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この時期に海外に行くということ(3):帰国準備・現地出発から日本到着とその後まで

1回目2回目に続き、コロナ禍の中での海外出張の経験にもとづいて、渡航先での帰国準備・出発から日本到着とその後の自己隔離(現時点の措置)までの留意点について紹介する。

これは、エジプト・カイロへの出張渡航の経験をもとに、帰国後自己隔離中に書いているものだ。前回、前々回と同様、本稿の内容は執筆時点(2021年4月上旬)のものであり、この情報をもとに渡航・帰国したことによる損害等についてはその責任を取ることは出来ず、各自の責任においてこの情報を参考にし、また最新情報を収集する手がかりとして活用して頂けるなら幸いである。

帰国の準備

帰国の数日前になったら帰国の準備を本格的に始めておく必要がある。 出来れば余裕をもって帰国に向けた準備をしておくほうが安心だ。

特に気をつけたいのは、帰国時に到着空港で PCR 検査陰性の証明書が求められると共に、航空会社によっては帰国便搭乗にあたってそれを必要とする場合があることだ。このため、現地でPCR検査をして証明書を発行してくれる医療機関や検査機関をあらかじめ航空会社のホームページや現地日本大使館に問い合わせるなどして確認しておきたい。医療・検査機関によって営業日や営業時間が限られている場合もあるので、証明書発行や検査の有効期限と帰国日時を確認して、検査と証明書発行が間に合わない、という事態がないようにしておく。

また帰国時の交通手段についても事前に確認しておきたい。現状では帰国者は一般の公共交通機関の利用自粛を強く要請されている。このため、自家用車やハイヤーまたは特に利用を許されている特別な列車やバスを利用することになる。これらについて運行の有無の確認や、必要であれば予約をしておく。この時に、後で述べるが、帰国時に入国審査に要する時間や、変異株流行国など特定の国から帰国した場合に、空港周辺指定ホテルでの3日間の自己隔離を行わなければならず、自分が希望する自己隔離場所に直接向かえない場合もあるので、それについても注意しておきたい。

また自己隔離をするためにホテルなどの宿泊施設を予約する場合、いつから予約するか、上記の3日間の隔離の対象になるかどうか、対象外の場合もチェックイン時刻について、後述の帰国手続き所要時間を考慮する必要がある。なお、万一陽性であった場合は、陰性者とはまったく別な扱いになることも、可能性として留意しなければならない。

現状では帰国到着日の翌日から起算して14日間の自己隔離が要請されているが、これは「14泊15日」という意味だそうである。ホテル予約の場合、到着翌日から起算して14日目にチェックアウトではなく、実際には15日目にチェックアウトとなるのでこの点も注意が必要だ。ホテルによってはこうした帰国後の自己隔離利用を受け入れていなかったり、大浴場やジムなど一定の施設の利用に制限を加えている場合があるので、予約の際に制限の有無を念のため確認しておきたい。帰国者の自己隔離専用送迎・宿泊プランを出している旅行会社もあり、万一の場合に対応のスムーズさを期待するならそれを利用することも一法だろう。

そして、通常であれば特にリコンファームの必要がない航空会社のフライトであっても、自分が乗る便が予定通りに飛ぶのか、航空会社のホームページなどで念のため確認しておきたい。感染状況の急変によってはフライトのスケジュールが変更になったりキャンセルになる可能性も無いとは言えない。

帰国後は自己隔離場所に直行することになる。また、特定国から入国して3日間指定ホテルでの自己隔離では、部屋から全く出られないそうだ。こうした時に、部屋を出られなくても困らないように、渡航先を出る前に現地で調達できるものであれば、それを手荷物の中に入れておくと安心である。例えば滞在中にマスクや消毒液などが不足気味になっているのであれば、ある程度余裕を持って、予備を現地で購入できるのであれば調達しておくといった準備も推奨しておきたい。食料や飲料など嗜好品の類も同様だ(国内に持ち込めるものに限る)。

