ごとの30分ごとの雑談の積み重ねで、人間関係が醸成した。お客さまの訪問と訪問の間は、お客さまごとに参考となると思う情報をメールでお送りして、つながっていた。その頃のお客さまとの雑談が、わたしのnote日経COMEMOに変わった。その頃の私のお客さまと交わした雑談のように、COMEMOを書いている。その頃のお客さまの何人かは、今でもこのCOMEMOを読んでいただき、つながっている

そう、雑談。オンライン会議で減ったのが、雑談。会議開始の前の雑談、会議中の隣の席の人とのこそこそ雑談、会議終了後の雑談が消えた。この雑談で、個人的関係がよくなっていたのだが、会議時間開始で集まり会議時終了でいなくなるオンライン会議では、人と人の間がなくなった

3.ハツ!なるほど!と感じる会議

もうひとつの会議の目的である「着想や発想やアイデア」につながる会議は、どんな会議だったのか?それは

7~8人が集まった対面会議で
90~120分の会議

のなかで、着想・発想することが多かった。だから、やはり。オンライン会議では着想・発想が湧かないのかというと、そうではない。オンラインでも着想・発想が湧くという声も多かった。ここもポイント。オンラインならではの強みを活かして、オンラインの弱さをカバーしている企業も、人もいる。そことは、また別に話をしたい

むしろ、ここでおさえておきたい重要なことがある。会議参加者のなかに、半年ぶりや1年ぶりに参加した人が入っていると、思いがけない着想や発想が浮かぶ

それは会議だけではない
日常生活でもそうである

毎日一緒にいるメンバーよりも、日頃滅多に会わない人との何気ない会話から、アイデアが浮かぶことがある。これは、50年前の理論にもあった

50年前に、社会学者のマーク・グラノヴェッターが「弱い紐帯の強さ」を唱えた

「つながりが緊密な人よりも、弱いつながりでつながっている人の方が、有益で新規性の高い情報をもたらしてくれる可能性が高い」

note日経COMEMO(池永)「堺屋太一事務所で考えていること―新教養力考①」

営業マンだった時代、お客さまと交わした30分の雑談で、着想・発想・アイデアにつながったことがあった

実際に、自分の会社以外の人や自分の専門外の人と話した事柄、実際にその場に行って観た事柄が、心にピン留めしたことが多い。新しい、異なるモノやコトやサービスや経験に遭遇することで、自らの仕事のヒントになったことが多かった

心にピン留めされた事柄が教養

営業でお客さまをまわっているとき、わたしとの雑談を心待ちにしていただいているお客さまもいた。あまり商品・サービスの話をしなかったが、そんな雑談を喜んでいただいたお客さまたちが、わたしをトップセールマンにしていただいた

4.「それ、ほんま?」が伝わるか

…というような話を、オンラインで、友人と話をしていたら

「ちょっと前から、わたしが怪訝そうな顔していることに気がつきました?」

と言われたら、どうするか?あなたが一所懸命に話をしていることを、相手が怪訝そうに、たびたび首をひねって聴いていたとしたら、あなたは話の内容を修正するだろう

あなたが話をしているときに、相手が「うんうん」って反応してくれると、ちゃんと聴いてくれているなと思い、話が発展したり深くなったりする。しかし相手が関心を示さなかったり、腑に落ちていない雰囲気を感じると、自分の話が正しく表現できていないかもしれないのかな、わたしの考えが違っているのかなと

自問する

自問とは、相手の反応で、自分にかえってくること。自分に問いかけて、見直す、修正すること。

ツイッターで、よくミス・コミュニケーションがよく起こるのは、その反応が伝わらないことが原因のことが多い。たとえば、「え、ほんま」っていう文字で反応があったとする。文字にはイントネーションがないので、否定的にも肯定的にもなる。意味が全然違ってくる。絵文字が日本で発達しているのかそれもあるが、「ほんま」という言葉と、短く大きい声でスピーディに言う「ほんま?」とでは、テキストは同じだが、意味が大きく変わる。このような意味の取り違えが、ツイッターの世界で起こっているが、オンライン会議でも、このニュアンスが伝わりにくい。

5 オンライン会議はリアル会議の代替ではない

オンラインで講義をする。パソコン画面に50人、多い時は100人の顔が並ぶ。学生全員の姿をずっと見ながら、講義はできない。教室で対面講義をすると、全体が俯瞰でき、教室の空気が感じることができる。学生の何人かが「ふーん」という顔をしたら、理解されていないなと感じると、臨機応変に軌道修正できる

コミュニケーションは、言葉そのもの、言葉のトーンと頷きやジェスチャーなど雰囲気がセットで伝わるものだが、そうや、なるほど、へえーという場の反応が

オンライン会議では
感じにくい

ただ一度でもその人にそれまでに会っていたら、オンライン会議で電話でも、相手の顔が浮かぶ。相手の雰囲気が想像でき、話の伝え方が工夫できる。コロナ禍に入って3年経ったが、これまでは、オンライン会議であっても、会ったことのある人との会議が多かった

問題は、これから。今まで会ったことのない人たちとのオンライン会議が増えていく。会ったことのない人どうしの会議では、お互いのことが伝わらない、着想・発想・アイデアが沸きにくい。大切なことがある

オンライン会議は
リアル会議の代替ではないと考えること

オンライン会議を、リアル会議とはまったく違う会議のスタイルだと考えないといけない。では、どうしたらいいのいか?

オンライン会議には、想像力が必要で、仕種やジェスチャーや声のトーンに依存しない、新たなコミュニケーション法が求められる。「言葉」そのものの重要性が高まる。その方法論は、別途考えたい

ここで、教養が登場する。教養のある人、心にピンがいっぱい留めている人の話は、オンラインでのやり取りでも、相手に伝わる

心にピンがいっぱい留めている人の話は、アナロジーでもストレートでも、それを喩えとして出すだけではなく、それを念頭に置きながら、話を展開するので、意味が深く伝わったり、発想や着想を引き出せたりすることができる

これからのオンライン、リモート時代には、教養がより求められていく。知識をいくら持っていても、こんなことあんなことを知っているから、ああだこうだいっても相手には伝わらない。知識だけを話をされても、インスピレーションは湧かない。オンライン会議になると、よけい伝わらない。教養があるなしが、これからの論点となる

では、教養はどう身につけるのか。それは、次回「新教養考」の最終回で。

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