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新型コロナとともに過ごした4年間の夏を振り返る

  連日の猛暑が続く今日この頃ですが、夏休みに入り各地で4年ぶりの大規模イベントが開催されています。4年ぶり隅田川花火大会、夜空に大輪 - 日本経済新聞 (nikkei.com)  背景にはCOVID-19の5類移行に伴う社会的な制約が解除されたことが大きいのでしょう。昨年の同時期の記事を見直しましたが、外来診療はかなり忙しかったのを思い出しました。

 昨年(*2021年)の今頃は東京五輪開催中で第5波の真っただ中であり、自宅療養中に状態が悪くなり入院される方、学校は夏休みでしたが学童クラブなどでの集団感染など、その時はかなり大変だったと記憶しています。当時は夢にも思いませんでしたが、現在の新規感染者数はその時の約6倍であり、しかもそのほとんどが軽症者であることから入院施設のある病院よりも外来機能が中心の診療所やクリニックの負担は計り知れないものとなっています。私の施設でも第6波まではよほどのことがない限り、高熱がある患者さんをお断りすることはありませんでしたが、今回の大きな波は7月中旬頃から電話の問い合わせが殺到し、午前中のうちに夜までの予約が埋まってしまう毎日です。

発熱外来のリアル|水野泰孝 Global Healthcare Clinic (nikkei.com)2022.7.30 COMEMO掲載記事

 COVIDはやはり室内で換気のしにくい暑い時期に拡散しやすくなるようで、猛暑日が続くようになってから診断する患者さんも増えてきた印象です(東京都定点で9.35)。最近までかなり騒がれていたインフルエンザやヘルパンギーナは東京都ではすでに収束傾向(0.99・3.71)です。(定点報告疾病 週報告分(保健所別) (tokyo.lg.jp) 昨年までのような過剰報道が少なくなったのは良い傾向であると思っていますが、その意義について見直している記事がありましたので引用してみます。

歌手の西川貴教(52)が、情報番組「スッキリ」(日本テレビ系列・2006~2023年)に出演し、“本日の新規感染者数・死亡者数”に違和感を持っていると語ったのだ。 「この日、番組では、外国人観光客の受け入れが2年ぶりに再開されたことを紹介しました。コメンテーターとして出演した西川さんは『だったら感染者数なんかも発表する方向を少し……』と語尾を濁しつつ、ニュース番組の“本日の新規感染者数・死亡者数”の報道に異議を唱えたのです。さらに西川さんは『マスクの外し時も見失っている』とも指摘しました。

マスクを外す人が増えて…いま改めて考える、新型コロナの新規感染者数・死亡者数を連日報道した意味(デイリー新潮) - Yahoo!ニュース

 私もほぼ同時期に同じような以下提言を過去のCOMEMOに掲載しているのですが、やはりコメンテーターではなく有識者として出演した同番組ではここまでハッキリとは言えなかったと記憶しています。この頃からあちこちで意見が交わされていたにもかかわらず5類移行となったのは半年後だったのです。

これから夏休みシーズンを迎え、様々なイベントが3年ぶりに開催される自治体も多いことと思います。私が感染症対策アドバイザーを務める東京都三鷹市からも多くのイベント開催の是非に関するアドバイスを求められましたが、対策を講じた上ですべて「是非とも開催」であり、イベント当日も現場に出向く予定です。さらに先日は千代田区長と今後の対策・展望について協議し、その内容が公式ツイッターに掲載されました。対策自体はこれまでと変わりはないのですが、現状の背景をしっかりと理解したうえでメリハリのある対策を継続していくことに尽きるという内容です。ウィズコロナとして社会経済活動および不自由のない日常生活を送るためには社会全体に大きく網をかけるような行動制限や緊急事態などを発出することは絶対に避けなければなりません。これまでの経験からメリットよりデメリットが大きくなってしまうこと、そして何よりも子どもたちの学校行事への影響を踏まえてのことです。しばらくは新規感染者数は増加していくでしょうが、個人的には連日の感染者数の報道はきわめて意義が低いと考えます(人数のインパクトにより個々の対策意識向上でブレーキになるかもしれませんが・・)。1月からの経過をみても重症者はそれほど増えず、ピークアウトも特に対策が効いたというよりは自然の流れのようにも感じます。今回BA4, 5とはいってもオミクロンの亜種で多くは軽症者であり、現段階ではBA2.と比べても病原性が高いという確証はありません。従って3万人、5万人になろうが、医療提供体制が整っていれば大きな問題にはならないと考えます。それをカバーするのがだれでも検査ができる体制(民間検査施設やキットの販売など)、有症者の受診体制の整備(地域での医療連携)ですので、やはりそのブレーキとなっている感染症法の見直しはどうしても論点になるだろうと考え1年以上になります。

