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コロナ危機を乗り越え世界経済が進化していく道筋

世界の金融市場はパンデミックにより大混乱に陥っているが、数年から10年先の長期的な目線で見れば、今回のコロナ危機を世界が乗り越えることで、世界経済が進化するスピードは高まることになるだろう。ただし、それは衰退していく産業と、成長していく産業との入れ替わり(産業構造の転換)を伴うものになりそうだ。

歴史の検証として、中国がネット社会を進化させていた経緯を遡ってみると、中国がウイルス感染で打撃を受けるのは、新型コロナウイルス(COVIT-19)が初めてではない。

2002年11月にはSARS(重症急性呼吸器症候群)の感染が中国南部から起こり、外出禁止の措置を出す都市が増えていった。中国でeコマースが普及しはじめたのは、ちょうどその頃で、淘宝網(2003年)や京東商城(JD.com:2004年)などのeコマースサイトが創業、急成長していった時期と重なっている。

SARSの完全終息までには1年近くかかったことから、中国人消費者は、生活物資の調達をネットに頼る必要性があったのだ。当時の中国には、まだ消費者向けのeコマースサイトが無かったため、B2Bサイト「アリババ」への商品出品、売買取引が急増した。そこでアリババグループは、個人ユーザー向けのC2C型eコマースサイトの「淘宝網」を立ち上げた、という経緯がある。

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そして、2020年のコロナウイルス危機では、企業の在宅勤務制度や小中学校向けのオンライン教育が急速に普及しはじめている。感染対策を目的に導入された関連のテクノロジーは、ウイルスの終息後にも定着して、ビジネスパーソンの働き方や、学校の教育を変革していくことになるだろう。

【コロナショックで成長する事業分野】

 投資家や経営者の視点では、新型肺炎により負の影響を受ける業界がある一方で、プラスの影響を受ける業界もあるとみている。国際的な会計コンサルティング会社、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)の台湾支社が2月11日に公開した、レポートでは、中国のGDPは2020年の第1四半期は2~4%減少するが、ウイルスの流行が終息に向かえば徐々に回復して、トータルの年間成長はプラスとなる、V字回復型を予測している。

負の影響が大きな業界は「レジャー、観光」「映画、イベント興行」「飲食、小売業」「運送業」「製造業」「不動産業」。一方、プラスの追い風が吹く業界としては「医薬品」「電子商取引」「オンラインエンターテイメント」「オンライン教育」「在宅勤務」「保険」を挙げている。

《コロナ危機でマイナス影響を受ける業界(中国)》

○レジャー、観光
…中国観光産業の損失は5,000億元(GDPの約2%)と予測。
○映画業界
…消費者が外出を控えることで中国の映画興行はすべて赤字に。
○飲食、小売店舗
…2019年の売上高1兆元のうち50~70%が減少する可能性。
○旅客運送業
…鉄道、航空機の乗客数は前年比で35~73%減少。
○製造業
…工場操業停止が長引けば国際サプライチェーンにも影響。
※ただし、他国の中小製造業にとってはチャンスになる。
○不動産業
…中国ほとんどの都市で不動産開発と販売に影響。

《コロナ危機でプラス効果が見込める業界(中国)》

○医薬品、衛生用品
…マスク、防護服、ゴーグルなどの医療消耗品メーカーはフル稼働。国の医療政策と国民の健康意識が向上することで、幅広い医薬品への需要が高まる。

○電子商取引
…自宅に籠もる消費者からオンラインショッピングの需要が高まり、オンライン小売業の売上は30%以上伸びると予測。

○オンラインエンターテイメント
…自宅で楽しめる動画、ライブ配信、オンラインゲーム、その他インターネットを媒体としたエンターテイメントへのアクセスが上昇。

○オンライン教育
…学校が長期休校になることで、オンライン授業への需要拡大が見込める。社会人も、在宅勤務により通勤時間が無くなることで勉強できる時間が増え、スキルアップや資格取得などオンライン教育への需要が高まると予測。

○在宅勤務向けのツール開発
…現状の在宅勤務ツールは、使い勝手や機能面での問題があり、新たなビジネスチャンスが多数ある。新型肺炎の流行が収まった後も、企業は従来の働き方を再考して、在宅勤務制度を一部で残したり、定着させることも予想される。

○保険
…新型肺炎の終息後も、国民の健康、疾病リスクに対する意識が高まり、新たな保険商品へのニーズが高まることが期待される。

これらの業界予測は、日本にも共通する部分があり、今後の長期的にみた景気動向を占う上でも参考になる。今回の新型肺炎は、未知のウイルスが関与しているため、流行の終息時期や、人体への長期的な影響については、現時点では誰もわからない。その不安や恐怖心から、株式市場でも悲壮感が漂っているが、歴史から学ぶのであれば、災害時のパニックが沈静化した後の株価は、いつの時代も上昇している。

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