さらに、帰国時に必要とされるアプリなどのインストールや、あらかじめ記入しておける書類等を準備しておくなど、現地滞在中にできることについては、なるべく済ませておくことが帰国時のスムーズな手続きにつながる。現時点では帰国にあたって質問票webの回答が必要になっており、航空会社によっては出発空港でその質問票の回答終了時に表示される QR コードを提示することを求められる場合がある。帰国便内で配布された厚生労働省のチラシ(下部写真参照)では「到着前入力」となっていたが、私の場合は帰国便の搭乗時に必要とされた。この点についても注意が必要だ。

出発空港から日本到着まで

これについては2回目に書いた日本出国から乗り継いで現地に到着するまでに準じて考えてもらえば良いので、基本的にはそちらを参照していただきたい。

出発の時と違うのは、帰国便の機内で日本到着時に必要な書類が配られることである。私の場合は写真の2枚が配布されたが、よく見ないと単なるチラシなのかあるいは自分が記入しなければいけない書類なのかが分かりにくい。

写真では左のチラシの裏面に渡航先などを記入し、各チェックポイントを通過するごとにスタンプを押されたりPCR検査の検体番号を貼られたりするシートとして使われた。これは3/5版ということで「LINEが通話アプリとして使われる」との記載があるが、これを配布された時点ではすでにSkpyeかWhatsAppに切り替わっている。このように、配布された書類についても最新のものとは限らないのがやっかいなところだ。

こうしたチラシなどは、裏面にも注意し、必要と言われた時に備えて念のため帰国手続き完了までは捨てないようにしておきたい。また機内で記入できる点については到着前に記入しておくことをおすすめする。なお、税関申告書は通常通り1家族につき1枚が必要だ。

日本到着時の手続き

日本到着時の手続きについては、その時々の感染状況等によっていわゆる「水際対策」が頻繁に変更されるため、常に最新情報の確認を厚生労働省や滞在国の日本大使館のサイトなどでして頂きたい。現地出発前の確認がおすすめだ。

厚生労働省のサイトは、更新日の記載がなかったり、古い情報が残っていたりと極めてわかりにくいため、航空会社などがこの情報を整理して提供していることがあるので、こうしたものも補助的に上手に活用したい(日本航空の例)。ただしあくまでも正確な情報は国が出しているものである、ということについては注意が必要である。なお、残念ながら国の関係機関が出している情報でも変更直後などは更新されているとは限らないことも付記しておく。

成田に着くと、降機してすぐの場所に特定の国名を書いたリストが貼りだされており、そこを出発国としている人とそうでない人に分けて並ばされた。このリストにある国々は変異株が流行している国で、そこから帰国(入国)した人々は検査など所定の手続きが終わった後に空港周辺のホテル(東横インなどとのこと)に3日間隔離され、聞くところでは3日間はホテルの部屋からも一歩も出られないという。

私の場合は変異株流行国以外からの到着であったので、上記の人たちが先に進んだ後に移動し、まず誓約書などの記入をさせられた。この後も様々な書類に記入させられるので、気になる方は筆記具(ボールペン)は自分のものを用意しておく方が安心だ。また、書類も出発前に取得した PCR 検査の陰性証明書をはじめ、複数の書類やパスポートを持ち歩かなければいけないので、ひとまとめに出来る封筒(A4サイズ)やクリアファイルなどを機内持ち込み手荷物に用意しておくことをおすすめする。

この後の具体的な手続きについては、その時々で変更になる可能性もあるため詳細は割愛するが、陰性証明書の確認や唾液による PCR 検査、必要とされる所定アプリのインストールとその動作確認、連絡用メールアドレスなどの登録と受信確認、自己隔離場所の住所登録やそこまでの移動手段の確認などを経て、 PCR 検査の結果を待つ。これにしばらく時間がかかり、番号で呼び出されて陰性の結果が出ると陰性証明の用紙をもらい(写真のオレンジ色のもの)、そこで初めて入国手続きに進み、パスポートに帰国のスタンプを受け、税関検査が終われば到着ロビーに出られる。なお、この陰性証明の用紙は回収されないが、帰国者が利用できる交通機関で提示を求められる場合もあるようなので、少なくても自己隔離場所に到着するまでは手元に保管しておいた方がよさそうだ。

