Z世代の流行に追いつくことはできるのか? 猛スピードで変わる「花火トレンド」との向き合い方
皆さんは、「去年いちばん売れた曲は?」と聞かれて、すぐに答えが浮かぶでしょうか?
おそらく、20年前に「この1年でヒットした10曲」と聞かれれば、皆さんの認識は大体一致していたと思います。しかし、今は人によってバラバラです。たとえランキングの10位以内に入っていたとしても、それぞれに知らない曲が多数あるのです。
また、毎年SHIBUYA109 lab.から発表されている、Z世代のトレンド総括にも、「バラバラ」な傾向が見られます。
こちらは15~24歳のZ世代564人へのアンケート調査をもとに集計され、毎年各メディアで話題となっていますが、実際にランクインした言葉についてZ世代の当事者に聞いてみると、「何それ?」と言われることがあるのです。
僕は最近の、特にZ世代のトレンドにおいて「流行ったものランキング」や「今、これが流行っている!」と言われたことを鵜呑みにするのは危険だと考えています。
それは、現在のトレンドは一昔前のトレンドに比べて規模が非常に小さいうえに、日々猛スピードで入れ替わっているからです。
話題に上がったと思ったらすぐに消え、さまざまな界隈で同時多発的に多くのトレンドが生まれている。そんなZ世代の「花火トレンド」に、マーケターや若者の動向を掴みたい大人はどう向き合えば良いのでしょうか?
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近年のトレンドは、「生まれにくい」
近年、分野や年齢層を問わず、大きなトレンドは生まれづらくなっています。
それはトレンドが生まれるために必要な「消費者の人数」と「消費回数」が少なくなり、流行を生み出すための集団の「規模」を大きくするのが難しくなっているからです。
消費者の人数が少なくなっているのは、情報収集の方法が分散したからだと考えています。
近年はSNSやネットの普及によって、人々の情報収集の入り口が増えています。これまで多くの人が多くの時間をテレビに使っていたところから、LINE、YouTube、Twitter、Instagram、TikTokなど、人によってどれに時間をかけるかがバラバラになり、1つの方法で多くの人にリーチするのが難しくなっているのです。
それぞれの媒体によって取り扱う内容が違うため、人によって情報の内容にも違いがあります。
さらに、僕たちの趣向性がバラバラになったのは、大抵の家庭において、必要なものがひと通り揃っている、豊かな時代になったからともいえます。
数十年前であれば、品質や性能で最も良いものを選んでいたところを、今やどの商品を買っても良くなった。そのため、本当に自分が欲しいものをと考えれば、みんなバラバラになってしまう。だからこそ、大きく売れるものをつくるのは難しくなっている、という発想です。
Z世代間で「大きなヒット」が生まれない4つの理由
Z世代では、特にその傾向が顕著に現れています。Z世代の場合は上記の理由に加えて、さらに下記の4つの要因から、大きなヒットが生まれづらく、トレンドの消費期限も短くなっています。
①これまでの「流行が生まれる」常識が通用しない
Z世代の中で大きなヒットが生まれにくい要因として、「テレビ離れ」が挙げられます。
そもそもトレンドは、どこから生まれるのか。業界によっても変わりますが、僕は多くの流行はテレビが作ってきたと考えています。
▼流行がどこから来るかについては、こちらの記事でも取り上げているので、よろしければご覧ください!
一方、Z世代のあいだでは、テレビ離れが進んでいます。上の世代にとって、テレビはどの家庭にもあるものだったと思います。
僕も子供のころは親が選んだ番組を横で見ていましたが、今は自らテレビを観ることはあまりなく、その頻度は半年に1〜2時間ほど。同世代には、テレビを持っていない人もたくさんいます。
テレビ離れが進み、SNSを中心に人々の話題が作られるようになったことは、多くの人にとって共通の話題が減っただけではなく、人によってトレンドのタイミングがバラバラになったことも意味します。
今テレビで放送されているドラマだったとしても、忙しいのであれば後から配信サービスで見ることができる。いつでも見られるようになったことで、同時に多くの人が視聴する番組が少なくなったのです。
そのため、コンテンツがUGC(口コミ)で広がることも少なくなったと考えています。
これまでは「昨日のあれ見た?」と学校や会社、SNSで話題に出せていたものが、同時に多くの人が同じ番組を視聴しなくなったことで、ネタバレをしないことが暗黙の了解となったからです。
特に、犯人探しや最終回のオチを巡って盛り上がるドラマ系のUGCは広まりにくいと言えるでしょう。
②Z世代は、情報を「受け流す」ことが上手
数々のSNSを使いこなすZ世代は、検索をしなくても膨大な情報が流れ込んでくる、情報に対して「受け身」な世代です。
また、Z世代は無意識に情報を受け流す力が非常に高いともいえます。多くの情報から脳のリソースを守り、必要な情報を取捨選択するためには、ある程度自分にとって関係のなさそうな情報は削る必要があるからです。
