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何のためにマスクをしていますか?

 脱マスク記念日とも言うべき「3月13日」からほぼ1カ月が経過しましたが、当初の予測通りの記事が掲載されました。先月の記事でも明記したことですが今回も「マスクをし続けることに疑義を唱える」ということではなく、「マスクは要らない」ということでもなく、さらには「声掛けする」までのことでもなく、コロナ前と同じような位置づけに戻しませんかということが前提のオピニオンですのでご了承のうえお読みください。

 繰り返しますがマスクをする主たる意義は「咳エチケット」です。自分が体調の悪いとき、咳をしているときなど、もし病原体を持っていたら他の人にうつしてしまうことを避けるためにするものであり、なければハンカチや袖で覆うということで代用が可能です。そもそも体調の良いときや他に人がいないところなどでは必要性は低いという認識だったのが、新型コロナは症状の出現する数日前から感染力があるとの知見が判明したので、一時期に推奨された「ユニバーサルマスキング」と言って症状がない人でもリスクの高いと考えられる場面ではマスクをするという概念が現在も定着しています。しかし現在のオミクロン株では潜伏期間も短くなったので発症前の感染リスクはあまり考えなくても良いのではないかという印象です。

 今回はマスクをしている・していない具体的な場面でリスクはどうなのかを考えてみたいと思います。あなたがいる場所でコロナに感染しやすいのはどの場面でしょうか?

①複数の人がマスクをせずに黙って鑑賞している博物館や美術館
②複数の人がマスクをして大きな声で会話をしている電車内

 マスクをしなくても黙っていれば発生する飛沫はほぼありません。一方でマスクをしていてもウレタンマスク、時折外す、顎にかけるなど不適切な着用であり、その中に一人でも感染者がいた場合、その時間が長くなればなるほどリスクは高くなりますし、近くにそのような状況が生まれた場合、換気が悪ければそのグループとは無関係であっても蔓延する飛沫を吸い込むことによるリスクは高まります。そのような場合はその場を離れるなど、自衛をする必要が出てきます。従ってリスクが高いのは②となるので、マスクをしていても感染するということが起こり得るわけです。
 次は毎日至る所で見かける光景です。

③ランチに出かける際に全員がマスクを着用して会社を出る
④飲食店に入り話しながら食事をする
⑤会計をする際にマスクをして会社に戻る

 お分かり通りリスクの高いのは④ですので、③や⑤でマスクを徹底するくらいなら④の場面を最も気をつけることの方が効果的かつ効率的となります。それならば同僚と食事にも行けないだろうということになりますが、行くなというのではなく④でマスクをせずに大声で会話をするのならば、③も⑤もする必要はないのではと思うわけです。すなわち「マスクをすることが感染対策」というならば「リスクの高い場面で何も対策をせずにリスクの低い場面でほぼ意義のない対策をしている」ことになり真逆ですので、最初からマスクをする必要性は高くはありません。
 もちろん、それを承知の上で徹底的に一人で食事をすることを心がけている方もおられるかと思いますが、外食の際にたとえ一人で会話をする人がいなかったとしても食事をする時はマスクを外しますので、隣で大人数のグループが大きな声で会話をしながら食事をしており、その中に感染者がもしいたならば蔓延した飛沫を吸い込むことによるリスクはかなり高くなります。陽性の方の問診で時々ある事例ですが「会食の機会はなく思い当たる節はありません」と仰る方の中に詳細な場面を伺うと「外食機会はあるが他の人との会食機会はない」ということだったりもします。
 そろそろ春季の花粉飛散シーズンは終わりますので、花粉症を理由にマスクをしているという人たちは外す時期が到来したということになるはずですが、おそらくそれが本当の理由である人は多くはなく、来月になってもあまり変わらないのではないでしょうか?やはり「周囲の眼」「同調圧力」「慣習」を理由に「非日常」を継続しなければならない日本社会の特殊性を痛感せざるをえません。 
 中には「飾りなのよマスクは」と考えている方もおられるかもしれません。(飾りじゃないのよマスクは|水野泰孝 Global Healthcare Clinic (nikkei.com))記事にもあるように肯定も否定もしませんが、危惧されるのは「顔を隠すためのツール」「コミニュケーションを嫌うためのツール」として定着してしまうことによる「長期的な副作用」の可能性です。特に子どもたちの成長・発達・人格形成に何らかの支障が生じ、10~15年後に成人した彼らが社会での人との付き合い方に影響を及ぼすのではないかと一保護者としても心配してしまいます。
 長い年月の中では感染症対策は緩急つけた一時的なものですが、しみついてしまった文化による影響は簡単に修正することはできませんし、子から孫へ伝承されてしまえばほぼ永久的なものになります。そうならないようにできるだけ早く「コロナ前の日常(=当たり前の日常)」に戻ることを強く望みます。コロナ前の日常に戻りたくないのか??私は早く戻ってほしい|水野泰孝 Global Healthcare Clinic (nikkei.com)
 ちなみに私は新型コロナ発生前から患者さんの診療を行う際にはマスクを着用しています。これは医療感染対策上では「標準予防策」と呼ばれ、たとえ患者さんが体調は問題ないと仰っても発熱があったり、何らかの感染症であったりすることから自分の身を守るために行っている対策です(もちろん完全ではなく患者さんが肺結核であったりすればリスクのある接触者となってしまいます)。それ以外の場面では前述の「咳エチケット」に準じた対応をしています。

#日経COMEMO #NIKKEI  #新型コロナとの付き合い方


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