入国審査も自動化ゲートや顔認証ゲートの運用は止まっていたが、上記の手続きが終わらないと入国審査に進めないため、空いていた。

この日の到着便は写真のように1時間に1便程度で、さほど乗客で混雑してはいなかったのと、あらかじめ帰国時に必要となるアプリ等をインストールし設定してあったため、検査結果待ちなどやむを得ないものを除けばほぼ時間のロスがない状態で手続きが進んだが、それでも降機してから税関を出るまでに、約2時間かかっている。その時の到着便の混雑状況などによって大きな違いが出てくると思うが、最低でも2時間程度かかるし、状況により3時間以上かかる可能性も念頭に置いておきたい。


到着空港での PCR 検査については、私が到着した成田空港の場合、唾液による検査であった。使い捨ての試験管と漏斗のようなものを渡され、そこに決められた量の唾液を入れなければいけないが、これが案外大変で時間を要した。唾液は口の中で集めようとすると泡状になってしまいやすいので、無理に口の中で集めようとせずに、ぺっぺっと出すのがコツのようだ。また泡状になってしまった場合には、漏斗と試験管を上下に振ると泡立った唾液が試験管の中に落ちてくれた。唾液が薄まってしまうと検査結果に影響するので、機内を出た後に飲み物などを飲んでいるかどうか口頭でチェックされるが、喉が乾いている状態だと唾液も出にくくなるので、着陸前など飛行機を降りる前に、脱水症状を予防する意味からも十分に水分をとっておきたい。なお水分を取ると同時に、降機前にトイレにも行っておくことをおすすめする。短くても数時間かかる手続き中に、すぐにトイレがあるとは限らないし、それによって順番待ちが後回しなると時間のロスになる。

また帰国時に必要とされるアプリは、厚生労働省のサイトで公開されている。これについては、現地出発前にホテルなど通信環境が安定した場所であらかじめインストールし、可能な範囲で設定もしておくことをおすすめする。空港についてからダウンロードと設定をすると時間のロスになり、また OS のバージョンなどによっては最新のアプリがインストールできない問題や、アプリをダウンロードするための ID やパスワードを忘れているといったケースも考えられるため注意が必要だ。アプリダウンロードの条件が満たせない場合は費用は自己負担でスマートフォンをレンタルすることになる。スマートフォンの OS を最新にしておくことと、アプリダウンロードの ID やパスワードの確認は、少なくても現地出発前に、出来れば日本出発前にしておくとよい。

いずれにしても、到着空港での手続きは、係員も頻繁に変わる手順に不慣れな中で実施しているようであり、なかなか思うように進まないことを念頭に置いておきたい。例えば、短い時間間隔で薬を服用しなければいけないといった症状をお持ちの方であれば、そういうことに対応できる準備をあらかじめしておく必要があるだろう。

自己隔離中について

空港を出たら、(3日間の特別な隔離がない場合)あらかじめ予約や手配をしてあった交通手段を使って自己隔離の場所まで移動することになる。自家用車などで自宅に向かう場合には特に問題がないと思うが、ハイヤーなどを手配している場合については、先に述べた帰国時の手続きの所要時間を見込んでおき、想定より大きく時間がかかった場合の対処もあらかじめ確認しておきたい。