コロナで歪んだ社会をもとに戻すためにはもう後戻りしてはいけない|水野泰孝 Global Healthcare Clinic (nikkei.com) 2022.7.10 COMEMO掲載記事

 前述の通り、ここ最近ではCOVIDと診断する患者さんが増えてきたのは事実です。外来は若干忙しくはなりましたが、いわゆる逼迫状態ではなく、ほぼすべての患者さんは高齢者の方も含めて軽症で、外来で対応可能な中等症Ⅰもいません。また昨年の夏と異なるのは最も時間を要していた以下の説明をしなくてもよくなったので、一人のCOVID患者さんに要する時間が大幅に短縮され、負担が大きく減ったことでほぼ通常診療と同様になっています。いわゆる冬季に外来が混雑するような状況とさほど変わっていないということです(抗ウイルス薬の処方に関しては、ゾコーバは患者さんの承諾書が必要ですので説明に若干の時間を要します)。

①療養期間の説明(いつまで隔離が必要でいつから解除されるのか、解除時の対応など)②どこで療養するかの説明(自宅療養の場合はMy HER-SYSの入力方法などの説明、施設入所の場合は連絡先や施設の紹介)③同居家族がいる場合の説明(接触者として観察期間と症状が出た場合の対応など)④ワクチン接種歴の確認(発生届に記入が必要ですが、多くの方が明確な接種日を覚えていません)⑤重症化リスクのある患者さんへの薬の説明(モルヌピラビルの承諾書をいただくための説明)や療養期間中に解熱薬などを希望される方への処方

発熱外来のリアル|水野泰孝 Global Healthcare Clinic (nikkei.com)

 先日は今年初めて入院が必要となった患者さんがおられましたが、COVIDで重症ということではなく、胃痛が強く水分摂取がきわめて困難となり脱水症の予防の観点から点滴が必要と考えて入院を提案したのです。すわなち高齢者や持病のある方は「重症化リスクのある」という言われ方をしますが、現在ではCOVIDのみで肺炎などを起こし重症化する人はほとんどおられないのです。「コロナは風邪」と言われることがありますが、確かに変異により「風邪」と類似してきたところは多い印象です。しかし、風邪をひいてもこじらせれば入院することもありますし、高齢者では風邪が原因で肺炎を引き起こせば死亡する可能性も高まる訳です。すわなち「たかが風邪されど風邪」なのです。
 物事を考える時には「先入観」や「見かけ」だけで判断するべきではありません。COVIDでは様々な情報が錯綜し、同調する圧力が生じやすい日本では現在でも「意義の低い対策」を変えることができず「過剰な不安」がいつまでも払拭できないことが当たり前の日常生活を遠ざけています。「コロナは重症化する」「感染対策のために屋外でもマスクをする」「ワクチンにより発症を予防する」等々、今はいずれも正しいとは言えないことばかりではないでしょうか・・。正しくないことをしていてもデメリットがなければ気になりませんが、明らかにデメリットである健康被害が生じていませんか?

いつまで数えるのでしょうか?|水野泰孝 Global Healthcare Clinic (nikkei.com) 
仮面舞踏会はもうやめませんか?|水野泰孝 Global Healthcare Clinic (nikkei.com) 
 感染者が増えていることは事実ではありますが過剰な心配はせずに体調を崩した時には無理をせずに休養を取るようにすれば良いだけのことです。だたそれすらできない方々が増えていることは問題なのです。これも「5類になったから感染対策をしなくても良い」というような「先入観」や「見かけ」だけでの判断ではないでしょうか?

#日経COMEMO #NIKKEI

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