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注目の元J料理研究家、小泉勇人さんキャリア史をプロティアン理論で解説する('24法政ライフキャリア論)

1年限り、法政大学キャリアデザイン学部タナケン教授の中継ぎ登壇しております。新入生中心に300人近い「ライフキャリア入門A」では豪華ゲストさんに続々ご協力いただいており、一人目が元Jリーガー料理研究家の小泉勇人さん(28)。4月の100分間講義がショート動画にまとまり、小泉さんインスタに掲載されている ↓ ↓ ↓

小泉 勇人 / Yuto Koizumi on Instagram: "こちらも見てね↓ @zumi_meshi にて自炊記録やレシピ、栄養価の知識などを発信中 法政大学キャリアデザイン学部にてゲスト講師としてセミナーをしてきました。 まさかこんな経験ができるなんて一年前は想像もしていませんでしたが本当にありがたい機会でした。 引退を決断できた理由は?後悔しなかったか? との質問に対してですが、 引退を決断ことを後悔するかどうかは 「これからの生き方」次第だと思うし、引退して良かったとまではいかなくても、引退という選択が間違いではなかったということ、そしてアスリートが引退した後もどんな分野だって輝いていけるんだということを、いつも言っていることですが僕の人生を懸けて証明していければと思います。 そしてそれこそがアスリートの価値の底上げにもなると思うし、これから目指す人、引退する人にとっても夢や希望を与えられると信じています。 過去ではなく、今を、そして未来を生きる そして自分の想いを真っ直ぐに伝え続けることの重要性を本当に感じています。 これからも沢山のことにチャレンジして色々な経験をしたいし、どんなことだってやればできるんだよということを証明していきたいです。 露出の幅も様々な媒体で増やしていきますし こういったセミナー活動も増やしていければと思うので是非ご依頼ある方は気軽に連絡くださると嬉しいです。 「食を基点に多方面から人生を豊かに」 そして皆さんの人生に幸がありますように 株式会社en's life 代表取締役 小泉勇人 #小泉勇人 #セミナー #法政大学 #キャリア #セカンドキャリア #サッカー選手 #起業" 876 likes, 62 comments - yuto_koizumi.40 on April 16, 2024: " www.instagram.com

このnoteでは、彼のキャリアストーリーを、プロティアンキャリア理論を軸に解説しよう。


前提:キャリア理論とは

「私はこうして成功した」というキャリア情報は大量にある。

注意点は、多くは「その人にとって、その状況では、そうだった」という「バックミラーに映った個別の過去情報」であり、「場合による」ということだ。そこで、使いこなすためには、「自分との共通点と違いを見抜くこと」「自分と関係なさそうな話からも共通点を探し、活かすこと」が大事だ。すごい人の話なら特にそう。

そこで役立つのが理論。専門研究者が抽象化し、学界などで認められて、「キャリア理論」となる。とはいえ、キャリアにはそもそも正解がない(=多面的である)から、高校までのような「ちゃんとした勉強」は不可能。大学新入生〜特に文系の大学新入生には、このマインド変更がまず必要。

理論の1例として、「プロティアン・キャリア」理論を使い、小泉さんのキャリアを説明してみよう。プロティアンとは、変化に適合しながら、成長し続ける、という意味だ。ギリシャ神話由来の言葉。

中身は、ようするに、

1.自分を通す部分(Identity=自己認識)と、周りに合わせる部分(Adoptability=適応力)とを、場面ごとに切り替えてゆく。この繰り返しの中で、新しい自分がうまれ、適応力も上がってゆく(相互作用)

2.仕事を通じて得られるものは、まず①自分で稼ぐ力(ビジネス資本)、②他人のリソースを借りられること(社会関係資本)。③おカネ(金融資本)はその結果としてついてくるもの。この3つの資本をあわせた「キャリア資本」を最大化させることが、キャリア構築。

3,全体を通じていえるのは、「自己決定」すること。自分で考え、決めていくことが、人生全体の幸福につながる。

八田版の超訳です

「仕事での成功」と「人生全体の成功」とは、現実、必ずしもイコールではないが、傾向としてはまあまあ重なる。そうであるべきだ。そのために、キャリアに対して正しい軸を持つことは大事。その軸としてのキャリア理論だ。(7/22追記)

「アイデンティティ」と「アダプタビリティ」、その相互作用 〜小泉勇人さんのケース

小泉さんの「アイデンティティ」=自己認識は、人生のほとんどが、プロのサッカー選手として活躍することだった。そのために、努力を惜しまず、収入も自己投資に注いできた。

