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医療崩壊させない新型コロナウイルス政策の正念場

 日本の感染症対策は、結核対策を目的として1897年(明治30年)に制定された「伝染病予防法」が起源となり、それから100年後の1998年に、新種の感染症にも適応した新たな法律「感染症法」へと引き継がれている。その中では、法律で規制する病原体を危険度に応じて分類して、治療に対応できる医療機関の指定をしている。

新型コロナウイルス(COVIT-19)は2020年2月1日から、法的措置の対象となる指定感染症に定められた。そのため、入院診療は原則として感染症の指定医療機関で行われている。この指定を受けた医療機関では、院内感染の恐れが無い「感染対策病室の」整備を、国の補助金によって行っている。

しかし、日本では長らく大規模な伝染病が起きかったことから、感染症指定の医療機関と病床数は少ないのが実態で、全国で410医療機関の1871病床しかない。 しかも、感染症治療ができる病室(個室)にも、第一種と第二種の2ランクがあり、医師や看護師への空気感染を防ぐ設備が整った、第一種病室は、指定医療機関の中でも各1~2床しかない。

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《感染症対策病室の主な仕様》
○第一種感染症対応病室
・病院内の特定区域に限定した治療と入院生活ができる環境
・病室は個室であること(15平米以上)
・医師や看護師が感染予防の準備をする「前室」があること
・空気感染を防ぐ目的の陰圧設備があること
・病室内にトイレ、シャワー室があること
・内部の空気が漏れにくい構造
・扉の開閉、手洗い設備は、手の指を使わない自動式
・床板は消毒がしやすいコンクリート造など

○第二種感染症対応病室
・空気感染リスクが低い感染症を対象に、第一種病室の条件から「前室」「陰圧設備」などの設備を簡略化した病室。

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ただし、COVIT-19の患者数増加に伴う受け入れ先確保は急を要していることから、厚生労働省では、感染病床以外への入院や、COVIT-19の診断が確定している複数の患者を、同一の病室で治療することも可能とする通達を、各都道府県に出している。今は、厚労省が補助金の交付を条件に、新たに病床を提供してくれる病院を募って、治療の体制を増強している段階だ。

一方、地域のクリニックでは、指定感染症となったCOVIT-19の疑いがある患者の診察は基本的に行わないケースが増えている。感染症法の中では、指定医療機関以外でも診察することは認めているが、院内感染対策の設備が整っていなければ、対応することが難しい。他の持病を持つ通院、入院患者に二次感染すると、重症化するリスクが高いためである。

現在の医療制度の中で、COVIT-19が蔓延した場合の対応は、重症患者を優先的に行い、軽度の患者は「自宅で症状改善に努めて欲しい」という方針で行くしかない。しかし、軽度でも感染していればウイルスを拡散させることになるため、複数人が集まる場は極力減らしていくことが、社会的な風潮としても、当面続くことになるだろう。

COVIT-19のウイルスは、致死率は低く、軽症者の割合が高いことが、各所のエビデンス(科学的根拠)から明らかになっているが、逆にそれが仇となり、軽症者が無意識のうちに感染を広げてしまう特性がある。そのため、事態を収束するには、医療機関、国民、企業が団結をして、ウイルスの特徴を掴み、攻略していくことが必要になる。

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