Z世代が消費の中心を担う時代に愛されるブランドの作り方とは?【Minimal山下さん対談】
僕は最近、「これから先の時代、多くの人に愛されるハイブランドを作るのは難しいだろう」と考えています。
これからの消費の中心となる「Z世代」はSNSネイティブ。自分で情報を掴む力があるため、テレビや広告に頼らずに自分で自分に合ったブランドを探せる世代です。
そんな彼らに、「高い値段を払ってでも買いたい」と思わせるブランドを作るのは難しいように感じます。
また、テレビや広告の言葉より身近な人の意見を大切にするのもZ世代の特徴です。さまざまな情報に溢れた環境で育つZ世代は情報を選ぶ際、1番信じている「身近な人」からの意見・情報を大切にします。
つまり、これからの時代は情報が画一的でなく、そもそも「1つのブランドで大きく認知を広げる」ことが難しいともいえます。
では、Z世代が消費の中心となる時代に、多くの人から愛されるブランドとはどのようなブランドなのか。僕がリスペクトする「ブランド作りのプロ」と話し合ってみました。
***
今回お話をさせていただいたのは、Minimalチョコレートの代表・山下貴嗣さん。
Minimalチョコレートは、富ヶ谷に本店を持つクラフトチョコレートブランドです。山下さんのnoteはリアルなブランド作りの過程やブランドの在り方について書かれており、noteのフォロワー数は2万人を超えます。
僕自身も山下さんのファンであり、普段からnoteを読んでは考え方に感銘を受けてきました。
そんな山下さんとの対談のなかから、特に話が盛り上がった「ブランド作り」について、山下さんから得た学びや僕なりの考えをシェアできればと思います。
ハイブランドの価値は、Z世代がお金を手にするまでは変わらない
冒頭で僕は、「これから先の時代、多くの人に愛されるハイブランドを作るのは難しいだろう」と述べました。
しかし「ハイブランドが廃れるのか?」と言われると「これから5〜10年先の経済では廃れることはない」と考えています。
少なくとも、今の世の中で「ハイブランド=購入したいもの」という口コミが広がっている以上、Z世代にもそのイメージが広まる可能性があるからです。
既存のブランドが獲得しているファンは厚いはずですし、その牽引性は変わらないと思っています。
これに関しては、山下さんも、「今の消費の中心が40-50代」であることから同意見だと仰っていました。
「賞を受賞している」「高級品である」といったハイブランドへのマス的な評価は、40〜50代では根強く重視されています。
そんな彼らが消費の中心を占める向こう数年間は、お金をあまり持っていないZ世代よりも消費傾向が現れやすいため、各社のブランディング戦略や消費の在り方はそれほど変わらないのではないかとのこと。
たしかに、Z世代はまだ自分たちの価値観を消費行動に移せていないと考えています。たとえば「SDGs」はZ世代からの関心を集めていますが、近年のSDGs市場が伸びているかというと、そういうわけではありません。
少なくとも彼らがお金を手にするようになるまでは、日本国内の消費傾向はそれほど変わらないはずです。
20年、30年後に愛されるブランドは「専門性」が高い
とはいえ、これはあくまでも今後数年間の話です。
D2Cブランドが増えたり、すでにZ世代がインフルエンサーや家族・友人の話をもとにモノを買っていたりと、徐々に消費傾向に変化が現れていることを考えると20年、30年後には経済にかなりの変化が現れると考えています。
▼Z世代の消費傾向についてはこちらの記事でも触れています
また、2人とも共通して意識していたのは30年後にはかなり顕著になるであろう「貧富の差」の問題でした。少子高齢化と人口減少によってこれから広がり続ける経済格差は、消費傾向に大きな影響を与えるはずです。
そのなかで、「ブランド」に求められるものは何なのか。僕はこれからのブランドには「専門性」が求められると考えています。
なぜなら、これからの時代は「多くの人に愛される」一般的な商品を売るブランドか、「少数のコアなファンに愛される」尖った商品を売るブランドのどちらかのみが生き残ると考えているからです。
「浅い消費」か「深い消費」か
山下さんが「日本の消費は『浅い』と『深い』に二極化すると思っている」と表現されていましたが、これから先の時代、人は「安くて」「どこでも手に入る(=有名)」便利なものか、「高くて」「特定の場所でしか手に入らない(=有名ではない)」オリジナリティのあるものの2通りに消費が偏ると考えています。
