組織の持続的成長を支える「チーム×コミュニティ」の循環【コミュニティ思考を語ろう⑦】
Potage代表、コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。コミュニティづくりの専門家として、ファンコミュニティづくり、組織づくりのお手伝いをしています。
3月のCOMEMO記事から「コミュニティ思考」についてシリーズで語っています。今日は第7回目の記事です。(あわせて、Voicyで音声コンテンツも公開しているので、もしご興味ありましたらそちらも聴いてみて下さい!)
僕は、社会が今直面している課題への対応策を見出し、より豊かな社会を築くための鍵が「コミュニティの力」にあると確信しています。このコミュニティ思考に関する論考が遠くない未来に、より個々人や社会の可能性を解き放つきっかけになることを祈りながら執筆するので、どうぞ3回目もどうぞご笑覧下さい!
なお今回の内容は、友人でもあるソニックガーデンの倉貫義人さんと、楽天大学学長の仲山進也さんとの議論に大きなインスパイアを得ています。この場を借りてお2人に御礼申し上げます。議論はアーカイブが公開されているので、ご興味ある方はこの記事の末尾のYouTubeをぜひ見てみてください!
チームとコミュニティの違いを考える
コミュニティ思考についてのシリーズ連載、遂に6本目となりました。今日は「チームとコミュニティの関係性」について考えてみます。「チームとコミュニティの違い」と聞いたときに、その違いを、言葉でうまく説明できそうですか?それぞれの言葉にはいろいろな定義がありますが、順番に整理して考えてみようと思います。
まず「チーム」の定義です。これは僕なりの表現で言うなら「成果を残すための集団」である、ということが言うことができます。
皆さんが所属している会社や組織をイメージしてみて下さい。組織は「こういうゴールに達成するためにみんな動いてほしい」と言語化をし、それをメンバーに共有してチームを動かしていくことが必要になります。これを組織づくりの世界では「ミッション」と表現します。
つまり「この結果を目指して、私たちは動いていくんだ」という一種の目標が「ミッション」なんですね。そのミッションに向かって、みんなで一丸となって成果を残すために動いていく集団がチームというわけです。
それゆえに、チームにとって一番大事なことは「行動すること」です。もう少し具体的に言うと、メンバーそれぞれが役割を果たしながら行動して、結果を達成していくことが、チームでは非常に大事になってきます。とにかく成果を残す。それがチームの大目的なのです。
一方、「コミュニティ」という存在は、チームとは異なるものです。コミュニティは「成果を残すための集団」ではなく、「継続していくための集団」です。
例えば、コミュニティの最小単位である「家族」を例にとって考えてみます。家族は、何か特定の成果を達成するために存在しているわけではありませんよね。むしろ、家族において最も大切なのは、「この家族という形が、できるだけ長く、良好な関係を保ちながら続いていくこと」です。
例えば、家族が「1億円稼ぐこと」を目標にするわけではないですよね。もちろん、そうした目標を掲げる、事業を営んでいる家族もあるかもしれませんが、多くの場合、家族のゴールは「みんなが健康で、楽しく生きられること」です。同じ価値観を共有し、感情を分かち合い、ただ一緒に過ごすこと。多くの場合、これこそが、家族というコミュニティの究極の在り方です。そして、この在り方こそが非常に「コミュニティ的」なのです。
では、コミュニティが最も大事にしているものとは何でしょうか。それは「ビジョン」です。過去の記事で「10倍の夢」と表現しましたが、コミュニティでは、大きな夢や目標を持つこと、そしてそれに向かっていくことが非常に重要です。それに加え、ただ夢を追いかけるだけではなく、「こういう価値観を大事にして生きていきたい」とか、「こういう感情を共有しながら、できるだけ長い間、関係性を維持し、成長させていきたい」といった、「自分たち自身がどんな存在でありたいか」という、成果目標とも違う、いわば「存在目標」のようなものが、コミュニティにおける最も大切なゴールなのです。
不確実性の時代に必要なチームとコミュニティの連携
ここまで、チームとコミュニティの違いについてお話ししてきましたが、ここからは、僕がこれからの時代で大切だと考えている「チームとコミュニティ」の結びつきについてお話します。そう、「チーム」と「コミュニティ」を有機的に結びつけることが、変化の激しい時代の中でパフォーマンスを発揮する組織を生み出すためには重要になってくるのです。
会社組織を例に考えてみます。先ほど書いた通り、会社は、基本的に「成果を目指す集団」、つまり「チーム」であるという側面があります。それ自体は間違っていません。しかし、成果を追求するだけの集団というのは、いずれ終わりを迎えます。目標を達成すれば、チームは解散してしまうはずです。しかし多くの場合、会社という組織は、目標が達成されたからといって「解散しましょう」とはならないですよね。会社には性質として「事業を継続する責任」が生じてくるからです。
しかし、チームとして活動する集団が、ただ「売り上げを維持するためだけの団体」になってしまうと、次第にその継続性は失われていきます。多くの伝統企業では「第二創業」「第三創業」など、リニューアルを図りながら事業の継続性を高めている事例も見られますが、僕は、そういった方法をとらなくても、もっと有機的に長く続けられるチームを作ることができると考えています。そのために必要なのが、実は「コミュニティ」の考え方なんです。
例えて言うと、コミュニティは、多くの人たちが集まる1つの「いけす」のようなものです。人が集まり、同じビジョンを共有し、意見を交換し合い、対話が行われている「いけす」のような場所がコミュニティだとします。そこから、例えば「こういうことを実現したい」といった具体的な目標が出てきたときに、そのいけすにいるコミュニティのメンバーの中から適任者が選ばれ、新たなチームが組まれます。そして、そのチームが「いけす」から飛び出して、目標に向かって突き進んでいく。これが、コミュニティからチームが生まれ、また成果を上げていくプロセスなのです。
いけすの外で成果を達成したチームは、またコミュニティという「いけす」に戻ってきます。そして次の目標に向けて、また新たなチームが作られます。こうして、コミュニティとチームの存在が有機的に結びつくことで、組織は持続可能な形で成長し続けることができるのです。
一方で、成果だけを追い求めるチームは、ゴールが見えた瞬間にその存在意義を失ってしまいます。だからこそ、チームを解散させ、再びコミュニティに戻し、存在意義を確認した上でまた新たなチームを作るという循環を行うことで、組織全体の成長が促進されるのです。
この「コミュニティとチームの循環モデル」を取り入れれば、組織は持続的に成長し、様々なプロジェクトやゴールに柔軟に対応できる力を持つことができます。
この考え方がなぜ今重要なのでしょうか。それは、現代のビジネス環境が、ますます不確実性を増しているからです。激しい環境変化が起きてくる中で、従来のように、一度設定されたゴールに向かって突き進むだけのチームでは、いずれ行き詰まる時が来ます。目標を達成した後の「次の一手」が見つからなければ、そのチームは勢いを失い、組織全体の成長も止まってしまいます。しかし、チームがコミュニティという「基盤」に戻って再編成されることで、常に新しいプロジェクトに取り組み続けられる状況を生み出せます。結果として、組織全体が柔軟に、そして持続的に成長していけるのです。