本当はゴールキーパー=GKは好きでなかったそうだが、大谷翔平と同じ193cmの長身、手脚も長い(派手なハイブランド服が映える)ので、鹿島のジュニアチーム時代からGK。高卒で鹿島アントラーズに入団、超エリートとしてキャリアを開始し

GKとは補欠にとって出場機会が極端に少ないポジション。「開幕戦に出た選手がシーズン通してフル出場」するのがチームの理想だ。鹿島となると日本代表GK曽ヶ端が不動で、出場機会がない。10年間、J1からJ3まで、「開幕日の1枠」を目指して全国を渡ってきた。プロとして絶対に活躍したい、というアイデンティティの現れともいえる。このプレイヤー時代の話もおもしろいのだが省略。

コロナ禍、ヒマで、自炊料理のインスタ発信を始めると、Jリーガーらしからぬ綺麗な調理が、最初はチームのファン内部で話題になり、2ヶ月くらいでサッカーと無縁な料理クラスタにまで拡がる。この変化適応力が「アダプタビリティ」だ。

このときのファン拡大は、最初「あの小泉選手は料理もうまい!」から「よい料理アカウント!え?現役Jリーガーなの?!」と驚きの方向が逆になった形だ。
このファンたちは、小泉さんのキャリア資本を形成する「社会関係資本」といえる。その後押しにより、料理スキルという「ビジネス資本」をほぼゼロから積み上げてゆく。(キャリア資本の話はあとで説明)

とはいえ、あくまでも「アイデンティティ」はサッカー選手だ。

1つ興味深いのは、料理アカウントが人気になると、「自分は認められている」という気持ちの余裕からか、サッカーが楽しくなってゆく。チームとの関係もよくなってゆく。彼のアイデンティティの中に「楽しむサッカー」という要素はこれまではなかった。料理という(アスリートにとって栄養は重要だが)失敗しても構わない、という利害関係のない趣味レベルの領域で、自信を付けたことの効果があったようだ。

これは、「アダプタビリティ」を発揮することで、「アイデンティティ」がアップデートされた、という「相互作用」の現れ、といえる。

チーム内の評価も上がり、出場が増え、ついに今年は正GKとして開幕を!という時期にコロナ罹患、チャンスを逃してしまう。なおチーム、ヴァンフォーレ甲府はこの年にJ2ながら天皇杯で優勝している。

23年2月に引退を決め、料理に専念すると、そこから高速展開、24年7月までに大手出版社からテーマの違う料理本を4冊、NHK全国放送などにも出演し、農林水産省でも講演や広報誌登場など(7/24公開)。(23年11月の計1.2万字のインタビュー が詳しい。講義予習教材)

こうして、アダプタビリティを発揮しきった結果、新たに、「元Jリーガーの料理研究家」という新アイデンティティが爆誕。単なる料理の人ではないわけだから、アスリートのキャリア支援など、さまざまな視点での活動も守備範囲になってくる。
つまり、新たなアイデンティティが、新たなアダプタビリティの発揮(=チャレンジすること)につながっている。これも「相互作用」のあらわれだ。

つまりは、自分軸と、他者軸との切り替え。6月noteでも解説した。

「キャリア資本」=カネを稼ぎたければ、いきなりカネを追うな

「資本」とはビジネスの元手、農業でいう種。

投資とは、「金融資本」=おカネを別の形(会社の所有権=株式など)に変換すること、ともいえる。転換にはリスクが伴うが、大きく増やすチャンスともなる。

注意点、いきなりおカネを稼ぎにいこうとすると高確率で損しがち、だと僕は思っている。まずは「キャリア資本」を高めにいくべきだ。キャリア資本とは、流派にもよるが、ここでは

「キャリア資本」の3種類
ビジネス資本=働いて稼ぐ能力(自分の能力)
2 社会関係資本=人とのつながり(他人の能力)
3 経 済 資本= 💰💰💰(自分の独占所有物)

の3つとする。キャリア形成とは、こららさまざまなキャリア資本を別の形に変換していくことの連続と、プロティアン理論ではとらえる。

小泉さんのキャリア資本についていえば、
① Jリーガー時代:サッカー選手としての能力=ビジネス資本、そのファン=社会関係資本
② 料理始めた頃:サッカーファンが第一の、普通の料理好きインスタユーザが第二の、社会関係資本として作用する。なお料理スキルはビジネス資本としては不十分だったと思われる(ライバルが多すぎるので)
③ 引退後:料理についてのスキルが、ビジネス資本として成長。増えたファン層=社会関係資本がいろいろなチャレンジを可能とする

