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2024年の複業(副業)、これを読めば丸わかり!

株式会社Another works代表の大林です。複業したい個人と企業・自治体を繋ぐ総合型マッチングプラットフォーム「複業クラウド」を運営しています。

日経COMEMO KOLを拝命した2020年から毎年続けている1年の振り返りと次年度のトレンド予測。今回がシリーズ第5弾となります。

2024年を一文でまとめると、複業(副業)の法整備や国の制度設計、支援が進み、複業(副業)がしやすい社会へと進んだ1年でした。本記事では、押さえておくべき2024年の複業(副業)重要トピックをまとめていますので共に1年を振り返っていきましょう。

▽2023年の複業(副業)まとめはこちら


法整備や国の制度設計が進んだ2024年

昨年度の未来予測でも記載したとおり、2024年は複業(副業)に関する法整備や国の制度設計が進んだ1年となりました。国が複業(副業)推進をスタートしたのは2018年です。2018年にモデル就業規則に副業・兼業に関する事項が追記、副業・兼業の促進に関するガイドラインが発表されました。昨年度である2023年には国が補助金をスタート、先行してフリーランスに関わる制度の見直しが進み、労災保険の加入対象者を拡大するというニュースが話題となりました。

そして2024年、複業(副業)をさらに加速させるべく、2つの制度と1つの制度検討が進んでいます。まず「フリーランス新法」の制定です。2024年11月1日からフリーランスと発注事業者の間の取引の適正化と就業環境の整備を目的としたフリーランス新法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が施行され、フリーランス事業者が安⼼して働ける環境を整備が進んでいます。

副業・フリーランスは働き方を自分の裁量で自由に決められる一方、収入が不安定になるだけでなく、報酬未払いや不当な減額に関するトラブルが多く寄せられていました。そこで働く個人を守る制度がこのフリーランス新法です。国内のフリーランスは約257万人が対象となる上、個人事業主として働く副業パーソンも対象となっています。

フリーランス新法では、企業に「書⾯等による取引条件の明⽰」や「報酬⽀払期⽇の設定・期⽇内の⽀払」など義務や禁止事項が示されました。中には罰則規定も設けられており、違反すると50万円以下の罰金を科される可能性があります。国として多様な働き方を選ぶ個人を守る動きが着実に進んでいるのです。詳しくはこちらのnoteでも解説しています。


次に、「地域活性化起業人」制度に「副業型」が追加されました。地域活性化起業人(企業人材派遣制度)は、民間企業と自治体が協定を締結し、三大都市圏に所在する企業等の社員が一定期間地方公共団体に派遣される総務省が実施している制度です。派遣元企業に対する負担金など起業人の受入れの期間中に要する経費を上限年間560万円/人まで負担し、地方圏へのひとの流れを創出することを狙っています。

しかし、企業と自治体が協定を結ぶ必要があったり、月の半分以上を自治体現地で働く必要があったりと制度利用に対して高いハードルがありました。そこで今回追加された「副業型」です。従来ハードルが高かった勤務時間が軽減され、月4日・20時間以上を自治体業務に充てることで利用できるようになりました。また、自治体現地での滞在日数は最低月1日企業に所属する個人と自治体が協定を結ぶことで制度利用が可能となり、より参加しやすい形となりました。

DX推進や広報公聴、移住定住の促進など新たな地域課題が勃発する中、中には職員だけでは解決できない専門的知見を必要とされる課題が多くあります。本制度は課題に対して民間のプロ人材を仲間にすることで、より早く、より大きな成果を創出することが期待されています。

そして現在、厚生労働省では労働基準法などの見直しに向けた検討が進んでいます。現行の制度では個人が(雇用契約を結びながら)副業をする際に、所属先の企業での総労働時間の把握・管理ならびに本業と通算した労働時間が1日8時間・週40時間を超えた時には割増賃金を払うことが求められています。しかし、この制度は副業を解禁し、従業員が副業を実践している企業の負担が大きく、副業解禁や副業促進がなかなか進まないという現状がありました。

そこで現在、厚生労働省の有識者研究会では、会社員が副業をする際に労働時間を通算して割増賃金を支払う仕組みの廃止検討が盛り込まれた議論が進んでいます。企業負担を減らし、個人の副業実施を促進、より労働力の移動やスキルシェアリングを加速させる狙いがあります。まだまだ長時間労働の防止や健康管理には課題が残りますが、この法整備は進んでいくでしょう。

人材確保で焦る企業・行政と複業(副業)

日本の労働力人口は今もなお、減り続けています。13年連続、人口は自然減、2035年時点の労働力不足は23年の2倍の384万人に達するという推計も出ています。また、日経電子版で引用されている帝国データバンクの調査によれば24年4〜9月期の「人手不足倒産」は163件と上半期で過去最多を更新したといいます。人が足りないが為に企業が倒産していくのです。

実際、複業(副業)が労働力強化につながる可能性を示すデータがあります。日経電子版で引用されている内閣府の調査によれば「労働時間を増やせる」と考える人は280万人いるといいます。重ねて、正規雇用者で副業をする男女は全ての年代で1週間の平均労働時間が8〜13時間ほど、副業をしない人より長いといい、複業(副業)の実践が企業の人手不足を解消する一助となります。

また、個人の複業(副業)希望者は増え続けており、副業の意思があるのにも関わらずしていない理由の50%以上が「本業で認められていない」ことにあると言います。本業で複業(副業)が認められれば複業(副業)人口はさらに増えていくのです。