また、「浅い消費」についてはこの中からさらに一定数に絞られ、寡占化すると考えています。(山下さんは「業界のNo.3以内が残っていくのではないか」と仰っていました)
人口不足による人手や消費者の減少を考えると、多くの消費者を相手にする「浅い消費」では、より一層生き残りをかけた競争が激しくなることでしょう。
逆にいえば、「深い消費」についてはこれからよりブランド数が増えていくはずです。深い消費においてファンを獲得するには、よりブランドに「オリジナリティ(専門性)」を持たせる必要があり、分類されるジャンルも増えることが予想されるからです。
実際にいま、さまざまな会社が「自分たちはどこにエッジを立てるか?」を考え、戦略を打っています。
これからのブランドは「浅い消費」で頂点にのぼるか、「深い消費」でオリジナリティを極めるかの勝負。山下さんは「Minimalは深いほうに舵を切るだろう」と仰っていました。
深い消費を極めるために、ブランドは「狂う」。愛されるブランド作りのポイント
「深い消費」に舵をきるのは、僕の経営する僕と私と株式会社も同じです。僕と同世代である「Z世代」に寄り添う会社、というニッチな市場でポジションをとっていきたいと考えています。
では、深い消費を極めるにはどうしたら良いのでしょうか?
Z世代がお金を持つようになる10〜20年先にも愛され続けるブランド作りには何が必要なのか、最後に山下さんに質問してみました。
愛されるブランドを作る、Minimalの秘訣
山下さんの経営するMinimalチョコレートは2014年創業。ここまでの道のりは「2歩進んだと思ったら、次の3歩下がる」ようなものだと言います。
しかし今、Minimalのチョコレートは多くのファンから支持を集めています。これは「着実に」「確実に」顧客を獲得し、愛されつづけてきた証拠なのではないでしょうか。
そんなブランドを作ってきた山下さんに「ブランド作りのコツ」を聞いてみると、キーワードとして上がってきたのは「狂う」でした。
「狂う」とは、ある範囲において圧倒的に深掘っていること。伝統、トレンド、クオリティその全てを網羅することで「ここに任せておけば間違いない」「ここなら絶対大丈夫」と第三者から長期的な信頼を得ることが、ファンを獲得し、長く愛されつづけるコツだと言います。
また、山下さんは「狂う」を2層に分けて考えていました。1層目は「業界において守らなければならない点」、2層目は「業界においての新しさ」です。
たとえば、チョコレートであれば1層目は「おいしさ」を指します。山下さんは、「業界において、ベーシックで絶対に外してはいけないところを無視して、新しさを追求すると、誰にも見てもらえなくなる」と仰っていました。
ぼくわたでは「Aika」や「HANARIDA」など、いくつかのブランドを展開しています。
そのなかで僕が考えていたのは、「ブランドは応援されることもあれば、一歩間違えるとこんなはずではなかったと批判されることもある。進化のポイントを間違えると誰にも見てもらえなくなるが、そのバランスをどうとるか?」というブランド作りの難しさでした。
「守るポイントと狂うポイントを自覚する」ことで、「適切に狂う」。今後長く愛されるブランドを作るうえで、意識していきたいポイントだと感じました。
***
最後にもう一度、これからの時代のブランド作りを考える上で必要なことをまとめてみます。
これからも、Z世代の消費傾向やマーケティングについて話していきますので、ぜひスキやコメントお願いいたします!
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。他にもこんな記事を書いているので、ぜひご覧いただけたら嬉しいです!
※このnoteは個人の見解です。
今瀧健登について
1997年生まれ。SNSネイティブへのマーケティング・企画UXを専門とし、メンズも通えるネイルサロン『KANGOL NAIL』、食べられるお茶『咲茶』、お酒とすごらくを掛け合わせた『ウェイウェイらんど!』などを企画。
Z世代代表として多数のメディアに出演し、"サウナ採用"や地方へのワーケーション制度など、ユニークな働き方を提案するZ世代のコメンテーター。
日経COMEMOではZ目線でnoteを綴り、日経クロストレンドでは、「今瀧健登のZ世代マーケティング」を連載中。