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この時期に海外に行くということ(4)

この1月は、2年ぶりにラスベガスでリアルで開催されたCESに参加するためと、取締役を務めるキャスタリア社のタンザニアでのデジタル母子手帳事業のため、2度海外に出張した。これで新型コロナウイルスに対応するための水際措置が実施されてから4回海外に渡航したことになるが、初めてホテルでの半強制的な隔離(以下「施設待機」)も2度経験したのでそれも踏まえ、今後渡航する方の一助となるよう、昨年(2021年)3月時点の記事のアップデートをここに書いておきたい。

なお本稿の内容は執筆時点(2022年1月31日)のもの、かつ成田・羽田空港到着の場合の経験をもとにしており、今後の水際措置の変更や、到着空港の違いによる手続きの差異などには注意して頂きたい。

基本的な海外渡航から帰国の流れ

細かな変更はあるが日本を出国してから帰着するまでの大きな流れについては前回の記事(昨年3月時点)から大きな変更がない。

また原則14日間の自己隔離期間が必要という大きな枠組みは長らく変わらなかったが、1/28付けで「水際対策強化に係る新たな措置(26)」が発表され、原則7日に短縮された(ただし例外はあるので注意)。

これにより、オミクロン株流行に伴って停止された2回のワクチン接種完了者に対する特例的な待機期間の短縮(当時は14日が10日になった)が今後どうなるか、今後の3回目のブースター接種の入国時の取り扱いも含めて気にあるところだ。

一方で、オミクロン株流行地域を中心に帰国後に政府が手配したホテル等に半ば強制的にされる「施設待機」は対象国が拡大し、84か国・地域からの帰国・入国に対して3日(泊)または6日(泊)の施設待機が求められる。強制ではない、という建付けだが、帰国手続きの流れ作業の中で検疫と入国・税関手続きが終了した後、宿泊施設(一部の政府施設なども含む)まで移動する導線に従わざるを得ないので、事実上の強制である。

帰国時の手続きで、自宅や自己手配のホテル等に直行できる人の場合の手続きは昨年3月時点と大きく変わらない。ただ、現在地確認と必要な場合の通話の方法がMySOS と称するアプリに集約されたので、帰国時にスマホにインストールしていることが必要なアプリが1つ減った(MySOS、COCOA、GoogleMap等の3つ)。

ホテル等での「施設待機」対象者の入国時の手続きについて

ホテル等での「施設待機」対象者は、「健康カード」と呼ばれる記入用紙に記入するとともに、誓約書に書いた滞在国によって判断され、「健康カード」に係員が添付して記入する紙に待機日数が書かれる。最初の健康カードチェックの際に、宿泊施設の禁煙・喫煙の希望や特別な食事の希望(選べる特別食は、ハラル、ベジタリアン、ビーガンの3つ)が聞かれ記入される。

健康カード
健康カードに添付される係員記入の用紙

なお、税務大学校の寮など「政府施設」の場合は禁煙のみということなので(羽田空港ではその旨の注意を促す紙が配布された)、喫煙を指定するとこうした「政府施設」ではなく民間のホテルになるようだ。

唾液による検査や、スマホアプリチェックなどは、施設待機をしない場合と変わりないが、違いが出るのが、検査結果の連絡時だ。

今月2回の「施設待機」経験から推測・判断すると、施設待機をしない人は検査結果が出るとすぐに呼び出され、結果が陰性であればあとは動植物検疫、入国審査、荷物の引取り、税関検査という、通常の帰国手続きをするだけだ。

一方、施設待機の対象者は、検査結果が出るとともに、待機先の施設が決まるまで呼び出しがないようだ。これは、同じ施設に向かう入国者をグループとして動植物検疫から税関検査まで誘導し、全員が税関検査を終わったところで施設行きのバス等に乗せることになるためだろう。このため、相当な時間を検査結果待ちの待機場所で過ごすことになる。今回、羽田では約3時間、成田では5時間近くを検査結果待ちの場所で過ごすことになった。成田では降機後6時間以上で深夜に及んだためか、途中でおにぎり・パンとペットボトルの水が希望者に配られた。

なかなか自分が呼ばれないことで陽性だったのかと不安になるかもしれないが、施設待機の場合は、施設手配に要する時間が長い可能性が高い。このタイミングでトイレに行ったり自動販売機で飲み物を買ったりするとよい。

なお、陽性だった場合は、どうやらその人だけが呼び出されているようだ。何人もまとめて呼び出されるのが通例なので、陽性者の場合は、他者と近距離で近づくことがないよう感染防止の配慮ではないかと思われる。

検査結果後の手続きを終えると、待機施設に移動する。私の場合は2回とも観光タイプのバスだった。荷物を運ぶや積み下ろしは係員の方が手伝ってくれた。

なお、どこの待機施設に行くかは、施設に到着するまで知らされない。結果として、羽田に早朝4時前に着いた時には、ホテルゆきバスが発車するまで約6時間、成田は夕方5時過ぎに着いて、バスが出るまでに約8時間を要した。

なお、下記の記事のロッカーは羽田第3ターミナルに設置されたということだが、ここに立ち寄る時間を取ってもらえるかは筆者には不明だ。利用前に確認しておく方が安全だと思う。