そのため、もし身の回りの人がとある物事にハマっていたとしても、「自分には関係ない」と受け流すことも多くあります。
だからこそ僕は著書の『エモ消費』で、情報を受け流されず、自分ごととしてもらうために、多くの人から共感を呼ぶ「エモマーケティング」の重要性をお話しています。
逆にいえば、自分ごととしてもらうための工夫をしなければ、多くの人に情報を見てもらうことが難しいわけです。
③SNSは、継続的に同じテーマをバズらせるのが難しい
Z世代トレンドの消費期限が早いのは、SNSは「バズ」を生み出す機能においてはとても優秀なものの、トレンドを継続させる機能は持っていないからだと考えています。
たとえばTikTokで、とあるアーティストの曲がバズったとします。テレビであれば一度流行ったアーティストは2曲目、3曲目と曲を出せば業界から引っ張りだことなり、長く流行が続くアーティストとなるでしょう。
しかし、TikTokではあくまでもアルゴリズムに従って多くの人の目にコンテンツが表示されるため、その一曲限りのアーティストとなってしまうことがほとんどです。
冒頭で述べたように、トレンドを作るには消費の「回数」が必要となるため、バズで「人数」を稼いだ後は、同じものを何度も表示させなければなりません。
もしある程度、人々が見る媒体とコンテンツが絞られているのであれば、傾向から「次になにが多くの人に刺さるのか」見当をつけることができますが、今の世の中ではなにがトレンドになるのかも予想がつかないため、トレンドを継続するためにあらかじめコンテンツを用意しておくのは難しいと思います。
④Z世代は「自分だけ知っている」を求める
Z世代は、自分らしさを求めている。僕のnoteでも度々登場している言葉ですが、Z世代はまわりと一緒ではない、自分だけの世界観を求める世代です。
流行に乗ることは世間の当たり前に沿うこととなるため、今トレンドになっているものを知るよりも、まだ多くの人が知らないことを探し当てて、「これって知ってる?」と広めることが多くあります。
何かが流行しているとき、Z世代はすでに次のトレンドを求めてインターネットの海を泳いだり、街中に目を光らせたりしているわけです。
トレンドを追うことは難しい。でも、「作る」ことはできる
このような理由から、Z世代のあいだでは、さまざまなところで小さなヒットが生まれ、生まれたと思ったら消える。後になってみれば記憶にも残らないようなトレンドが、花火のように同時多発する状況が起きています。
予想をつけて先回りしてもなかなかトレンドにならず、やっとトレンドになっても大多数の人が認識し始め、乗っかろうとしたときにはもう遅い。それがZ世代の「花火トレンド」です。
だから僕は、Z世代のトレンドをリアルタイムで「追う」のは諦め、トレンドを「作る」側に集中しています。Z世代のトレンドを追うことは難しいものの、Z世代の価値観とカスタマージャーニーを追うことはできるからです。
例えば商品を購入するときに「友だちからのおすすめ」を重視するのはZ世代ならではの特徴です。ここでいう友だちとは「意見を信頼している人」を指すため、有名人やインフルエンサーでもUGCは強力だといえます。
この特徴からぼくわたでは「友だちマーケティング」と称したUGCを尊重する施策や、とにかく多くの人にシェアをしてくれるインフルエンサーを巻き込んだキャンペーン、有名人を起用したSNSコンテンツの制作を行い、Z世代のトレンドを作ってきました。
具体的な方法についてはまた今度ご紹介しますが、トレンドよりも変わりにくい「大切にしていること」と「行動指針」を掴めば、トレンドを掴むよりもZ世代に刺さる商品・コンテンツを作れる可能性が高いと考えています。
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最後に、それでも「Z世代のトレンドをできる限りリアルタイムで知りたい」「リサーチに活用したい!」という方向けにいくつか参考になるサイト・noteをご紹介します。
🔼若年層のトレンドの掴む手段についてさまざまな方法が書かれています。リサーチの参考にしてみてください。
🔼2019年の「スマホユーザー」トレンドですが、現在のZ世代の価値観に通じるものが多いと考えています。
このnoteでは、Z世代経営者の僕が日常生活で感じたことや、習慣などを発信しています。Z世代の消費傾向やマーケティングについてもお話していますので、ぜひスキやコメントお願いいたします!
※このnoteは個人の見解です。
今瀧健登について
1997年生まれ。SNSネイティブへのマーケティング・企画UXを専門とし、メンズも通えるネイルサロン『KANGOL NAIL』、食べられるお茶『咲茶』、お酒とすごらくを掛け合わせた『ウェイウェイらんど!』などを企画。
Z世代代表として多数のメディアに出演し、"サウナ採用"や地方へのワーケーション制度など、ユニークな働き方を提案するZ世代のコメンテーター。著書に「エモ消費」、「Z世代マーケティング見るだけノート」など。
日経COMEMOではZ目線でnoteを綴り、日経クロストレンドでは、「今瀧健登のZ世代マーケティング」を連載中。
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