この時期に海外に行くということ(2):出発から現地滞在まで
1回目に続いて、コロナ禍の中での海外出張の経験にもとづいて、出発から現地到着・滞在までの留意点について書く。
これは、エジプト・カイロへの出張渡航の経験をもとに、現地・カイロで書いているものだ。前回と同様、本稿の内容は執筆時点(2021年3月末)のものであり、この情報をもとに渡航したことによる損害等についてはその責任を取ることは出来ず、渡航にあたっては各自の責任においてこの情報を参考にしまた最新情報を収集して活用して頂けるなら幸いである。
・出発空港まで
自宅やオフィスなどから出発空港までの移動であるが、現在空港までの交通機関は臨時ダイヤで大幅に運転・運行の本数が少なくなるなど、通常のダイヤと異なることに注意しなければいけないし、ダイヤが頻繁に変更される可能性があることも念頭におかなければならない。ここでも一次情報として、乗換の検索サービスだけでなく交通機関のホームページを当たって、正確な運行時刻の情報収集を行う必要があるとともに、万一その交通手段が利用できなくなった時に、他の手段で空港にたどり着く方法を考えておくことが安全だ。特に深夜の出発便を利用する場合、空港に向かう最終の運行時刻が繰り上がっている交通機関もあるので、この点は十分に注意をしなければいけない。
・出発空港で
空港内も、いつもとは様子が異なると思っておくべきだ。お店やレストラン、両替所などは閉店していたり営業時間が短縮されていることがある。またラウンジについても同様で利用できない可能性がある。飲食店の夜間営業時間の自粛は成田空港も同じで、夜9時を過ぎると第2ターミナル内では、店内で食事を出来る場所はなかった(2021年3月26日時点)。
また、そもそも利用客自体は少ないが、オープンしている手荷物検査場や出国審査場も限られているため、時間帯によっては手荷物検査や出国審査にも行列ができる可能性を考えておいた方が良い。通常であれば航空会社の上級会員に対する優先手荷物検査レーンが用意されていることがあるが、今の状況ではそうしたものが運用停止している可能性もある。実際に、成田を深夜に出発する便の時間帯では、手荷物検査は優先の取り扱いがなかった。また、日本人向けの自動化ゲートなど出国の手続きで通常使える場所が運用を停止していた。
さらに出国審査後の搭乗ゲート付近などでは夜の出発便を利用したせいもあったためと思うが、空いている店は全くないと言って良い状態であった。このため、食事は空港に向かう前に用意しておいた方が良いし、買い物も空港ではできないつもりでいるほうが安全だ。
こうした空港内ショップなどのオープン状況についても、空港のホームページなどで確認した方が良いと思うが、細かいことは現地に行かないと分からないことも多いと思うので、必要があれば電話などで問い合わせをした方が良い。当面は、空港ですることはチェックインと搭乗のみと考えておく方が無難だろう。
また、空港によっては空港で PCR 検査を受け付けているクリニックがあるが、これについても事前に予約をするなど、確実にそこで検査と証明書の発行を受けられることを事前に確定しておかなければ搭乗手続きの段階で飛行機に乗れないといった事態が起こりうるので注意が必要だ。
特に目的地まで乗り継いで行く場合には、乗り継ぎの途中でも PCR 検査の証明書の提示を求められることがあり、チェックインの時に提示した証明書を紛失してしまわないようにしておきたい。
なお、現在では、コロナ禍前と同様に手続きごとに何度もパスポートや搭乗券の提示を求められるが、これについては4月から成田・羽田両空港の一部の航空会社で新しい方式が導入されるということだ。担当の職員さんもそうだろうが、旅行者側も感染防止の点で多数の人の手に触れるものはなるべく減らしたいので、こうした取り組みは積極的な導入を歓迎したい。
・機内と乗り継ぎについて
機内状況については航空会社毎に異なると思われるので一概には言えないが、エミレーツ航空を利用した経験で言うと、キャビンアテンダントもユニフォームの上に不織布でできたガウンにマスク、メガネ、ゴム手袋といった服装であった。
乗客にも、タイトル写真にある、マスク・ゴム手袋・手指消毒剤・消毒用ペーパータオルのキットが配布された。
機内食についても、例えばパンはすべてビニール袋に入った状態で配布されたり、グラスにもビニール袋がかぶせられているなど、衛生面の管理には注意されていると感じた。
一方、コロナ禍以前のフライトであれば期待できたようなサービスが行われないことも考えられる。今回のフライトでは、コロナ禍以前にはあった食間に飲み物や食べ物をギャレーでセルフサービスで提供することが中止され、用事がない限り自分の席を立って出歩かないように、という注意があった。
また、今回のフライトでは機内はさほど混んでおらず、周囲の他の乗客との近さが気になることはなかったが、場合によっては近くに他の乗客がいることも考えられるので、そうなった場合のマスクの着用(場合によっては二重に)を始めとした感染防止に対して取り得る最大限の準備はしておく方が良い。
乗り継ぎの場合、乗り継ぎ空港の手荷物検査と手続きが、出発空港と同様に利用できる場所の数が制限されているなど、通常と異なる運用の可能性があり、その分空港内の移動や順番待ちに時間がかかる可能性がある。また、空港内のショップなどが閉まっている可能性についても同様である。この点を踏まえ、乗り継ぎ時間については通常よりは余裕をもって考えるのが安全で、過去にこのくらいの乗り継ぎ時間で間に合ったという経験から、余裕のない乗り継ぎでスケジュールを組まないことをおすすめする。また、乗り継ぎ空港の中で何も買い物などが出来なくても問題がないよう、最低限必要なものは機内持ち込み荷物で準備をしておくことも大切だ。
・現地到着から宿泊先まで
