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Well-Beingなナラティブが混ざりあう30分圏社会へ―未来社会はどうなる(下)

「ブランドショップの立地も、必ずしも路面に接する必要はなくなった。賃料が安いビルの2階以上に店を構えるようになった」―数年前に、世界でいちばん住みたいまちとして有名なオーストラリアのメルボルン市の都市計画マネジャーから聴いた。「店はまちのなかを歩いて見つけるものではなくなった。グーグルマップが店に連れて行ってくれる」

技術が、店の立地戦略を変えた


1 それでも、東京で住みたい

若者は、今も昔も、都会で住みたいと願う。一度でいいから東京で住みたいと願う。同じく世界中の若者も、大都市に憧れる。なぜか?

大都市に「価値」がある

と思うから。大都市に情報が集中して、事業機会が集中していると信じる。シンボル性・匿名性を求めて、大都市・東京を志向する

東京に行ってなにかをすることに価値があるかのように思い、東京をめざす。たしかに東京でしかできないこともあるが、オンライン・テレワークができるようになって東京に行かなくても、できることは多い。にもかかわず、人はなんのために

東京に行こうと思うのだろうか?

2 私はどこにいるか?―身体と頭・心の分離

私は、どこにいるのだろうか?私は、今、どこで、だれと、なにをしているのだろうか?コロナ禍以降、どこか落ち着かない、ふわふわと、不安定な感覚で立っている

コロナ禍を契機に、テレワークになって、そう感じるようになったのではない。それ以前から

身体と頭・心が離れだしていた

現実とフィクションが混ざり合い、リアル空間とメタバース空間のなかを混然と生きている

自分がどこにいるのか
分かりにくくなっている

テレワーク・リモートワークが進み、1億人の日本人が東京にいるようなメタバース空間を生きるようになっている
 
オンライン会議やオンラインビジネスが普通になって、毎日は東京都心に行かなくていいという状況になった。東京の物価・住宅費用は高い、とてもじゃないが住めない。憧れの東京で夢見た都市ライフをエンジョイできる状況ではない

しかしずっと
「東京」にいる感覚である 

現実の私は郊外・地方の家に自分自身はいるが、東京にいるようなメタバース空間を生きている。つまりこうである

郊外・地方の家  ⇔   東京のオフィス
 体         頭と心

 (リアル空間)    (メタバース空間)

居住地の郊外・地方というリアル空間とは別に、仮想空間に「東京」という巨大な街ができている
 
コロナ禍以降、都市から地域へのシフト、地域分散がゆっくりと確実に進んでいる。しかしこの地域分散は、これまでの地域分散の概念とは異なっている。なにが違うのか?

これまでの、大都市東京の機能を分散させるという地域分散という概念から、大都市東京の機能を東京から離れた郊外・地域で使う、学ぶ、楽しむ、体験するという地域分散という概念に変わりつつある

つまり自分自身の体は郊外の家にあって、頭・心は都会のオフィスやコンサート会場や美術館で楽しむ

心と体が遊離している

この都市と郊外・地方の新たな構造・時空間・ワークスタイルで、これまでのような想像・発想・着想・共感・創造は生まれるのだろうか?これが、いままでと同じだと考えるから、混乱している。だからテレワークをやめて、コロナ禍前のワークに戻そうとする人たち、企業、組織は多いが

戻った先は、前とは違っている

3 リアル空間はどうなる?

新たな時空間が進んでいくなか、リアル空間が大きく変わろうとしている。どう変ろうとしているのか?コロナ禍を契機とした変化は、テレワークで家にいる時間が増えただけでない。ライフとワークに関する価値観を変えつつある。その見本がある

世界が都市戦略でベンチマークする英国エコノミスト誌の「世界でいちばん住みたいまち」ランキングで例年トップテンに入るメルボルンは、人のためのまちをめざし、長い時間をかけて洗練させて、「世界でいちばん住みたいまち」となった。家を中心に徒歩や自転車やトラムを使って、20分間で、ライフとワークにとって大切な機能・場所にたどり着くという「メルボルン・スタイル」で、人・家を中心とするまちに変えていった

メルボルン・スタイル

コロナ禍を契機に、世界で、この流れが拡がる

パリは徒歩15分

1人1人、1家1家が主人公のナラティブを綴るWell‐Beingなまちに、世界は変えていこうとしている。メルボルンだけではない。パリは徒歩15分で、ワークとライフにおいて必要な場所にたどり着けるまちを変えよう、アメリカは2050年までに徒歩10分で公園や緑地にたどりつけるように変えようとしている

アメリカは10分で緑地に

4 30分圏社会へと動き出す日本

国家戦略特区「スーパーシテイ」構想

人を中心としたまちに変えようとする世界に対して、明治以降、駅と技術を中心にまちをつくってきた日本は、世界がめざすまちづくりとは少し様相が異なっている。日本は国家戦略特区で「スーパーシテイ」を検討しているが、このようなDX・技術を全面に出したまちに住みたいと思う人はどれくらいいるのだろうか?

日本はハードから考えてきた

それがコロナ禍を契機に、価値観が変わりだした。コロナ禍を契機としたコロナリセット「場と時間革命」が、社会的価値観(人との関係性)、人の価値観(人生観・家族観)を変え、どう生きる?どう暮らす?どう働く?どう学ぶ?どう遊ぶ?という行動様式を変え、自らのありたい姿、Well‐Being(佳く生きる)を実感する暮らし方・働き方・生き方をめざしていくように、少しずつ変りつつある

@ikenaga.hiroaki

ゆっくりではあるが、確実に変わりつつある
というよりも、やっと変わりつつある
 
寝るだけのまちから
働きつつ暮らせるまちに。

家を中心に歩いてまわれるまち
自らの物語、ナラティブを描けるまちに。

1億の日本人が東京にいるオンライン・5G・DX・メタバースという情報基盤に、1人1人がそれぞれのWell-Beingの実現をめざすリアル「30分圏社会」の2つの世界を生きる

大都市機能を使う「メタバース空間社会」と、リアル空間「家を中心とした30分圏社会」がゆっくりと動き出している。

では、リアル空間「家を中心とした30分圏社会」とはどんな社会か?大坂物流会社摂津倉庫の若者たちと、未来のありたい社会を考えた

 (「2030年社会・未来展望」(摂津倉庫株式会社))

ただしなにもしないで、この未来社会は来ない。このWell-Beingをめざす「人を中心とした30分圏社会」を実現するためには、4つの「創造」が必要である

■オンライン・AIを活用した新たな価値の創造
■人と人・多世代との交流・学びの時空間の創造
■リアルとバーチャルを融合したライフとワークスタイルの創造
■Well・Beingを実現する社会インフラ・エコシステムのシステムの創造(地域交通・物流・エネルギー・ナレッジ・ケア)

この4つの創造を核とした「家を中心とした30分圏社会」を創り、磨きつづけるプロセスが、1人1人のWell・Beingなナラティブが混ざり合う未来社会を切り拓くことになるのではないだろうか?

すでにその変化はおこりつつある。それに気づき、前を向き、動き、未来社会を創造できるかどうかは、あなた次第


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