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コミュニケーションは必要なのか?—新仕事考(中)

企業の人事研修課長と、研修の内容の打ち合わせをした。自らも受講生でもある課長の悩みが深かった。なにが課題かと訊くと、「部下とのコミユニケーションに悩んでいる。話が通じない。どうしたらいいのだろう」と。実際、研修をしたら、部下とのコミユニケーションを課題にあげる課長が圧倒的だった

1  意味わからんでも訳わからんでもいいのではないか

会社のなかで、コミュニケーションに悩んでいる人が多い。
それは、今に始まったわけではない。世代間の価値観の違いは、昔からあった。同世代や同学年ならば話が通じるが、親と子、上司と部下の対話で、お互いの話が意味が通じない「意味わからん訳わからん」が発生している。会話が成り立たない。これは、話し手が語った「暗号」(エンコーディング)を聴き手が「解読」(デコーディング)できないことからくる「意味わからん訳わからん」である

話し手と聴き手の持つ「暗号表」がちがうことが原因のひとつ。同世代ならば持っているだろう共通的な体験・経験にもとづく「暗号表」と他世代の「暗号表」の違いが、近年広がっている。急速に社会実装された情報技術が生みだした社会様式の体験の違いによって、世代間の「暗号表」の乖離が大きくなっている。最近のZ世代に関する記事、マーケティング情報の多さが、それを映している

どういうことか?
かつて、30年くらい前までは、会社に入ってくる社員には、白紙の人が多かった。会社は、その会社なりの型枠をつくり、社員を枠におさめていった。会社での体験が白紙に墨が染み込んでいくように、社員を「会社文化」に染めていった。白紙の人に対して、同じ体験をさせ、段階を踏んでいけば、会社独自のコンセプト・価値観がつくと考え、それを前提に、会社は社員を管理・育成してきた。それが、いわゆる高度経済成長モデル、昭和モデルだった

現在の会社には、かつてのような白紙で、会社に入ってくる人は少ない。多くは、それぞれの価値観をもち、「良い会社」に行きたいという思いで、教育を受け、就活して、会社に入った。そんなかれらは、場合によれば、先輩よりも、情報リテラシーのみならず、知識や精神基盤が高いことだって、あり得る

かれらは、そうして就職した会社が、自分的に、世間的に、経済的に、良いのか納得していない。ひとつの選択肢として、今の会社で働いていると思っている人もいる。いろいろな体験や価値観を持ったかれらに、組織リーダーがああしろこうしろと教えるというスタイルがおかしくなっている。教えるだけではなく、教えられることもあるかもしれない。そういう現状認識ももつことが大事である

その多様な社員が集まる会社のなかで、組織リーダーは「コミュニケーション」を取ろうとしている。その「コミュニケーション」とはなにか?報告・連絡・相談(ホウレンソウ)と混同していることが多い

業務上の「報告・連絡・相談」は
ビジネスで当たり前の仕事そのもの。
それをコミュニケーションとは言わない

30年前からのIT化でネットワーク組織構造に変わり、情報の流れが「上から下へ」から「必要な人が受発信できる」に変わった。にもかかわらず、日本は組織的に情報活用して仕事が進めるのではなく、人間関係で仕事が進めることから抜けられなかった。だから新入社員だけでなく、中堅社員にも、リーダーにも、「報連相」教育が繰り返された。それくらい、情報の流れがスムーズではなかった。阿吽の呼吸だとか忖度だといい、きわめて属人的に進めた。仕事は人間関係が大事だと思い
だから会社にはコミュニケーションが大事
だといってきた。仕事帰りの一杯飲み・飲みにケーション・親睦会が管理職・管理監督者の大事な仕事と考えてきた。

note日経COMEMO(池永)「あなた、いらない」と言われないため

報連相とコミュニケーションは違う

上司と部下、お互いが理解できないというが、そもそも理解できるものだろうか?理解できなくても、理解しなくてもいいのではないか?

…と考えることが大事

リーダーは、部下との「コミュニケーション」に悩んでいるが、部下も困っている。リーダーも部下にとっても、仕事において大切なのは、報告・連絡・相談を機能させることであって、人間関係を構築するための「コミュニケーション」ではない。必要ならば、報連相をする。それを徹底・機能する組織を求めることではないか


2 会社のチームワークの真実

組織のコミュニケーションの基本は1対1だが、組織のなかのコミュニケーションは、前回も触れたチームワークとの関係を考えないといけない。チームワークの現場は、誰かが不作為となっていたり、働きが足りなかったり、ミスしているのをだれかが挽回しょうとしている絵が浮かぶ。そのチームのなかで、「コミュニケーション」を行おうとしている


あるチームが新たな事業を取り組んでいる。誰かが脱落しそうとなると、それを励ます人がいたり、カバーする人がいたり、いろいろな失敗が繰り返されるなか、何とかゴールした。ドラマならばとても感動的だが、実際の会社のなかで語られるチームワークは、このような、だれかの不作為、不出来とか失敗とかを補っていることが多く、純増ではなく現状維持である

10人が10人の力を合わせて、よいしょ!と持ち上げるチームワークは大事。これはいい。しかし現実の世界は、10人のうち4人くらいが仕事をしていなくて、残り6人がその4人分を補って持ち上げている

そんなシーンの現場が多い
それを、チームワークと言えるだろうか?

チームワークという抽象的な言葉に悩むのではなく、チームメンバーに目標・ゴールとその計画を伝え、チームメンバー各自にチームがゴールを達成するためのその役割・分担を明確にして、それぞれがそれぞれの分を果たせるよう伴走して、目標を達成する一連の活動を実行することがリーダーの仕事ではないだろうか

今回は会社のコミュニケーションとチームワークは必要なのかについて、考えてきた。明日の最終回では、会社の組織とはなにかを考えていきたい


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