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ゴールにたどりつけなくなったニッポン―だからなんなの?(下)

こんな経営者がいた。企画書や稟議書を説明するために、さあ説明しようとすると、説明資料が裏返しされる。「論点を3つ挙げよ」と。そうされた説明者は想定していた説明シナリオが崩れ、支離滅裂な説明となる。経営者は、説明者がその提案の本質を掴んでいるのか、その案の現実性・実現性があるのかを確かめている

説明のあと、「そんなにええんやったら、あんたがしたらどうや?」と経営者。「私は案を考える立場なので、〇〇さんに責任者をしてもらおうと思っています」と提案者。「その投資に、会社の金ではなく、あんたの金やったら金出すか?」「……」「あんたが責任者をするといわへんかったら、判子をおさへん」—その案は否決された。案を考えるのは私、実行するのは誰かが増えた。考えるだけで実行しない人が増えた。世の中にいい加減が増え、物事が実現しなくなった


1 押し寄せてくる氾濫する情報に

H3ロケット発射が失敗した。JAXAは様々なところから、急いで成果をあげよと言われたのだろう。JAXAは、そう言った声に対して、急いでやらないとまずいと、前の失敗の原因の究明が不十分なまま、4ヶ月後に小型固体燃料ロケットのエンジン燃焼試験を行なって失敗した

だからなんなの?といえばよかった

そんなに急いでやる意味があったのか?前回の失敗の原因を掴んで対策をして実験したらよかったのに、それを許されないと思ったのではないか。失敗しなくていい失敗をした

いろんな人がいろいろな情報を発信して、いろんな組織・企業がいろいろな情報を発信するようになった。さらに生成AIがいろいろな情報を発信するだろう。正しい情報も正しくない情報も、有益な情報も一見もっともらしいが嘘の情報もいい加減な情報が、玉石混交に溢れる社会

だからなんなの?と自分で考える

2 騙される人と騙されない人

しかし自分で考えなくなった
誰かの話をすぐ信じるようになった

果物屋のお兄さんのパイナップルの口上を信じて買って不味かったら、お兄さんを責める。次は騙さない果物屋を探そうとする。だからずっと騙されつづける

あのお兄さんに騙された
次はこのお姉さんに騙された

他人に言われて決めるから、毎回毎回、騙される。他人に騙されて怒るなら、自分で決めたらいいが、そうしない

就職活動している学生に、この会社は給料がいいから、この会社は有名だから、この会社は世界市場をもっているから、この会社がいいよと勧められ、就活して、その会社に入社できた。数年後にその会社が倒産した。誰かに勧められて入ったが、騙された…

だからなんなの?

いい会社だ、給料がいい、働き方改革が進んでいる、技術力がある、知名度がある、有名だ—そう勧められて入ったら、そうではなかったと、あの人に騙されたとかあの会社の情報は、間違っていると詰る

騙されたとか間違った情報だったから失敗したと考えるから、その後も騙されたり間違った情報を信じる

「だからなんなの?」と考え、自分はこうと思うということを実行したらいい。そうしたら、失敗しても達成しなくても、騙されたとは思わない

3    自分で考えて、自分が行動する

「失敗しないように」と親が願う。子どもは、親が言った学校、就職先、結婚を選んだが、うまくいかなかった

だからなんなの?

「失敗しないように」という行動をとると、間違うことが多い。親である自分はこれで失敗した、だから子どもには失敗させたくない。あれはしたらあかん、これをやったらいいということは、だいたい失敗する

人任せにしないで、自分で決める。自分の進む道は、世の中を自分で観て話を聴き、自分ならばどうかと考えて、自分で決める。行動してダメだったら、別の道に変えたらいい

メタバースが流行っている、生成AIが流行っている、これこれが流行っている、話題になっている—それらをトレンドとして把握することはいいが

だからなんなの?と自分で考える

脱炭素・SDGs・ESG経営が話題になっているが、その背景も知らずに、みんなが言っているからと時代の空気・雰囲気で動く人・企業は多い。そんなバスワードに対しては

だからなんなの?