ホテル等での「施設待機」について

待機宿泊先につくと、チェックインに相当する登録手続きがあり、そこで改めて禁煙喫煙や食事指定の確認などがあり、体温計を貸与され、部屋が指定されると弁当を受け取って部屋まで移動する。

この「施設待機」期間中は、期間満了までは部屋の外には原則として出ることができない。一部の宿泊施設では施設内にあるランドリーまで予約制で出ることが許されるケースもあるようだが、これは例外であり原則として廊下やバルコニーがある施設ではそこも含めて外に出られず、すべて決められた部屋の中で過ごすことになる。

ホテル等での施設待機中は、三食が弁当として部屋のドアの外まで届けられる。タオルやトイレットペーパー、水など必要なものについても電話でリクエストをすれば、食事と同様にドアの外まで届けてもらえる。公式にはアナウンスされていないがカップ麺などももらえるようだ(筆者もカップ麺はもらってみた)。また、ネット上でオンライン決済をすまぜれば、生鮮食品類や電気製品、酒類をのぞけば、ホテルの部屋番号を指定して配達してもらい、それを受け取ることもできる。家族などが差し入れをすることもOKだ。ただしこの場合、配達する人や家族から直接受け取ることはできず、ホテルにいる係員が受け取ってそれを自分の部屋の外まで届けてくれるという形になる。また、エリア限定のサービスは待機施設が配達対象エリアになっているとも限らないので、この点でも注意が必要だ。

施設待機中のアルコール類の飲酒は禁止されているが、これは体調に異変があった場合に、アルコールによる影響があると判断がむつかしくなるため、ということだった。お酒好きには厳しい制限になる。

なお、ベジタリアンとハラル、ビーガンについては特別食があるが、糖尿病などに配慮した糖質制限食はないとのことだった。上記3種の特別食対応があることを考えるとあってしかるべきと思うので、2回とも今後の対応を要望しておいた。

また、私の場合は、インスタントを含むコーヒーやティーバッグ、ナッツ類などを一部は日本出発前から荷物として持参し、配布された弁当に食べられるもの・食べたいものがない場合でも対応できるように、また部屋の中で少しでもオンラインで仕事をする環境が快適になるようにしている。肩首の負担を減らすノートPCスタンドや、小さなBluetoothスピーカーなども重宝している。これらは渡航先での仕事環境改善にもなるので、吟味してご自分に必要なものを吟味して持参するとよいと思う。

自分で用意して持ち込んだものの一部
大きめのマグやスプーンがあると飲食器としてつぶしが効く

待機中は、MySOSのほかに待機施設ごとのチャット形式の健康観察に毎朝体温と体調を登録させられる。最初に渡される体温計はそのためのものだ。

さらに帰国便に陽性者が乗っていた場合、その旨の連絡がメールで来て、さらに自分の座席から近い場所(前後2列以内の席だという)に陽性者がいた場合は濃厚接触者の可能性ありということになり、MySOS を通じてその連絡が来る。保健所へ連絡せよということが書かれているのだが、入国者健康確認センターに聞いてみたものの回答が一貫せず、保健所に連絡しても電話がつながりにくく、つながっても情報の連携はとられていないということだった。市中感染が爆発していて帰国者どころではないタイミングということでもあったのだろう。1日の入国者数(陽性者や感染者の数ではなく総数)をはるかに上回る市中感染者が出ている執筆時点で、いわば保健所の業務に支障をきたすような対応を求めてくる入国者健康確認センターの縦割り対応に大きな疑問を感じざるを得なかったが、ここでは帰国者向けの情報提供を目的にしているので詳細は割愛する。

待機期間中は、自分も部屋の外に出られないが、スタッフも含めて自分以外の人が部屋に入ってくることはない。清掃やベッドメイクなどもない。必要なものや困りごとがある場合などは、指定されたコールセンターの番号に部屋の電話からかけることになる。なお、ホテルで対応してくれるのは、通常のホテルのスタッフではなく、施設待機のために雇われていると思われる人たちであるが、おしなべて対応はよかった。

待機期間の数え方だが、帰国当日を0日、翌日を1日目として3日目または6日目までが待機期間となる。施設待機中3日目と、6日間待機の場合は6日目にも空港で受けたのと同様の唾液による抗原検査がある。朝にドアの外に検査キットが配布され、唾液を取って渡すと、検査当日の午後に結果が知らされた。その日が施設の退所日であれば、陰性の結果連絡を待って、部屋のキーと体温計を返却して退所し、バスで到着空港に戻されて解散、以降は残りの期間を自宅や自己手配ホテル等で自己隔離する。6日間待機の場合は2回の検査とも陰性であることが必要になる。

以降は通常の自宅等での自己隔離と同じで、自己隔離場所まで公共交通機関を使わずに移動し、残りの期間を自己隔離で過ごすことになる。

おわりに

渡航、特に帰国・入国の制限が厳しいうえに複雑な状況が続いているが、海外に行って帰ってこれる機会と勇気とスキルのある方には、十分な事前情報収集・準備と感染防止を含めた安全対策を行ったうえで、積極的に海外に行ってもらい、鎖国状態になることでの日本の不利益を少しでも防ぐべきで、これは新型コロナウイルスがもたらす不利益と同様に深刻だと筆者は考えている。

この記事が、コロナ禍の渡航と帰国・入国に少しでもお役に立つことを願っている。


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