タイパ消費とか、ストック消費とか。話題の5つの消費論について語る
「〇〇消費」って言葉、最近一気に増えましたよね。
「イミ消費」や「トキ消費」などは以前からありましたが、いまは「タイパ消費」「界隈消費」など、これまでとは少し違った系譜の消費論が出てきています。
ということで、今回は最近話題の5つの「〇〇消費」について、Z世代マーケター目線で切り込んでみます。
1.タイムパフォーマンス(タイパ)消費
タイパ消費とは、「時間効率」を重視した消費行動のこと。
・徒歩で15分の距離をタクシーを使って3分で移動する
・デリバリーを頼んで料理するコスト・時間を削減する
・本を読むのではなく要約サイトを見る
…など。これは特に、Z世代の中で支持される消費のあり方です。
例えば、LINEが以前に行った「Z世代がこの1年で買うようになったものは?」という調査では、3位に「冷凍食品」がランクイン。僕のまわりにも、Uber Eatsやミールキットを買っている人は多くいます。
以前、「Z世代はタイパ重視」という記事を書きましたが、傾向はこんなところにも現れているようです。
2.エシカル消費(倫理的消費)
エシカル消費は、消費者庁によると、「地域の活性化や雇用なども含む、人や社会・環境に配慮した消費行動」と示されています。
・地元の産品を購入する(地産地消)
・リサイクル素材やオーガニックコットンなど環境に配慮した商品を購入する
・労働者に公平な支払いをするフェアトレードの製品を買う
・被災地の商品を購入する
などが挙げられますね。
最近では、冬でも着込む必要がなかったり、雪がなかなか降らなくなったりと、年々気象変動の影響が大きくなってきています。特に若い世代では幼い頃から気候問題が身近にあり、教育にも力が入っていることからエシカル意識が高いといわれています。
しかし実のところ、「若者とエシカル意識」の関係には落とし穴があると考えています。エシカルなものにはお金がかかるものが多いからです。
Z世代も含め、若者はお金をあまり持っていないため、関心はあれど安いものを選んでしまう可能性があります。「若者はエシカルに興味がある」と「若者はエシカル商品を買う」はイコールではないと覚えてください。
3.メリハリ消費
メリハリ消費とは、自分に興味のあることにはお金を惜しまずに消費し、興味のないことについては徹底的に節約すること。こちらもZ世代によく見られる消費の傾向といわれています。
・たまの贅沢として高級なお菓子を買う
・好きなアーティストの描いた絵なら、いくらでも出す
・旅行では我慢をせずにお金を使う
…など。
Z世代は「飲食にお金をかけない」と言われることも多いですが、好きなもの・価値のあるものにはお金を徹底的に使います。
また、Z世代は、経済的豊かさを一度も経験していない世代でもあるので、投資や貯蓄をしっかりと考えている方も多くいます。そのため、お金を使わない部分を徹底しているのです。
4.エモ消費
エモ消費とは、商品を買ったことで得られる世界観を軸とした消費行動のこと。「エモ=経験×ハッピー×コミュニケーション」という感情から生まれる購買を示します。僕がもっとも着目している消費論です。
・クラウドファンディングやふるさと納税など社会貢献や地域支援に参加する
・普通のコーヒーより、昔訪れたブラジルにいたAくんが作ったコーヒーを買う
・友達の家に泊まった際に使ったシャンプーの香りに感動して、購入する
…など。
こちらのnoteでも詳しく解説していますが、ポイントは、エモ消費は「直感的」でモノを買う考え方ということです。
今、世の中は何をするにしてもまずは論理より感情が先行する傾向があります。
もともと人間は最初に直感的思考でモノを捉え、その後に論理的思考で考える生き物だと言われています。(行動経済学において「システム1」「システム2」と呼ばれる考え方です)
これまでは一つひとつの情報やモノにじっくりと向き合える時代だったため、論理的に物事を考えてから行動に移せたのですが、良いものが溢れると同時に、それを広める情報も飽和し始めたため、物事を全て論理的に判断するのが難しくなってきたのです。
僕がエモ消費に着目しているのには、こういった観点があります。
エモ消費の代表「界隈消費」
ちなみに、最近話題の「界隈消費」もエモ消費の代表的な事例だと考えています。
界隈消費は簡単にいえば「“好き”や“推し”が買う理由に繋がる」消費行動。まさに「ハッピーな共感」です。
自分の好みや趣味嗜好に合ったものにお金を払うため、一人あたりの客単価が高く、商品を差別化するうえでも分かりやすい考え方のため、今後も界隈消費は広まっていくと思います。
こちらの記事で詳しく解説しているので、興味のある方はぜひご覧ください!
5.ストック消費
SNSが情報収集の主流になった今、注目されているのが「ストック消費」。
気になった商品やサービスについて、いいねや保存、またはスクリーンショットによって情報を“ストック”することを指します。
おすすめ商品などを厳選して紹介する「まとめサイト」や「まとめ動画、投稿」のインプレッション数が伸びるのも、ストック消費の例ですね。
デジタルネイティブであるZ世代は、基本的に対象の商品やサービスについての情報をSNSで集めることが多いです。基本的な情報はGoogleやYahoo!などの検索サイトで調べ、口コミや実際の写真などをInstagramを中心に収集します。
しかし、一度見てすぐに購入を決めるわけではありません。気になれば目を留めて情報を保存し、後で見返すことで初めて購入へとたどり着くわけです。
つまりここで大事なのは、ストックしたものに対してもう一度目を留めてもらうこと。見返してもらうための工夫か、接触回数を増やすために、情報を多く流すことも重要になってくるでしょう。
なぜいま、こんなにも消費論があるのか?
そもそも、こんなにも消費論が増えた背景には、2つの要素が挙げられます。
1. インターネットが普及してカスタマージャーニーが多様化した
2. SNSで情報が拡散されるようになったことで、1つの商品に対して複数の魅力(欲しい理由)を見せやすくなった
時間や場所に囚われずに購買ができるようになったり、シャツを一枚買うとしてもSNSでさまざまな着こなし方を知れるから、欲しい理由や用途が変わるようになったり。今は、購買する機会も理由も増えているのです。
そのため、きっとこのnoteを読んだ方の中には「最近キテる消費論を使ってマーケティングを考えたい」という方もいると思うのですが、1つの消費論だけで考えないことをおすすめします。
それぞれの消費論を自分たちの商材に当てはめて、どのような選ばれ方をするのか考えることで、ターゲットを選定してみてください。
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