なんでや?ほんまか?と問い、本質とコンテクストを掴む。そして自ら考えて、自ら行動する。これをしなくなった人・企業が増えた

4    弱くなったのは、完遂する力

自ら考えてなにかを始めたら、ゴールにたどりつかないといけない。しかし完遂力が弱くなった。考えてなにかを決めて歩き出すが、ゴールにたどりつける人・企業が減った。着想したアイデアや発想したイメージをカタチにできる人・企業が減った。だから金に換えられなくなった。金に換えられないというのは

完遂しないこと

完遂するとは、「行ってきますと家を出たら、学校にたどりつく」というようなイメージ

たとえば学生ならば、雨が降ろうが、暑かろうが、時間がかかろうが、学校に着かねばならない。 しかし途中で雨が降り出したら、もういいよいいよ、今日は学校に行かなくてもいい、家に帰っておいでという空気に近年なった

また、なんとかゴールにたどりついた。結果が失敗だったら評価されない。なにかを作って求められるものができなかったら売れない。しかし目標は達成できなかったが、その失敗は次に役立つ

たとえば料理。新しい料理をつくりだしたら、料理を盛り付けた皿をテーブルに出すまで、完遂しないといけない。料理を食べたら、美味しくなかった。じゃ、次は美味しい料理をつくったらいい。しかし途中でやめたら、食べられない。大事なのは

完遂すること

じっくりと考えることは大事だが、行動しないとモノにならない。考えが深かろうが浅かろうが、踏み出すことが大事。そしてゴールに向かいだしたら、完遂することが大事

それが変わった。なにがなにでも完遂しなくてもいいのでは、無理してゴールにたどり着かなくてもいいのではという時代の空気が広がりだしている

社会的に甘くなっている

5   だからなんなの?―生存力を取り戻す

一所懸命に頑張ったからいいよ、時間をかけてよく検討してくれた、ご苦労さま—それでいいの?良いわけがない。検討したが駄目だったと途中でやめてしまうと、金に換えられない。だから

一歩踏み出すこと、やり遂げること

それが欠けだしている。「だからなんなの?」とは相いれない。だからなんなの?と言う人は、自分が決めたことはなんとしても完遂しなければと思っている。ゴールにたどり着けない人は、議論ばかりしているだけで、行動して実現しようとしない人

SNS時代になって、その風潮が広がった。他人に対して批評・批判は浴びせるけど、そんなに言うならあなたがしたらと言われたら、わたしの任ではないと答える。このような

言うだけの空気が蔓延している

なにかの話題が沸きあがったら、即座に情報を発信する。深く考えずに、瞬時に発信する。話題の多数派意見に同調・便乗して、イイねとリツートを狙う。こうして無責任な言葉がずらっと並ぶ

そのような付和雷同の情報を鵜呑みにしない。そうなんだと流されないようにする。「それ、ほんま?」「それ、なんで?」「だからなんなの?」と自問して、自分で考え、なにかを決め、動き出し、完遂する

会社も、そう。トップの命令は絶対、上司の指示は絶対なので、聞かなければいけないというが、すべてが正しいというばかりではない。「それ、ほんま?」「それ、なんで?」「だから、なんなの?」と問い、自分で考えるか考えらないか

上のいうやり方ではなく、自らでやり方を考えて行動して目標を達成する人がいたら、会社は評価しないといけないが、そんなことをしたら、組織から排除された

あなたは罰点と

だから上の指令が間違っていても、反論もせずに唯唯諾諾と従い行動する人が組織のなかで評価された。こうして上の命令に納得していなくても行動したり失敗したり、途中でやめたりする人が増えた

それだけではない。途中でうまくいかなくなったら、会社や上の悪口を言いだす。命令や指令を受けたときには自分の意見を言わず、うまくいかなくなりそうになったら自分を守るため上の命令・指令が間違っていたと言い出す

そういうことが増えている

戦争だったら作戦ミスは生命を落とすことがある。行政や企業での施策ミスは生命を落とすことはないだろうというが、国民や市民や従業員の人生を変えることがある

現在、なにをすべきかを考え、その達成イメージ・目標を達成する計画を考えて、それを完遂する—これが現代を生き残る方程式。目標を完遂しないと、方程式が完成しない。このなんとしても完遂する力が弱くなった

たとえば会社を定年退職した人の退職後のスタイルは、大きく二分される。会社を退職した後も自らやることを見つけていきいきしている人と、長く勤めた会社を退職して何をしたらいいのかを見つけられず何もしなくなっている人がいる。その差は何か?

生存能力の差

それと同じ。世の中の話題、トレンドに流されるのではなく、それほんまか?それなんでや?だからなんなの?と問いかけ、自分ならどうするかを考え、動き、それを完遂する。その差である。それは生物で言う生存能力


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