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のれんって? 日経電子版で学ぶ新社会人の基礎⑪

今回は企業の決算シーズンになると、ニュースによく出てくるキーワードです。次の記事を見てみましょう。

人材派遣のパーソルホールディングスの決算では、見出しにもある通り「のれん」の減損処理で利益が減っています。

次に挙げるレシピサイト運営のクックパッドの記事にも「のれん」が出てきます。

「ロシア、ギリシャ、ハンガリー3カ国の連結子会社ののれん全額を費用処理する」とあります。減損、費用処理などの言葉と一緒に使われていますが、いったいどういうものなのでしょうか。

1.のれんって何?

のれんは企業のM&A(合併・買収)に関連して生じるものです。

のれん=買収で支払った代金ー買収先の純資産額

という計算式に当てはめて算出します。本来店先にかける「のれん」という言葉通り、買収先の企業がこれまでに培ってきたブランド力や顧客網などの対価、と見なされています。例えば、100億円で買収した企業の純資産が50億円なら、のれんは50億円となります。

日本の会計基準では「ブランド力なども時間がたてば落ちていく」という観点から毎年少しずつのれんを費用として計上します。10年かけてのれんを償却していくとしたら、毎年5億円の費用がかかっている、という計算です。

国際会計基準では毎年の費用計上は必要ないですが、買収先の業績が振るわない場合には減損処理をする必要があります。

DeNAはすでに解散した米子会社ののれんを減損処理しています。買収したものの、もう存在しない会社なのでブランド力や開発力はありません。だから減損処理が必要だ、ということです。

先ほどのクックパッドの記事でもそうです。欧州の企業を買収したけれど、思ったより業績が振るわなかったので、減損処理をした、ということです。

子会社も企業からすれば「資産」の1つですから、その資産の価値が下がれば、損をしちゃいました、という計算になるわけです。

2.負ののれんって何?

次の記事を読んでみましょう。

上の記事に「負ののれん」という言葉が出てきます。のれんはブランド力などの価値と言いましたが、負ののれんといっても別にブランド力がマイナスだ、とか価値がないとか、そういうわけではありません。

先ほどの式に当てはめて見ましょう。純資産が100億円ある企業を50億円で買収できたとします。

50億円-100億円=-50億円

という計算式が成り立ちます。つまり「負ののれん」とは買収に使った金額が、買収先の純資産を下回った」状態で、割安な買収の際に発生します。この負ののれんは一括で利益として計上します。上の記事について言えば、住宅販売のオープンハウスがマンション販売のプレサンスコーポレーションと資本業務提携するにあたり、株式を取得したところ、負ののれんが発生したので2020年9月期の利益が増えます、ということです。

3.ニュースのポイント

近年、製薬会社や食品会社が海外企業のM&Aに多額を投じているケースが増えています。ブランド力や販売力だけでなく、その企業の成長力を含めて買うので、買収額が大きくなり、多額ののれんが計上されるケースがほとんどです。ただ、経営がうまくいかなかったり、その会社の問題が買収後に発覚した際などに大きな損失を被る可能性があり、注目しておく必要があります。

逆に「負ののれん」がニュースになる事例があります。負ののれんは利益として一括計上されますから、その年の決算で「純利益〇割増」というように業績が好調に見えることになります。

例えばRIZAPはこの「負ののれん」を活用して利益を増やし、本来の実力以上に成長しているように見せてきましたが、買収先の経営が不振のままだと、結果として新たな損失を生むことになります。

M&Aのニュースを読む際には買収した企業が抱えるのれんが大きすぎないか、逆に負ののれんで利益が増加している企業の本当の実力はどうか、そこまで読み解くことも重要になります。今後ものれんをニュースで見ることが多くなると思います。しっかり覚えておきましょう。


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