コミュニティ型組織の「存在意義」と有機的チーム再編のススメ【コミュニティ思考を語ろう⑧】
Potage代表、コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。コミュニティづくりの専門家として、ファンコミュニティづくり、組織づくりのお手伝いをしています。
3月のCOMEMO記事から「コミュニティ思考」についてシリーズで語っています。今日は第8回目の記事です。(あわせて、Voicyで音声コンテンツも公開しているので、もしご興味ありましたらそちらも聴いてみて下さい!)
僕は、社会が今直面している課題への対応策を見出し、より豊かな社会を築くための鍵が「コミュニティの力」にあると確信しています。このコミュニティ思考に関する論考が遠くない未来に、より個々人や社会の可能性を解き放つきっかけになることを祈りながら執筆するので、どうぞ8回目もどうぞご笑覧下さい!
なお今回の内容も前回同様、友人でもあるソニックガーデンの倉貫義人さんと、楽天大学学長の仲山進也さんとの議論に大きなインスパイアを得ています。この場を借りてお2人に御礼申し上げます。議論はアーカイブが公開されているので、ご興味ある方はこの記事の末尾のYouTubeをぜひ見てみてください!
挑戦と帰還の循環を支える「コミュニティ」の役割
今回は、自分の組織をもっと有機的で自律的に動ける場所にし、さらに心理的安全性の高い場にしたいという方に向けて「コミュニティ的な要素を組織にどう取り入れていくか」についてお話しします。
コミュニティとチームの関係性について理解を深めるために「チームをつくるのが先か、コミュニティをつくるのが先か」という問いについてまず考えてみます。この「どちらが先か」という話は、まさに「鶏が先か卵が先か」という議論のようですが、僕は「両方を同時に形にしていくこと」がとても大事だと思っています。
前回の記事で、コミュニティは「いけす」のようなものだと説明しました。コミュニティは、たくさんの人が集まり、有機的につながる集合体です。集まる人たちは、それぞれが自律し、武器を持っていて、集まる人たちがそれぞれの特性を生かしあえるようにふるまいます。
一方で、チームは「ミッション」という行動ゴールが生まれたときに、コミュニティの中のメンバーが集まって組織されるものです。つまり、特定の目標に向かって動く集団として構成されるのがチームです。それゆえに、チームは「行動の原則と目標」をしっかりと定義し、その成果で評価をすることが大切になります。
そしてチームは目標を達成した後、いずれ解散します。その後、戻ってくる場所がコミュニティです。コミュニティが整っていると、ミッションを達成したメンバーたちが安心して戻ってくることができます。
この循環を考えたときに、コミュニティ型の組織においては「自律して武器を持つ人材が集まるコミュニティ」「ミッションが明確に存在するチーム」のどちらか一方では成立しないことが分かります。
例えるなら、コミュニティは「お城」に守られた街であり、チームは「お城」から飛び出して戦う集団です。チームは、戦いが終わった後、戻ってくる「お城」があるからこそ、また挑戦できるわけです。
ここでいう「お城」、つまり帰ってくる場所としての「コミュニティ」の存在意義をしっかりと明文化し、みんなで言葉にしていくことが、この「挑戦と帰還の循環」を支える上で大事になってくるのです。
自分と仲間を知ることから始まるコミュニティ型組織開発
この「存在意義」の基盤となるのが「コミュニティ思考」です。コミュニティ思考の3原則として、初回からお話ししているのが「ビジョンを行動基準にする」「仲間と対等に接する」「仲間のためにも動く」の3つです。これらの原則が組織のメンバー全員にインストールされて、行動の基盤として機能することで、有機的に動くコミュニティ型組織が生まれます。
コミュニティ型組織開発は、まず「自分を知る」フェーズから始めることが成功の鍵となります。属する個々のメンバーの「存在意義」の言語化です。自分や組織の特性や強みや弱み、そしてこれまでのバックグラウンドをしっかりと明らかにし「この組織はこんな集団だ」「自分はこういう人間なんだ」という自覚を深めていく必要があります。
さらに、自分を知るだけでなく、他のメンバーのことも理解してもらうことが重要です。「あなたはこういうところが強いんだね」「こういうところが苦手なんだね」とお互いに知り合い、どのように助け合えるかを考える。こうした連携がコミュニティ型の組織開発では非常に大事になってきます。
ちなみにPotageでは、この「自分とメンバー、組織を知る」フェイズにおいて「EQPI®」という検査を活用しています。これは感情知能指数(EQ)に基づいたパーソナリティ診断の検査で、自分の感情特性や性格特性が可視化されるツールです。検査結果のデータを基にして、自分自身の「取扱説明書」を作り、それをチームメンバーに共有する時間を設けます。
たとえば、「私はこういう特性があります」「あなたはこういう特性があります」といった具合にお互いの形を理解することで、自然とコミュニティビルディングが進んでいくのです。加えて、お互いが思う理想の組織像を、お互いの特性や大事にしている価値観を踏まえた上で、対話を通じて共有していくと、自分たちが目指したい組織のイメージが徐々に言語化されるのです。
このようなコミュニティビルディングを通して、コミュニティを形成しているメンバー全員が、お互いの形をしっかりと把握した状態を作り、そこからミッションに沿ったチームを編成することが可能になります。そうすると、それぞれの「武器」がわかった状態になるため、ミッションを達成するためにどのようなメンバー構成でチームを組んだらよいかが自然と見えてきます。また、お互いの強みや弱み、さらには最終的に向かいたいビジョンなども共有されているので、全員が「自分ごと」としてミッションに取り組むことができるようになるのです。
そして、ミッションを達成すると、チームは一旦解散し、再びコミュニティに戻ります。これにより、「チームの再編」が可能になります。理想的な状況としては、会社の様々なチーム(つまり部署や部門)も、その時々の組織全体の抱えるミッションに基づいて有機的に変化していくことが求められます。これをシステマティックに実現しているのが、大きな組織においては半期から四半期に一度起きる「組織再編+大人事異動祭り」です。定期的な再編には「部署名が変わるだけで意味がないのでは?」という意見を多くの方が持っているかもしれませんが、実はちゃんと「組織におけるミッションの再定義」という理由があるのです。(システマティックに進めるあまりに形骸化している組織は多く存在しているでしょうが…)
この「有機的なチーム構成の変化」を実態に即してリアルタイムに起こしていくことはなかなか難しい作業です。しかしこれをやらないと「ミッションが終了したり存在していないのに存在しているチーム」が組織の中に生まれることになり、その存在が組織というコミュニティのバランスを崩してしまうこともおこりえます。できるだけ組織の実態にあわせてチームのあり方を定義し続けることが、コミュニティ型組織においては大事になるのです。