そこで企業が進めているのが複業(副業)解禁による人材確保です。三井住友銀行では2024年10月より約3万人の全従業員を対象に社外での副業を認めました。事前に申請し承認を得ることが前提となっていますが、月20時間まで他の企業との雇用契約を伴う副業が可能となります。これまで同社では副業は60歳以上など一部の社員にのみ認められていた制度であり、全従業員を対象としたケースとしては先行事例となります。また、川崎信用金庫でも人材採用・定着を狙い、所定労働時間を8時間から7時間45分に短縮、副業を一部解禁しました。

実際、若手世代や学生の副業希望者数は増加しています。就職情報サイトによる20歳代を対象にした調査では、副業したいと答えた人は8割を超え、スキル向上なども目的に含まれていたといいます。

また、日経電子版にも取り上げられていた人材大手の調査によれば、副業を前向きに検討する学生は4割で、金銭的に苦しくなった場合に副業をしたい人を含めると7割を超えています。別の記事では「副業を認めてくれることも含め一人ひとりを認めてくれる社風などが入社の決め手になった」という生の声も紹介されており、副業を含む多様な働き方が選択できるか否かが就職の意思決定基準の1つとなりつつあります。

多様な働き方の促進・複業(副業)の解禁は、2024年公務員にも広がりを見せました。職員の離職抑制は大きな課題となっていた大阪府では2024年度から庁内副業制度を開始したといいます。庁内副業を通じて、モチベーションの向上を狙い、若手の離職を防ぐ狙いがあるといいます。この庁内副業制度では最大で勤務時間の20%程度、他部署の仕事を経験できるといい、若手を中心に副業がスタートしたそうです。

また、山梨県では公務員の離職防止・多様な働き方に向け、県職員の副業を解禁する方針を固めたといいます。公益性の高い活動に限る副業解禁ですが、地域の社会貢献活動への参加を促す効果があります。

複業(副業)はコア業務こそ活きる

2024年、複業(副業)における業務範囲がより広がりを見せています。従来は企業のノンコア業務を任せるケースが多かったものの、現在はより企業の経営や事業推進に関わるコア業務を依頼する企業が増えています。日経電子版でも、政府が2018年に副業容認を打ち出した当初は補助的な作業が多かったものの、新規事業の立ち上げなど基幹業務に広がっていると見解を見せています。

我々が運営する複業したい個人約9万名と2,000社以上の企業を繋ぐ複業マッチングプラットフォーム「複業クラウド」では、即戦力かつコア業務を求める企業の求人が多数並んでいます。営業を例にあげると、企業の営業戦略立案、営業数値分析基盤の構築、他にも商談を担当するフィールドセールスの募集など多岐に渡ります。また、新規事業の立ち上げ支援や経営者・CXOの壁打ちなどエグゼクティブクラスの複業人材を募集するケースも珍しくありません。

背景には、正社員採用の難易度がさらに上がっていることが挙げられます。オンライン化に続き、急速なテクノロジーの発展に伴い、企業はより専門的かつ優秀な即戦力人材を確保したいと採用市場は活発化しています。しかし、同じことを考える企業は多くいます。大手企業であれど、なかなか正社員を採用することができないのです。

そこで複業(副業)です。本業を続けながら、つまり退職手続きや大きなキャリア転換のリスクなく働くことができる複業(副業)であれば、個人にとっても大きな決断を迫られることがありません。記事では経営企画という経営の中枢を担う部門での複業(副業)募集にフォーカスし「経営企画の正社員採用は売り手市場なので、副業やフリーランス人材の活用が増えている」と紹介しています。

行政においてもハイスキルな人材を複業(副業)で迎え入れる動きが活発化しています。神奈川県ではNTT東日本と共に、行政のデジタル化や人材育成にに向けた連携を開始しました。民間のIT人材と協働することで県職員のレベルアップを図るといいます。

我々も日本全国47都道府県200自治体以上の行政へ民間複業人材を登用し、行政課題の解決へ伴走しています。実際に定量的・定性的な成果が多く出ていますが、特に多い行政からの反響が「行政職員のスキルアップに繋がりました」というものです。即戦力人材の登用は、人材確保になる点は前提に、行政課題の解決だけでなく、共に業務を推進する職員の新しいノウハウの獲得となり、さらには働く上での刺激となります。一石二鳥、三鳥にもなりうるのが即戦力な複業(副業)人材の受け入れです。

ズバリ2025年の複業(副業)はどうなる?

ここまで2024年の複業(副業)重要トピックをまとめてご紹介してきました。フリーランス新法の制定や副業型地域活性化起業人制度の開始など国の制度設計が進み、企業も複業(副業)解禁や募集における捉え方に変化がありました。

2025年は、複業(副業)ができる/しやすい環境整備が進み、複業(副業)実践率が上がる1年になると予測しています。現在、複業(副業)希望者と複業(副業)実践者には大きな乖離があります。複業(副業)解禁企業は50%を超えている一方、複業(副業)実践者は7%程度にとどまります。

そもそも本業が複業(副業)を解禁していない残りの5割の企業が理由であることはもちろん、解禁していたとしても限定的であったり、上司からの理解が得られなかったり、狙う案件と出会うことができなかったりとさまざまです。しかし、現在進んでいる「副業の割増賃金・労働時間通算ルール見直し」や採用難に伴う多様な働き方の推進は確実に複業(副業)がしやすい環境整備へと繋がっていきます。

我々の使命は「挑戦するすべての人の機会を最大化する」ことです。この挑戦機会を「複業」を通じてつくり続けていきます。皆さんが複業(副業)ができる環境になったときに1歩踏み出せる環境と、本当にやりたい仕事を複業(副業)でできるような案件機会を最大化することが我々の使命です。

2025年も最前線で「複業の社会実装へ」邁進し続けていきます。


大林 尚朝 / NAOTOMO OBAYASHI
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