といった変化をしている。

この考え方の特徴は、おカネ以外の部分に注目すること。投資で成功したければ、まずは「ビジネス資本」=自力で稼ぐ力を高めれば、損をしても問題ないおカネ、となり、正しいリスクを取りにいくことができる。投資詐欺・悪徳商法系は、このリスクを正しく認識させない物が多い。

他人の能力・リソース=つまり「社会関係資本」を活かすこと、も重視する。これは単なる「人脈」=知り合いが多いだけでは不十分。「自分からの提案力」とセットではじめて活きるよ、と先月のnoteで書いた:

逆にいえば、「他人からの提案に対して素直に乗れる行動力」とセットで、社会関係資本は活きる

プロティアン理論では、このように考えることで、後づけのキャリア分析だけではなく、「将来の組み立て方」のヒントを提供してくれる。

「キャリア自律=転職」では な い

プロティアンの最大の特徴は、「個人のキャリア自律」=会社に依存せず、自らが自分のキャリアを律する、という価値観にある。

自律とは、転職することではない。「転職する実力があり、するかしないかは自分で決める」ことが真のキャリア自律だ。

理想論をいえば、働く人の幸福感は、自分で選択した、という自己決定とつながっていると思う。終身雇用の場合でも、自分で選択した結果として、優良な職場で働き続けることによって、幸福感はより大きくなる。

それは理想論ではあるが、現実の日本企業も、こちら側に変化している。

以前の価値観なら、日本の終身雇用を前提にした会社組織とはなじみにくい、という見方もありえた。しかし日本版の提唱から5年で、、著名大企業のあいだで急速に普及している。「日本の人事部」HRアワードも受賞。このスピードはすごい。

なぜ今、人気なのか? 「変化の時代」が日本の大企業人事でも始まったからだと思う。後押ししているのは、これから進行する超ヤバい人手不足社会だ。

2024年からの日経ニュースだけで、

  • 新卒初任給の格差。富士通は月31.5〜38.5万円(年600万円)、パナソニックIT部門は最高月6万円を加算(6/20-21)

  • アルムナイ採用=若手退職者の再雇用が伝統的大企業で急拡大中(4/20)

  • 定年・役職定年を廃止する動き(政府「新しい資本主義実現会議」(2/27)

  • 「管理職の給料安すぎ説」も強くいわれるようになった(上昇確実だと思う

新卒採用での初任給格差は、長期インターンシップで実力を見定めることにより担保されている(7月note参照↓

出戻り歓迎とはもはや平成までの日本企業の常識破壊だ

このように「できる社員への待遇向上」が進んでいくと、そうでない層との格差は拡大していくだろう。

つまり、「安定した大企業」はあるとしても、「安定した大企業への就職は、自分自身の安定を保証してくれない」。今でも結構そうだと思うけど、昨今のニュースはその加速を示していると思う。

そもそも、プロティアンがアメリカで提唱された1976年とは、アメリカ社会が自信を失っていていた時期。映画『ロッキー』はこの自信喪失をテーマとした映画であり、その公開年が1976年だ。社会の変化という巨大な力に対して、個人は無力なのか? どう対応すればいいのか? その方法論として登場した時代背景があると思う。

現代日本バージョンは、タナケン教授が2019年に提唱した。翌年にコロナでオンラインワークなどが一気に普及するなど激変があった。コロナが明けたらすさまじい人手不足社会が始まった。この中で、昭和以来の岩盤のごとく硬かった日本企業文化が、激動しはじめている。

キャリア理論にはいろいろあり、それぞれ特徴=背景・目的・向き不向き…がある(参考 ↓

が、2024年の日本、という時代環境で、最も推せるのがこれ。

また新しい理論が登場したときには、「プロティアンとの共通点と違い」をみていくことで、理解が進む。知識とは積み上げによって効果を出すものだ。

参考情報

日本企業の横並びだった初任給の格差は、たとえば:

そもそも、給与を上げられる会社、そうでない会社、との格差も開く。給料を上げられない会社から上げられる会社への転職ができれば、働く側にとっては、問題ない。

管理職は損!という声も強いが、どう考えても、管理職こそ待遇改善が進むだろう。(管理職の仕事内容の負担軽減もありうるが)

ちなみに小泉さん最新刊『心も体も強くなる 成長期応援!ぐんぐんレシピ』身長193cm(大谷翔平と同じ)の彼ならではの説得力もあるが、栄養士さんとかのチームも組んでいて、専門性をしっかり確保してくる。適応力=アダプタビリティが高い!

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