この時期に海外に行くということ(6)大幅な入国帰国手続き緩和後の状況
4月に引き続いて6月に海外渡航し、今回はフランスから成田空港に帰国したので、最新の日本への入国・帰国に関する水際措置についての状況をアップデートしたい。
大きく報道もされた通り6月に入って海外からの入国の水際措置はそれ以前との比較で、かなり大幅に緩和されている。
そして前回5回目の記事で報告したファストトラックについては、その運用がかなり改善されていたので、その状況についてもお知らせしたい。
まず6月1日をもって入国帰国の水際措置が大幅に簡略化された。具体的には新型コロナウイルスの流行状況に合わせて出発国を青・黄・赤の3種類に分類しそれぞれに応じた帰国時の検疫対策がとられるようになった。
このうち、世界の約半数の国にあたる「青」指定された98カ国(執筆時点、以下同様)からの入国に関しては、ワクチン3回の接種有無を問わず出発前72時間前以内の陰性検査証明書があれば、空港での検査もなく指定アプリのMySOS に事前登録して事前審査をパスし、 到着時にMySOSのQR コードを示すことができれば、ほぼコロナ前と同じ簡略な手続きで入国することができるようになった。税関で手荷物を引き取って制限エリアを出た後も、公共交通機関の利用を含め一切行動制限がない。到着したその時からいつも通りの生活が可能になった。
引き続き感染の拡大が認められる黄色(99か国)や赤(4か国)に指定された国からの帰国についてはワクチン接種の有無その他によって空港での検査が必要になったり、以前と同様に自宅待機や指定ホテルでの一定期間の待機が求められる場合がある。
こした水際措置の区分ごとの手続きについては、これまで迷路のように非常にわかりにくかった厚生労働省のページが、コロナ禍が始まって2年以上経てようやくわかりやすく整理された。入国者にプリントして配布していた書類を単に画像化して貼り付けるという、きわめて検索性に乏しい情報提供の在り方も一掃されたようだ。
2年以上経ってようやくサイトが分かりやすくまとめられたことは、時間がかかりすぎているとは思うものの、評価をしたい。一方で、やればここまで整理できるものをこれまでしてこなかったことは、厚生労働省が意図的に海外渡航者を制限するため、わざと複雑なままに置いていたのではないかという疑念も湧くが、その点についてはここでは深入りしないことにする。
いずれにしても、誰がどこから日本に向けて出発するかに関わらず、72時間前以内に、厚労省の要件を満たした陰性の検査証明書を出発地で取る必要があることについては、変わりがない。
ただそのフォーマットについては、以前よりも厚生労働省指定書式にこだわる姿勢は弱まり、記載するべき内容も以前より簡略化されている(なお、以前の書式も引き続き有効とのこと)。
実際にフランスで帰国前の検査をした時に、現地の医療機関がオンラインで送ってきた陰性の検査結果をそのままファストトラックでオンライン事前登録してみた。ファストトラックの詳細については前回の記事に詳しく書いたので、そちらを参照して欲しい。
残念ながらフランス語の部分があり、読み取りが難しい部分があったためと、細かい部分で厚労省が求める必要事項が判然としなかったからだろうか、翻訳を付記するようにとの差し戻しがあった。これについては翻訳を付記するくらいであれば指定書式に記入してもらった方が早く確実と思われたので、検査機関で指定書式に記入してもらって再提出をしたところ事前登録は完了した。差し戻し時もふくめ、審査結果は登録から数時間程度でMySOSを通じて連絡があり、スピードアップしている印象だった。
全ての事前審査が完了すると、MySOSの画面は(緑ではなく)青になった。ここまで終わっていれば、あとは到着空港ではこの青い画面を見せてファストトラックに進み、途中で求められたときに1回だけMySOSのQRコードを提示すれば、その後はコロナ前の入国と同じで、基本的には入国審査と税関検査を受けるだけだ。
このように特に厚生労働省が青で指定している国から日本に入国する場合は、かなり手続きが従来よりも簡略化された。もちろん、引き続き、すべての人が出発前の検査で陰性証明を取得しなければいけないことは、記事が指摘する通りハードルにはなっている。
実際に今回成田空港に到着し、飛行機を降りた後、青の画面を提示すると黄色や赤の MySOSの画面の人とは別なルートが用意されており、直接入国審査場の近くまで行くことができた。この点で、前回4月時点のファストトラック(当時はまだ空港検査が必要だった)とは比較にならないほど簡略化されスピーディーに入国手続きを終えることが出来た。降機してから税関検査を抜けるまでの所要時間は約20分で、これはコロナ前の入国手続きと変わらないレベルである。
以前は配布されていた「健康カード」もなく、入国審査官に提示する検疫マークの入った用紙も青で、しかも日付印を押されることもなくなった。
少なくても、夕方から夜の到着便でも、入国手続きが終わる前に公共交通機関の最終便が出てしまう心配はしなくてよくなった。
一方で、以前よりも簡単に日本に入れるようになったぶんだけ、感染の可能性が高まったとも考えられることも留意しておきたい。これは日本の問題ではなく、世界的な旅行規制やマスク着用規制が緩和され、感染に注意を払わなくなった人が旅行に出たり、日常生活を送ったりし始めていることによる。
青指定の国でも、感染状況が一定程度落ち着いているとはいえ、一般の人々の感染が全くなくなっているわけではない。むしろ、マスクの着用義務などが撤廃されたことで、再び感染が増えつつある国もある。フランスもそうした国の1つだ。こうした国で、現地の人と同じようにマスクなしで過ごしている場合、現地での感染リスクは多くの人が感染を警戒していた時よりも高くなっていると考えておかなければならない。
現地の人は仮に感染しても重症化しない限り自宅で症状が治るまで過ごしていればそれで済むかもしれないが、帰国便の予約をし、帰国してからの予定も入っている旅行者の場合、現地で感染し陽性になれば、いくら緩和されたとはいえ日本に戻ることは出来ない。無症状であっても検査で陰性になるまで、通常1~2週間程度は現地で延泊を余儀なくされるということだ。この点を軽く考えると大きな落とし穴にはまることになりかねない。陰性になるタイミングを見計らって帰国便の変更や買い直しの手配をしなければならないし、またその間の現地の滞在場所の確保とその費用も用意しておかなければいけない。症状が重ければ入院治療ということにもなる。こうした不測の事態をカバーする海外旅行保険に入っておくことも、この時期の海外渡航には必須と言えるだろう。
今回のフランス渡航では、現地の人は屋内はもちろん狭い交通機関内も含めてほぼ全くマスクをしていない状況で過ごしており、これまでのコロナ禍中での海外渡航では最も感染の危険を強く感じることとなった。
また、世界的に旅行者は増え始め、空港は混雑しているものの、フライトの数や空港職員の数はそれほど回復が追いついておらず、フライトのチケットが思うように変更・確保出来なかったり、非常に高額であったり、また一部の地域では空港手続き等の大幅な遅延が深刻化しているようだ。
確かに日本入国の手続きについてはコロナ前に準ずる程度に簡略化されたかもしれないが、海外旅行全般がコロナ前と同じような状況に戻っているわけではない点には十分に留意する必要がある。
業務渡航だけではなく、プライベートな海外旅行を楽しむことを計画している方もいらっしゃるかもしれないが、現状は上記の通りであることを踏まえて、十分な事前の準備対策と万が一現地で感染して予定通り帰って来れなくなった時の備えについては、あらかじめ考えた上で旅のプランを作成することを強く推奨したい 。