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小中学校の休校措置が入試改革に繋がる方向性

日本国内では集会型のイベントや会合が相次いでキャンセルになっているが、小中高校の教育現場でも4月までの休校措置が急遽発表されることになった。

直近に計画されていた学校イベントとして、卒業式を中止にする学校は多いが、入学試験だけは中止の影響が大きく、従来方式のまま決行する学校が大半だ。

しかし、集団感染のリスクが当面続くとすれば、来年以降の試験の実施方法も、従来とは異なる方式に見直していく必要があるだろう。そこで思い出されるのが、今年の大学入試センター試験から開始される予定だった、英語の民間試験導入が取り止めになったことである。

もともと、今回の入試改革では、大学入学共通テスト自体を年に複数回行うことで、従来の受験スタイルを改めることが検討されていた。現状では、学習指導要領に沿って高校の授業が進むペースよりも、先に入試テストが行われてしまうことの矛盾から、当面は見送りになったものの、年複数回受験の検討は続けられている。世界的な流れとして、1回のテストに人生の一発勝負をかける受験スタイルは古い。

一方、米国大学の入試制度では、民間のテスト機関が実施する標準学力テストの「SAT(Scholastic Assessment Test)や「ACT(American College Test)」のスコアが使われており、受験機会はそれぞれ年に6~7回ある。受験には年齢条件も無いため、米国の高校生は、個々のやる気や実力によって受験回数を増やして成績スコアを上げてけるのが特徴だ。

そのため教室の集団指導よりも、オンラインの個別学習が成長しているのが米教育ビジネスの特徴であり、その方向性は日本も波及していくことが予測されている。

【複数回受験制度の利点と問題点】

 米国の大学入試では、個別の大学が入学試験をすることは少なく、年に6~7回実施される全米標準テストの「SAT(Scholastic Assessment Test)または「ACT(American College Test)」の成績が使われる。そのためハイスクール11年生(高校2年生)の頃から、どちらかの試験を受け始めて、複数回の挑戦でスコアを伸ばしていくことが、実質的な受験勉強になっている。

この方式では、テスト1回の運に左右されることなく、地道に実力を伸ばしていくことが適正な合否判定に繋がるし、人生の大切な青春の時期を、受験勉強の時間だけに費やすスタイルから脱することができる。

そもそも、米国で標準テストが普及している背景には、受験生の経済格差によるハンディを是正する目的があった。国土が広い米国では、個々の大学が入試を行うと、遠方の生徒は高額の交通費を負担しなくてはならず、富裕層の子が有利になってしまう。そこで、全国各地で受験可能な標準テストが採用されるようになったのだ。

しかし、SATは1回あたり47.50ドル、ACTは50.50ドルドルの受験料がかかり、各生徒は大学の願書提出までに複数回の受験をするため、全体では年間10億ドルを超す市場になっている。さらに受験対策の教育サービスまでを含めると、その数倍の市場規模があり、経済的に豊かな家庭の子供ほど、エリート大学へ入学率が高いという、教育格差は是正されていない。

大学入試制度が民営化・電子化されていくことには一長一短はあるが、大学入学を目指す道も、高校には通わずに高卒認定試験にトライした後、大学受験を目指す者、推薦入学やAO入試を目指した学習のスタイルなど多様化してきている。その日の体調によっても左右される一回のチャンスのみで、人生の明暗が分かれてしまうような、従来型の大学受験制度には変革の余地があるといえるだろう。

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