目的地の到着空港についても、出発地や乗り継ぎ空港と同様で、検疫や入国手続きなどの窓口が縛られている可能性がある。また、国によっては空港で検疫が強化されており、検査その他通常にはない手続きをしなければいけない場合も考えられる。いずれにしても、空港を出るまでに時間がかかる可能性を考慮しておきたい。
このため、例えばタクシーその他、空港からの交通機関を予約する場合は、余裕をもって予約時間を考えた方が安全だ。また交通機関の予約をしない場合、空港からの運行本数が限られていたり、タクシーであれば待機台数が少なく、すぐに乗れない可能性も考えておくと安全である。
また公共交通機関を利用する場合、マスクの着用が義務付けられている場合が少なくない。Uberでもマスクの着用に同意しないと配車依頼が出来ないようになっていた(カイロ市での利用の場合で、他国他都市の場合は不明)。マスクを着用しないと、国によっては罰金など罰則がある場合もあり、国ごとの感染防止対策のレギュレーションを守ることが必要である。
また、外出制限がある渡航先の場合、ホテル到着後に外出が出来ないと予想される場合は、空港内で可能な買い物などの用事を済ませてから宿泊先に向かうとよい。この時も空港内の店などが閉店している可能性があるため、現地到着後すぐに必要になると予想されるものについて、最低限のものは出発前に購入して手荷物に入れておくと安心だ。私自身は、これはコロナ禍の前からであるが、到着時に空腹にも関わらず食事がとれない場合を考えて、非常食的なもの(バータイプの栄養補助食品など)は定番の持参物になっている。
・現地滞在
カイロの場合は、特に外出制限などがないために行動の自由があるが、渡航先によっては外出時間などの制限があり、違反に対する罰則がある場合もあるので注意することが必要だ。こうした情報はホテルスタッフに確認するとよい。
特に到着が深夜になるなど、外出規制にかかっている場合はホテルに到着した後に外に出られない、また外に出られたとしても、営業時間制限でお店が営業していないといった場合も考えられることは、到着空港のところに書いた通りだ。
またホテル内ではマスクの着用を求められることが多いと思われるのは、交通機関利用時と同じ。こうしたレギュレーションに対応できるだけのマスクの持参が必要であることは第1回目の準備編でも述べた。
ホテルの衛生管理面やコロナウイルスにまつわる対応などを考えると、一定以上のランクのホテルの方が安心ではある。国際的なホテルチェーンでは、そのチェーン独自の衛生ガイドラインを設けていたりするので、独立系のホテルより安心感はある。
また、館内にレストランや売店等があるホテルの方が、外出をしなくても最低限のものが手に入るという利便性はあるかもしれない(そうした施設が営業をしていればの話だが)。
そう考えると、これまでよりもランクの高いホテルに宿泊するメリットが大きいと思われる。観光客が減ってホテルの価格が以前よりも安くなっているのであればなおさら、これまで利用してきたホテルよりはランクの高いホテルの利用を検討することも、手間や安全を買う意味で、「コスパ」の高い選択ではないか。
また、滞在中に新型コロナウイルス感染に注意することはもちろんだが、既存のリスク、例えばスリなどの犯罪や交通事故、そしてテロやデモ、ヘイトクライムなどへの注意は、これまでと同様か、それ以上に怠らないようにしなければならない。
世界的に人の往来が減った結果、観光客相手に商売をしてきた人たちは、経済的に苦しい。このため、近隣のアジア諸国を除けば、日本人(東アジア人)は一目で海外から来ていることが目立つことになりやすく、そうなると、かなりしつこく土産物や観光客向けのサービスを売り込まれる場合がある。また、新型コロナウイルスが中国から広まったため、中国人に対する嫌悪感を持つ人たちもおり、そうした中にはいわゆるヘイトクライムを起こす人たちもいるので、多くの国では東アジア人の国ごとの見わけがつかないことを念頭に置いて、注意が必要だ。
また、飛沫の感染に比べれば、手にウイルスがつきそれが眼鼻口から入ることでの感染は少ないようだが、それでもリスクのひとつではある。不特定多数の人が触れるものへの接触頻度を減らすことと、触れたら手洗いや手指消毒剤を利用するように心がけたい。この点で利用を減らしたいものの一つに現金がある。最近では、地域によってはクレジットカードも交通系ICカードのようにかざして決済する、いわゆる「コンタクトレス」が普及している(日本でも始まっているが、まだまだこれから、という印象だ)。これを利用するためにはコンタクトレスに対応したカードである必要があるが、コンタクトレスであれば暗証番号の入力も不要で、番号キーに触れる必要もないし、またサインも不要であるからペンに触れる必要もなくなる。単に現金を扱わないだけでなく、カード決済でコンタクトレスを活用することも検討したいところだし、そのために出発前にコンタクトレス決済対応のカードに更新できる場合は、しておいて損はない。
また、食事の際に、パンなどどうしても手で触れて食べるものもあるので、携帯用の手指消毒剤や消毒用ウェットティッシュなどは、必要量を常に携行しておくとよい。カイロでも、ほとんどの店に消毒剤が用意されているが、なかには刺激が強いように感じるものもある。普段使っている消毒剤があれば、それを持参するのが安心だ。
どこの国でも、感染防止に慎重な対応をする人とそうでない人がいる。その意味で、滞在中の過ごし方は、感染防止の点では日本国内にいる時と違いはないと言っていいだろう。ただ、旅行者・外国人であることを踏まえて、通常以上に感染リスクに対して慎重になっておきたい。
次回は、帰国準備と帰国後について書く予定だが、こちらについては実際に帰国してから書くことになるので、しばらく間をおいてから書く予定だ。