自己隔離期間は、帰国の翌日から数えて14日間だが、ホテルの場合には14泊15日間になる。チェックアウトは15日目であることに留意したい。

自己隔離中は、現状では毎日11時頃に健康状態を確認するメールが来て、リンク先から14時までに回答することが求められる。回答は2項目だけで大変シンプルなものだが「14時までに回答しなければ誓約書の通り氏名等の公表する場合がある」という文言が添えらえている。特に帰国翌日は時差ぼけや疲れなどから昼過ぎまでスマートフォンのチェックをしないままでいることも考えられるが、この点についての注意喚起はなかったので気をつけておきたい。
なお、仮に指定時刻を過ぎてしまっても回答はできるようなので、気が付き次第回答するようにしておきたい。

これに加えて、1日に数回現在地の確認をするプッシュ通知が送られてくる。プッシュ通知を開くと空港でインストールした位置情報確認アプリが立ち上がるので、そこで「現在地を報告」画面の「今ここ!」ボタンを押せば良い。自己隔離期間中の滞在地の住所については、入国手続きの時に登録をしなければならない。

このアプリについては、帰国翌日にログイン方法がメールで送られてくるので、それまでは特に何もする必要がない。メールが届いたら指定に従ってログイン状態にしておけば良い。ただこのアプリでの現在地報告については、前回の報告日時は確認できるが、どの位置を報告したかについてはアプリでは分からないようになっているようだ。

自己隔離期間中については全く外出をしてはいけないということではなく、必要最小限の外出については認めるという旨の記載があるので(冒頭の写真参照)、買い物や健康維持のための散歩などは許されるのだと思う。このため、おそらく現在地についてもある程度の範囲で登録住所と違っても認められるのだとは思うが、どの程度許容されるかについては不明である。また常にスマートフォンの画面を見ているわけではないので、いつの間にかプッシュ通知がきていることもあるが、気がつき次第現在地を報告している。

到着時の手続きで、 WhatsApp または Skype のアプリを入れて、通話機能で必要に応じて担当者とビデオ通話ができるように設定しておかなければいけないが、これは何かあった時のためのものであるらしい。現在帰国から一週間ほどが経つが、今のところ通話を求められたことはない。

自己隔離期間中の過ごし方は、リモートベースで仕事をしている用心深い人が日本国内で普通に生活しているのと同じと考えておけば良い。ただし公共交通機関は利用できない。もちろん自己隔離という以上は、知人と会うといったことは避けるのがリスクヘッジになるはずであり、私の場合もそうしている。

このコロナの影響でリモートワークが当たり前になっている会社や取引先であれば、リモートでの業務はこうした自己隔離期間中にも通常通り可能である。このため自己隔離先は、例えばホテルであれば通信環境やデスクの設置など、リモートワークに適する環境のある部屋を選び、自己隔離中でも仕事ができる状況にしておきたい。

おわりに

この時期の海外渡航について、体験を記録に残す目的と、他の方の参考情報とするために3回にわたってまとめてみた。

感染の状況は日本国内でもまた世界各国でも刻々と変わっている。現時点では特に求められないが、将来的にはワクチン接種の有無も渡航先の入国において考慮される条件になってくる可能性も高いと思われる。実際にシンガポールではこうした運用が始まろうとしている。

ワクチンに加え、検査で陰性であった結果も含めてのCOVID Pssportも、イギリスなどで検討されている。

こうした取り組みには倫理的な問題もあり、アメリカでも議論は二分されているようだ。

すぐに運用されるかは不透明だが、経済を正常化するうえで、何らかの形で感染の可能性を低く保ちつつ経済活動を行うための仕組みづくりは、少なくてもこの先しばらくは不可避であると思われるので、業務渡航の可能性を考えている方は、こうした動きにも注意を払っておく必要があるだろう。

繰り返しになるが、現状では海外渡航に求められる条件は非常に流動的であり、最新の情報を自力又は自分の組織やネットワークの中で適切に収集しながら臨機応変に対応することが強く求められる。こうした点で2019年までの海外旅行とは全く異なる状況であるということを念頭において、安全にしかし充実した海外渡航をしていただければと思う。


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